雪の降る道を早足で歩く。
いやに寒いと思ったら、急に降り出して、あっという間に信じられないくらい積もった。
コートの襟を立てて、少しうつむいて、足元をきゅっきゅっと踏みしめながら、寮までの短い道程を急いだ。
冬に生まれた。
だけど、冬は好きじゃない。
雪の降る、朝に生まれた。
だけど、雪は好きじゃない。
じんわりと、しびれるように足の先から感覚がなくなって行く。
冬も、雪も、好きじゃない。
なんでそんなに寒いんだろう。
きし、きし、きし、と、足元から微かな音がする。
自分の足跡ひとつ。
グラウンド前までたどり着き、ふう、と少しため息を付いて振り返る。
一人分の足跡だけが、続いている。
目を上げる。
グラウンドには、足跡ひとつ無い。
真っ白な、一面の雪景色。
冬も、雪も、好きじゃない。
でも。
なんでだろう。
一面の、真っ白な雪景色。
わずかに心が浮き立つのは。
きらい。きらい。きらい。
だけど、なんで少しだけ、嬉しいんだろう。
そっとあたりを見回す。
誰もいないのを確かめると。
ごろんと雪の上に転がってみた。
降り続ける、雪。
空から。
舞い落ちてくる雪は、まるで逆に浮き上がっていくかのような感覚。
冬は、嫌い。
寒いのも、嫌い。
でも、時々、好きなこともある。
不意に、頭上に顔が出現。
「・・・・・今そこで寝たら、死ぬぞ?」
「・・・・・・・うるせー」
のったりと起き上がる。
「何してたんだ?」
なんとなく楽しそうに、聞かれる。
「べつに」
「珍しい所、見たな」
「ふん」
ぱっぱと雪を払い、背中を向ける。
「気持ちよかったか?」
「自分で試せばいいだろ」
振り向きざま、どん、と突き飛ばす。
「わ」
渋沢は、あっさりとバランスを崩して転がった。
「・・・・・ったた・・・・・」
たいして空も見ずに、すぐに起き上がる。
「・・・・アブナイじゃないか」
「どうせ雪で、ぶつけてもいたくもねーよ」
やれやれ、と少し肩をすくめて横に並んで歩き出す。
「・・・・・三上」
ふと、思い出したように。
「なに?」
「今日だよな。誕生日、おめでとう」
足が止まる。
思わず顔を見た。
にっこりと笑って、くるりと背中を向けて。
「?」
どかっ、と、真横の木の幹を蹴り飛ばす。
とたんに枝一面に降り積もった雪が、頭上に落ちてきた。
「!!っつめてーーっ!!」
「仕返し」
自分も頭から雪を目一杯かぶりながら、嬉しそうに笑う。
「バカか!お前は!」
「ひどいな」
ていねいに、頭の上に積もった雪を払い落としながら、腕を引かれる。
「バカ」
ぎゅっと、腕の中に抱きしめられる。
「・・・・生まれてくれて、ありがとう」
耳元に、ささやくように。
「出会ってくれて、ありがとう」
「・・・・・バカ」
「うん」
ぎゅっと、暖かい腕が。
やっぱり冬は嫌い。
寒いのも、嫌い。
だけど、暖かい腕に抱きしめられるのが嬉しかったりするから、やっぱり冬も、時々は好き。
=Fin=
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