____ Technology
最新のテクノロジーや技術動向などをご紹介するページです。

光で変形するプラスチックの開発       2003.9.11
東京工業大学資源化学研究所の池田富樹教授とそのグループが9月11日付の英
国の科学誌「ネィチャー」に,光の波長によって異なるひずみ方をする樹脂を
発表した.このプラスチックは機能性高分子の一種のアゾベンゼン分子の結晶
を液晶状態にしたもので,紫外線と自然光に対する歪かたが異なる性質を利用
する応用面が考えられる。
例えばこのプラスチックでベルトを拵えると,可視光と紫外線を交互に照射す
ることで歪を利用して回転運動に変化することも出来ると,池田教授は語って
いる。             国内では読売新聞系で発表 9月11日

日立製作所超小型「ICタグ」を開発       2003.9.2発表

開発されたICタグは0.4mm角の大きさで、厚さは0.1mmという超小型サィズである。
内部にはラジアル状のアンテナを組み込んだ。外部から電磁波を照射すると受信した
電力を電源にしてRAMに内蔵されたデータを送信する。これを紙幣などに漉き込
むと偽造紙幣かどうかを検出できる。IDカードから商品に至るまで応用できる製
品に成長するだろう。このICタグは国内外の電機メーカー180社が6月に規格統
一で合意し実用化実験の準備を始めたという。

現在の所コストは不明だが,量産に入れば\5というからパスポートやIDカードに普及す
るのは間もなくだろう。(国内は2010年には10兆円規模の市場と見込んでいる
という)

これを読み取るための送受信機は約5mm以上離れると読み取れないが、これが
盗聴を防止する決め手だとして逆に長所になるとも考えられる。
                --朝日新聞2003.9.3朝刊1面記事から JS.

東芝:微粒子1個に1情報

 東芝は微粒子1個に1つずつ情報を割り当てることで、大量の磁気記録を
実現する技術を開発した。現在のハードディスクの25倍に当たる、1in^2
当たり1Tbitの記録を可能にする。2004-2005年に実用化し、パソコンや携帯
電話の記録装置に採用する。
 微粒子単位で情報を記録する方法は「パターンド・メディア」と呼ばれ、
微粒子10数個単位で記録する現行の技術と比べ能力が大幅に増す。市販の
ハードディスクと同じ直径2.5inの基板を使って実証した。
 磁石の性質をもつ物質(磁性体)を表面に張った基板を用意。これに化学
薬品を作用させて不要な部分を削り、直径40nmの微粒子が80nm間隔できちんと
並ぶように加工した。
 決まった場所に微粒子を残すため、基板上に細い溝を渦巻き状に刻んでおき、
ここに化学物質の作用をくい止める樹脂を流し込んだ。
 樹脂は2種類の高分子が結合したもので、加熱すると分子量の小さい方が
寄り添うように集まって粒状になり整然と並ぶ。樹脂が乗った部分の下部の
磁性体が粒状に残り、記録用の磁石として使えるようになる。
 1in^2当たり1Tbitの高密度記録を実現するためには、粒子の直径を今回の
1/3程度に小さくする必要があるが、加工技術は現在の半導体の製造技術が
転用でき、実用化は容易とみている。ディスクへの情報の読み書きのための
高性能磁気ヘッドを開発して製品にする。

(2002/5/17:日本経済新聞)


大阪大:「レンコン」状金属、強度1.5倍に

 大阪大学産業科学研究所の中嶋英雄教授らは細い管を束ねたような断面をした
金属を作る技術を開発した。従来の製法に比べ強度を1.5倍以上に高められ、
超音速航空機の部品などに応用できるという。
 内部に直径10μm-10mmの細長い穴が多数あいた円柱状の金属を作った。中嶋
教授らは「レンコン型多孔質金属」と呼んでいる。鉄やステンレス、銅などを
溶かし窒素などのガスを混ぜ、一定の速度で冷却器に送り込み固めてできる。
 一度に冷却する従来法に比べ、均一な穴が作りやすくなった。この構造の
金属は軽くてしなやかな特徴があり、ゴルフクラブの材料として応用が始まった。

