FSX ジェネラルアビエーション用 ミニコックピット製作記




経緯 (ついに夢のコックピットが実現可能に... 自作できる!)

 昨年(2014年)の春頃、Backyさんから、「2.8インチQVGA(320x240)液晶を使って、FSX用計器開発中。」とのアナウンスがあり、その後、計器種類の追加、複数台連結、スイッチにて計器切替え、シリアルポートから汎用USB仕様への変更、設定ソフトのEXEファイル化、等のハードウエア・ソフトウエア機能改訂があり、それら刻々とBBSに発表していただく画像を見ながら、ソフトウエア・ハードウエア共に知識を持たない私でも、QVGA液晶計器を使ってコックピットを作れそうだという期待が高まっていきました。
 PCのキーボードを一切使わずに、またFS画面の計器を使わずに、実機に似たコックピットでFSをするという、ちょっと前までは実現不可能だと思われていたFSシマーの「夢」が、にわかに実現可能性を帯びてきたのでした。

 そしてとうとう11月にはQVGA液晶計器が開発完了してキット化され、最初のロットを頒布していただけることになり、私は7台をお願いすることとなりました。

 速度計+姿勢計+高度計+旋回計+昇降計+VOR+エンジン回転計を設置したミニコックピットを作ろうというわけです。

 基本T字計器の内、ジャイロコンパス(定針儀)がありませんが、手持ちのSaitekFIPでHSIを表示させるので省きました。また、CDI(VOR)とエンジン回転計の2計器は、切替えスイッチで他の計器にも切替え可能にして、汎用性も持たせることにしました。
 なお私は、このQVGA計器キットを含めBackyさんの作られた計器類を、BackyWorks製計器と勝手に呼んでいます。これは、以前にBackyさんからいただいたラジオスタック計器BOXに、「BackyWorks」の銘板が取り付けられていた事によるものです。

 11月の下旬にはBackyさんから7台のQVGA計器が到着し、それに加えてアクリル製のコックピット用パネルも作成してくださったものが同梱されていて、いよいよ製作に取りかかる事となりました。



ミニコックピット製作記録

 私の計画としては、FSXにあるセスナ172のコックピットパネルをモデルに、一部Mooneyのパネル配置も参考にして、航行用計器と通信計器、フラップやエンジン制御、ライト類制御、ランディングギアレバー、ヨークを一体化したパネルを作ることにしました。

 Backyさんの計器到着前に、まずはPC上で画像貼り付けして、仕上がりイメージを作りました。
 FSXのバーチャルコックピットやキーボード無しでも飛行できる事が、製作の最終目標です。
 計器はBackyWorks製FlightInstrmentPanel(FIP)7台と、SaitekFIP1台、GoFlight RP481台、BackyWorks製ラジオスタック、その他スイッチ類で組み上げることにしました。
 私の考えるパネル配置について、メールでBackyさんと相談し、計器の配置・組み合わせについて決めました。



2014年11月
 11月にはBackyさんから7台のQVGA計器が到着しました。
  開梱してみると、NC旋盤で穴あけ加工済みのアクリル製のコックピットパネルがサービスで同梱されていて感謝感激。
 まずは、BackyWorks製アクリルパネルに、スイッチ用の穴と、取付け用の穴を開けました。
 アクリル用のドリルピットが見つけられなかったので、ラジオ少年だった頃から使っているアルミ用のドリルで穴開け。慎重にやったつもりですが、やはりfuji3さんやBackyさんから忠告を受けていたとおりに、1カ所だけ割