(2002/4/12:日本経済新聞)


大阪大:100ギガビットMRAMの新型素子開発

 大阪大学は低消費電力型の次世代メモリとして期待されるMRAM(磁性記録式
随時書き込み読み出しメモリ)の新型素子を開発、基本動作を確認した。素子は
リング状の磁性体。MRAMを100GBまで大容量化できる。従来は1GB級が限界
だった。ハードディスクのいらない1チップパソコンの実現につながる。
 MRAMはパソコンなどに使われるのDRAMを置き換える新型メモリの有力
候補。阪大の山本雅彦教授と中谷亮一助教授らが開発したメモリ素子は、直径0.5
μmで、真ん中に穴の開いた円盤のような形状。磁気の向きが左回りか右回りかで
情報を記録する。リングから磁気が漏れないため隣の素子に影響を与えない。
 従来の素子は長方形で、磁気が左右どちらに向きかで情報を記録していた。
素子から磁気が漏れるため素子の間隔が0.3μm以下になると、隣の素子の情報を
書き換えるため微細化に限界があった。新型素子は間隔を配線の太さ並の0.1μm
以下まで狭くでき、高集積化が可能になる。基板を斜めに傾けて回転させながら
回路を焼き付ける、独自の手法でリング状の素子を作った。

(2002/4/8:日本経済新聞)


大阪大:たんぱく質の結晶を大きく成長

 大阪大学工学部の研究室グループはたんぱく質大きな結晶を簡単に作れる技術を
開発した。1mm以上の結晶が10日前後でできる。たんぱく質の機能解析には大きな
結晶が必要だが、これまでは作製が難しかった。ゲノム(全遺伝情報)をもとに医薬
品などを開発するのに役立つ。既に基本特許を取得済みで、たんぱく質を扱う
バイオ企業などと協力した産業応用を目指す。
 佐々木友孝教授と大学院生の安達宏昭氏らの成果。たんぱく質を溶かした液を、
それよりも重い不溶性溶液と一緒に容器に入れて分離させる。不溶性溶液の上で
たんぱく質結晶を作るため、たんぱく質が容器の底に張り付かず、豆腐のように
柔らかい結晶を容易に取り出せる。
 卵の白身に含まれるリゾチームというたんぱく質を使って結晶作りを試みた。
たんぱく質の粉末を40℃で溶かした後、温度管理を工夫して1日あたり0.1-0.5度
ずつ温度を徐々に下げたところ、11日で1.3mmの結晶ができた。種結晶にして更に
育てると最大で4mmまで成長した。
 これまではたんぱく溶液から水分を蒸発させて結晶を作ることが多かった。
結晶ができるまで2-4週間かかるうえ、結晶成長速度を制御できず品質が低い
難点があった。

(2002/4/5:日本経済新聞)


産総研:カーボンナノチューブ利用の電子銃開発

 産業技術総合研究所は微細な筒状炭素分子「カーボンナノチューブ」を使い、薄型
ディスプレー用の重要電子部品を開発した。電子銃という部品で電子を放つ。
 厚さ1cm以下の次世代ディスプレーを実現できるという。5年後の実用化を目指す。
 シリコン基板に高さ1μmの微細な山を多数作る。表面に鉄を蒸着してメタンガスを
高温で流し込むと、直径1-2nmのカーボンナノチューブが伸びるように成長してくる。
シリコン基板の上部に電極を設けて4Vの電圧をかけると、ナノチューブの先端から
電子が放出された。従来は100V以上が必要だったが、開発した電子銃は乾電池でも
動く。
 ディスプレーに開発した電子銃を応用するには、電子の放出先に3色の蛍光板を
取り付ける。電子が当たると光り、カラー画面を表示できる。電子銃は半導体製造
技術を使っているので微細化しやすく、小さくても高精細なディスプレーが実現
できるという。
 大画面ディスプレーとして実用化されているプラズマ方式は消費電力が大きく
重いのが欠点。液晶は他方式に比べて暗く、斜めから見えにくいという問題があった。

(2002/4/5:日本経済新聞)


SIIなど:世界最小級の歯車を開発

 セイコーインスツルメンツ(SII)と北川工業、昭和電工は信州大学の協力を得て
直径0.2mmという世界最小レベルの歯車を共同開発したと発表した。プラスチックに
ナノテク素材を混ぜ合わせて強度や加工性能を高めたのがポイントで、微小部品の
量産化を可能にする射出成形での製造を実現した。
 昭和電工が量産している直径80-100nmの円筒状炭素繊維カーボンナノファイバーを
利用した。北川工業がプラスチックに重量比20%の比率で混ぜ合わせる技術を確立し、
その複合材をSIIが射出成型によって6枚の歯をもつ歯車に加工した。時計部品として
実際に駆動することも確認した。
 ナノファイバーを混合したプラスチックは加熱時の流動性が高まるため金型の形状を
忠実に再現でき、精密加工がしやすくなる。耐摩耗性が10倍以上改善し、摩擦抵抗は
1/5に減少するなどの特性を持つため、耐久性と機械効率の高い微小の駆動部品になる
という。
 三社は新技術を活用して共同で事業を展開していく。SIIと北川工業はユーザーの
用途に応じた微小部品を共同で製造・供給する方針で、近くサンプル出荷を始める。
時計用駆動部品にも応用するほか、OA機器や医療機器、自動車部品など幅広い分野での
需要を見込んでいる。昭和電工は素材となるナノファイバーを供給する

(2002/2/7:日本経済新聞)


東工大:レーザ照射で紙飛行機飛ばす

 東京工業大学の矢部孝教授らは、地上から照射するレーザを推進力に利用する
ミニ飛行機を開発した。飛行機に積んだ水などにレーザが当たると蒸気に変わり
噴出、エンジンの代わりになる。小型カメラを載せた無人探査機などに有望で、
特に空気が薄くてプロペラ機では行けない高空や宇宙空間での活躍が期待できる。
 紙飛行機の尾部に数mm角のアルミ片を取り付け、水滴を載せた。これにレーザ
光を断続的に照射すると、アルミ片が加熱され、水が一気に蒸気となって噴出。
机の端に置いた紙飛行機は、カタパルトで打ち出されたかのように勢いよく
前に進んで、数m先まで滑空した。
 水の量とレーザを当てる時間間隔をうまく調整すると、飛行機はグライダーの
ように長時間、滑空し続ける。翼などにも同じような装置を付け必要なときに
レーザを照射すれば、曲がる方向も変えられる。エンジンが要らないので、その分
機体重量を軽減でき、故障も起きにくい。米政府もこのアイデアに関心をもち、
応用研究をしているもようだ。
 将来、指先に乗るほどの超小型の飛行機を作るアイデアもある。矢部教授は
「プラントの配管の中を飛ばし、検査に利用できるかもしれない」と展望している。

(2002/2/4:日本経済新聞)


東芝・日立:携帯機器むけに燃料電池開発

 東芝と日立製作所はノート型パソコンなど携帯機器向けの超小型燃料電池を
相次ぎ開発、2003年にも実用化する。現行の充電池と比べ充電が不要で長時間
使用できるため、携帯機器が大幅に使いやすくなる。
 動画の送受信など電力消費が多い高度な情報機器の開発も容易になる。
次世代電池の本命である燃料電池は米企業も試作しており、国際開発競争が
本格化する。

 燃料電池は水素と酸素を反応させて電気を起こす。家庭用や自動車用では
クリーン電源として開発が進んでいるが、携帯機器など情報技術(IT)分野での
普及が先行する見通し。
 東芝はパソコンと携帯電話の中間の情報機器として需要が広がっている
携帯情報端末(PDA)向けの燃料電池を試作した。最大出力8W。重さ500g。
燃料にメタノールを使用。わずか10mlで、現在主流である充電式のリチウム
イオン電池の5倍の40時間の連続表示ができる。現時点では厚さが25mmだが、
5mm程度までに小型化し、重さも100g以下にする技術的なメドをつけている。
他社に先行して2003年に発売する考え。携帯電話向けの開発も進める。
 日立はノート型パソコン向けに携帯電話程度の大きさの燃料電池を開発した。
2003年を目指している実用化段階では、パソコンの連続使用時間を現行の
3時間から10時間以上に延ばす。メタノールをカートリッジ式のタンクに入れ
各種デジタル機器に差し込む方式を計画している。
 両社の燃料電池は特殊な膜にメタノールを通して水素を直接取り出す技術が
特色。従来は別の装置を使って水素を取り出すため、小型化が難しかった。
燃料電池は充電式電池に比べ、小型化が難しいものの、@使用時間が長い
A燃料を補給するとすぐに使える B軽量化しやすい C電池の寿命が長い−
などの利点がある。既存の充電池並の価格で実用化できるとみている。
ビジネスマンが長期に出張したり一日中得意先を回っている際も、携帯機器を
使った事務作業を長時間できるようになる。
 ソニーは膜にナノテクノロジー(超微細技術)を活用したクレジットカード
大の試作品を開発した。海外ではモトローラなどが携帯電話用燃料電池を
試作している。

(2002/1/20:日本経済新聞)
燃料電池の試作品
        写真は東芝が開発した燃料電池の試作品


日立:熱を伝えるプラスチック開発

 日立製作所は、従来の5倍熱を伝えやすい新たなプラスチックを開発した。
発電所の発電機や半導体回路などでは、内部で発生する熱をいかに外に逃がし、
機器の加熱を防ぐかが大きな課題になっている。熱を伝えやすいプラスチックを
使えば、システムを大幅に小型・軽量にし、製造コストを下げることができる。
2004-2005年をメドに実用化する。

 日立が開発したプラスチックは、エポキシ樹脂の一種。ある温度で1m離れた
場所に1秒間にどれくらいの熱量が移動するかを表す熱伝導率が最大で1.0に近く、
従来のエポキシ樹脂の約5倍に達する。
 プラスチックは軽くて加工しやすいなどの特徴があるが、熱を伝えにくい。
電気・電子機器の容器や絶縁材料などに用いると、機器内で発生した熱を外に
発散しにくく、加熱による危険や部品の機能低下などの問題が生じる。
 これを回避するため、例えばプラスチックの被覆材を用いている発電所の
発電機用コイルでは、近くに水を流すパイプを張り巡らせて冷却している。
 エアコンや携帯電話の基地局などに使われる高出力トランジスタの絶縁シート、
自動車に用いる電子回路の基板などは、プラスチックよりも熱を伝えやすい
セラミックスをつかうことが多い。
 
 今回開発したプラスチックなら、熱が伝わりやすくこもりにくい。
発電機コイルに応用すれば、システムを複雑な水冷方式から簡便な空冷方式に
変えることができ、小型軽量化できる。絶縁シートや基板なども、硬い
セラミックスではなく、加工が容易で軽いプラスチックで作れるようになり、
製造コストなどが大幅に下がる見通しだ。
 半導体素子が今後ますます微細化すれば、発熱が半導体の性能に大きく
影響するが、半導体チップの外装に新型プラスチックを応用すれば、これまで
以上に素子の微細化の限界点をあげられる可能性がある。
 開発したプラスチックは見た目は透明。熱によって膨張しにくく接着しやすい
など、成型に適した特性を備える。コストは約10倍に高くなる見通しだが、
プラスチック材料は通常、熱伝導性が比較的良い他の材料粉末などと混ぜて
使われ、使用料は多くない。
 システム全体から見ればコストの上昇はわずかで、日立ではシステムの
簡略化などによるコストの減少の方が圧倒的に大きいと見ている。

(2001/12/28:日本経済新聞)


東芝:システムLSIなどの高速化技術を開発

 東芝はデジタル家電やゲーム機などに組み込むシステムLSIの動作速度を
上げる新技術を開発した。高速トランジスタ実現の障害となっている電流の
漏れを半導体基板中空洞を作るユニークな手法で防いだ。
トランジスタの動作にかかる時間が約40%短くなり製造コストも少なくて済む。
競争力の高いシステムLSIを戦略技術と位置付け4年後をメドに実用化する。

 トランジスタを高速化するため小型化すると素子から電流が漏れて動作が
遅れる問題が生じる。東芝はトランジスタの真下の基板内に空洞を作ることに
よって漏れを防いだ。基板に深い穴を掘ってから、水素ガス中で1000℃以上に
加熱すると、入り口が溶けてふさがる。その上に素子を作製する。こうする
ことでトランジスタのオンオフ切り換え時間が5ピコ秒と、特別な構造を持た
ない場合の8ピコ秒に比べ約4割短くなる。
 また東芝以外の半導体企業が実用化を目指すSOIと呼ばれる高速化手法を
採用した場合の6ピコ秒をも上回るという。この速度は2003年登場予定の
システムLSIが採用する電極長さ50ナノメートルのトランジスタを試作して
比較した結果だ。

 SOIは電流漏れを防ぐため基板内に絶縁層を作る方法。すでにシリコン
ウエハメーカが絶縁層備えたSOIウエハの供給を一部で始めているが、直径
8インチ規格で約10万円と普通のウエハの約10倍もする。これに対し新技術は
約2倍に抑えられるという。SOI製造には専用の大規模設備が必要でウエハ
メーカが作り半導体企業に供給するのに対し、空洞基板は半導体企業が自らが
LSI製造ラインて加工できるためだ。

 東芝はDRAM事業から撤退し、付加価値が高いシステムLSIを半導体
事業の新たな柱にする。新技術はこの市場での優位性を獲得するための戦略
技術と位置付けている。
(2001/12/21:日本経済新聞)


東大・都立大:ダイヤ薄膜に微小な穴形成

 東京大学大学院の藤嶋昭教授と東京都立大学の益田秀樹教授らは、
ダイヤモンドの薄膜に向きのそろった微小な穴を多数あける技術を開発した。
ダイヤモンドは硬くて化学薬品に溶けにくく、光も良く通すため、この穴に
様々な物質を詰めて微小な反応容器としたり、光通信用の素子などに利用が
見込めるという。
 穴の直径は数十nmとほぼ均一で、半導体の表面に回路を刻む技術を
応用して掘った。1分で1μmの深さに削れ、穴の大きさは10nm〜100nmの
範囲で制御できる。穴の形状も網の形によって自在に変えられる。

(2001/12/17:日本経済新聞)


アールエフ:薬のように飲むカメラ開発

 医療用カメラメーカのアールエフはカプセル型の超小型内視鏡を開発した。
風邪薬の様に飲み込み、胃腸の中を通り抜けながら体内を撮影する。
来春から臨床実験に入り、早ければ来年度中に実用化する見通し。
従来の内視鏡に比べ検査時の苦痛を大幅に軽減できる。

 カプセル型内視鏡は円筒形で直径が1cm長さが2.3cmと指先程度の大きさ。
飲み込むと食道から胃、十二指腸、小腸、大腸を通過しながら1秒間に30枚の
画像を撮影。動画として体内の状況を観察できる。

 カプセルには超小型のCCD(電荷結合素子)カメラを搭載、市販のホームビデオ
カメラと同水準の高画質が得られる。市販のビデオやプリンタにつなげば録画や
印刷も可能。
電力は体外から電波に乗せてカプセル内部に送り込む。外部からカプセルの回転を
制御し、体内を通過する速度や進行方向を調節できる。撮影した映像も電波で
体外コントロール装置に送る。カプセルは使い捨てで、使用後は排泄物と一緒に
体外に出る。
価格は内視鏡が1個13000円、体外装置が約130万円。胃カメラの代替品として
病院向けなどに売り込む予定。

(2001/12/19:日本経済新聞)


松下電器:ナノメートル大の金属粒子を均一に配列

 松下電器産業は、超高速・超低消費電力動作する未来の電子素子に必要な
超微細な構造を作る新技術を開発した。きれいに配列するたんぱく質の性質を
利用し、ナノメートル大の金属微粒子をシリコン基板の上に並べられる。
超大容量の記憶素子や発光素子などの心臓部になる。現在の半導体加工技術は
70nm前後が限界とされ、その壁を超える量産手法として有望と見ている。

 松下が開発した製法は、生物の体内で鉄を蓄えているたんぱく質(フェリチン)を
利用する。フェリチンの中に直径6nmの空洞を作り、同12nmの球状になるように
改造した。空洞には鉄やコバルト、ニッケルなど様々な金属を組み込める。
 フェリチンを溶かした溶液表面にたんぱく質の膜を作ると、ここにフェリチンが
吸着され整然と並ぶ。この状態の膜をシリコン基板に写し取ると、金属微粒子を
含んだフェリチンが並んだ結晶になる。たんぱく質を加熱して除去すると、金属
微粒子だけが残り、素子の心臓部となる超微細な構造ができあがる。
 松下の研究チームはこれまでに、直径6nmの酸化鉄粒子が12nm間隔で並んだ基板を
作った。たんぱく質の種類を変えれば金属が入る空洞の大きさや配列する間隔なども
制御できるとしている。
 電子を蓄える機能はこれから確認するが、現在のメモリーの容量をはるかに
上回る記憶素子の開発につながる。ナノテクノロジー(超微細技術)を駆使すれば、
国会図書館が収容する、全ての情報を角砂糖1個に記憶できる素子ともいわれ、
それを実現する技術になりそうだ。
 このほか、電子1個で働く「単電子トランジスタ」や発光素子などの開発も
見込めそう。現在の半導体は、動作に約10万個の電子が必要とされるのに対し、
単純比較で消費電力を10万分の1に抑えられる。実用化の時期は10年以上先に
なるとみられる。

(2001/11/9:日本経済新聞)


国際基板材料研:特殊なフラーレンの量産技術開発

 ナノテクノロジーの新素材として期待を集めるボール状炭素分子
「フラーレン」で入れ子構造をもつ特殊タイプを量産する新技術を
ベンチャー企業の国際基板材料研究所が開発した。燃料電池用の
水素貯蔵材料や電磁波吸収材などに応用を狙う。
 60個の炭素原子がボール状に結合したフラーレンが、240個の炭素
原子でできた大きなフラーレンの中に入った二重構造の分子。直径は
1mmの約50万分1。
 炭素の棒に強いレーザ光を当てて3000℃に加熱し炭素を蒸発させる。
蒸発した炭素が冷える過程で、入れ子構造のフラーレンができる。
この構造ができる割合(収率)は、8−9割に高めることができ「普通の
フラーレン」とほぼ同じ値段で製造できるという。入れ子構造の
フラーレンは100g中に6−8gの水素を蓄積できる。

(2001/11/9:日本経済新聞)


産総研:ナノチューブで超硬度材料

 独立行政法人の産業技術総合研究所は筒状の炭素分子カーボンナノ
チューブを使ってダイヤモンド並の硬さを持つ材料を開発した。

 ナノチューブの塊を24万気圧以上の高い圧力で押し固めた。工具や
マイクロマシンなどへの応用を目指す。直径が1.2−1.3nmのナノ
チューブの束を高密度に並べ、高い圧力を加えると全体が固い材料になる。
直径20μm、厚さ10μmの薄膜を試作した。黒鉛を高温高圧でダイヤモンドに
変える方法はあったが、ナノチューブは高温にせずダイヤモンド並の硬さに
できるという。ナノチューブは金属並に電気を通し、熱も伝えやすい。

(2001/11/9:日本経済新聞)


堀場製作所など:微量物質測れるバイオセンサを開発

 堀場製作所、豊橋技術科学大学などは、環境中の有害物質をナノグラム
単位で測れる高感度バイオセンサーを開発した。

 新センサーは堀場とその子会社バイオ・アプライド・システムズ、豊橋
技術科学大学の沢田和明助教授が共同で開発した。デジタルカメラなどに
使われている電荷結合素子(CCD)の表面にカギとカギ穴の関係のように、
特定の有害物質と結びつく抗体と呼ばれるたんぱく質を並べた構造をしている。
CCDと周辺回路を集積し、チップ状に仕上げた。試作したセンサーの大きさは
約2cm角。
 有害物質が抗体に結合すると、抗体からイオンが発生し、CCD表面に電気が
たまりやすい領域ができる。この電気がたまりやすい領域がどの程度できて
いるかを電気的に増幅して読みとることで微量な有害物質の濃度が測定できる。

 実験では環境ホルモン(内分泌かく乱化学物質)作用の疑いがある溶液中の
「ビスフェノールA」を数ナノグラムの単位で測れた。測定に要する時間は、
濃度を測りたい物質によるが、サンプルをセットしてから数秒から30分程度。
CCDを使うので、他の処理回路と組み合わせやすく、小型化が可能なため、
持ち運びのできる簡便な測定装置に仕上げられる。さらに抗体を改良すれば、
大気中の有害物質の測定も可能になる見込みだ。

 従来の測定法であるクロマトグラフィーなどは高感度なものの、測定に
時間がかかるほか、専門的な訓練を受けた人が必要だった。

(2001/11/2:日本経済新聞)


三井化学:高性能樹脂、合成効率3000倍

 三井化学は効率よく合成樹脂を生産できる新たな触媒技術を開発した。
これまで難しかった分子の長さや構造が均一に揃った樹脂を作れ、合成
効率は従来の約3000倍。強くて軽い人工骨のような医療用材料や、一層
薄くて耐久性のあるフィルムなどの実現に役立つという。国際競争の
激しい合成樹脂分野で勝ち残るために不可欠な高付加価値製品の開発を
支える基本技術として実用化を目指す。

 開発したのは樹脂生産に一般的な錯体触媒の一種で、金属の周りに
フェノキシイミンという特殊な有機物がくっついた構造をしている。
合成反応が安定した状態で起こる特徴をもち、分子の長さや構造が揃った
均質な樹脂を作れる。合成するときの温度は50-75℃で現在の樹脂の製造
条件とほぼ同じ。
 新触媒でポリエチレンの合成を試したところ、分子の長さや構造が
そろっていないタイプは、1時間当たり従来の150倍以上の約6.5tを製造
できた。一方、分子の長さなどがそろった均質なタイプは1時間当たり
41kg合成できた。合成効率はすでに一部で実用化していて分子の状態が
そろった樹脂を作れる「夢の触媒」といわれたメタロセンの3000倍。
触媒に使う素材のコストは、量産時にはメタロセン並に抑えられると
予想している。

[解説]
 有用な樹脂の生産は触媒がカギを握る。三井化学の触媒技術は高付加
価値樹脂を開発・生産するのに有望で注目を集めている。
 現在広く使われている汎用樹脂製造用の触媒は1950年代に開発された
チーグラー触媒。80年に開発されたメタロセン触媒は樹脂を合成する効
率(活性)が高く、作られる樹脂の分子の長さや構造を精密に制御できる
ことから「夢の触媒」といわれた。しかしその後は一部で実用化された
ものの、予想されたほど樹脂の機能を高めることはできなかった。
 メタロセンの次をねらう新型触媒の開発競争は90年代半ばから活発化。
代表的な触媒は米デュポン社のブルックハルト触媒で、ポリエチレン
樹脂合成の活性はメタロセンよりより2倍以上高い。米ダウ・ケミカル
なども新型触媒の開発に注力している。

(2001/08/03:日本経済新聞)


日立:世界最小、粉末状ICチップ

 日立製作所は紙にも埋め込むことができる世界最小のICチップを開発した。
電波でデータを読みとることができ、番号を記録して紙幣や有価証券の偽造
防止に役立てたり、量産品の1個1個の物流管理を可能にする。
 半導体の微細加工技術を活用して体内に埋め込む微小機器を作るなど、コン
ピュータ向け以外の機能をもったチップが続々と登場しており、生活や産業の
姿を大きく変えようとしている。

 日立が開発した「ミューチップ」は0.4mm角で厚さ0.06mm。紙に埋め込んで
折り曲げても壊れない。128bitROMを備え、最大38桁の数字が記録できる。
製造コストは1個10-20円。
 バーコード読みとり装置のような器具で、記録した識別番号などを読みとる。
扱える数字が膨大なため、商品や書類1枚1枚に識別番号を付けることができる。
小切手や有価証券に埋め込んでおげば、取引時にネットワーク経由で銀行などに
照会し、本物かどうかを確認できる。万一盗難に遭っても、使われたらすぐに
判るので、犯罪防止につながる。また、ブランド品に付ければ偽ブランド商法を
防ぐことができる。宅配便の仕訳作業のミス防止にも役立つ。商品がどこでどれ
だけ売れたかを容易に把握でき、市場調査やトラブル時の対応も容易になる。

 電波でデータを読みとれる無線ICチップは1980年代にはテキサス・インスツ
ルメンツが実用化。欧米では、自動車の盗難防止や工場での生産管理などに
使われている。日本でもJRの改札などにも使われ始めているが、紙や布に埋め
込めるほど小型・薄型化したのは日立が初めて。オランダのフィリップスは
約1mm角の無線ICチップを実用化。日本では東芝などが、サイズは大きいが
情報の書き換えもできるチップを開発している。

 シリコンなどの半導体やガラスなどの小片に、多様な機能をもつ素子や
機構を集積した新機能チップの開発が相次いでいる。日立のような情報通信用の
チップのほか、人間の遺伝子を識別したり、健康の状態をチェックするなど
様々な用途に使われ始めている。
 米ベンチャーのボール・セミコンダクターはセンサを搭載した直径1mmの
ボール状半導体を開発中。患者の血管や臓器の状態を調べる用途を考えている。
 米バイオベンチャーや、宝酒造などは、指先大のガラス片に血液サンプルを
たらし、遺伝子を素早く診断するDNAチップを事業化。半導体の加工技術を
応用する事で、より小型で高性能の製品を目指している。
 東京大学などが、ガラス上に化学コンビナートと同じ機能をミニチュア化
して搭載、「チップ型の工場」として医薬品など微量の物質を合成する
研究を進めている。
 従来のチップはコンピュータの高性能化を主な目的として性能を向上させて
きたが、ここに来て多様な応用を目指した開発が活発になっている。

(日本経済新聞:2001/06/28)


万引き防止用極細のタグを開発

 産業用計測機器開発のユニパルスはニッパツと共同で、毛髪並に細いワイヤを
使った万引き防止システムを開発した。日曜雑貨などを製造する過程で磁気性が
あるワイヤをタグとして組み込む。商品を無断で店舗外に持ち出すと出口に設置
したセンサ内蔵のゲートが磁気を関知して警報を鳴らす。細くて外部からは見え
にくいので、幅広い商品に取り付けられる。ドラッグストアや書籍などの業界
団体を通じて試作品の納入を始めており、3月から出荷を始める。
 ワイヤ状のタグはニッパツが線材を開発し、ユニパルスがワイヤの磁気を制御
するシステム開発を担当した。ニッパツが生産し、ユニパルスが化粧品メーカや
製本会社などに販売する。タグは細さ0.3mm長さ4cm。
 商品自体にタグを貼り付けたままメーカが小売店に出荷する「ソースタギング」は
米国でも普及している。新システムは既存のガム状タグに比べて極めて細いので、
書籍の背表紙や化粧品容器などの様々な商品に製造段階から取り付けやすい。
これを使えば商品の盗難を防ぎやすい。
 販売店には警報機能付きゲートとタグの磁気反応を制御する機器とを合わせて
提供する。販売店はタグが磁気に反応するように設定して商品を陳列し、顧客が
レジで代金を支払ったときに磁気を消す。
 ユニパルスはこのシステムの普及を目指してチェーンストアに貸し出す形を
取る。販売店はシステム更新時の負担が減る。使用料は月3万円前後になる見込み。
日本チェーンドラッグストア協会や書籍販売の業界団体と話し合いに入っており、
2001年に約1000セットを設置する計画。
 ユニパルスは重量計など産業用の計測制御機器関連の制御システムに強みをもつ。
こうした技術を生かして、1999年ごろから花王向けに物流システムを納入するなど
新規事業を強化している。今回の監視システムはセキュリティー部門の柱と位置
付けている。

(日本経済新聞:2001/02/14)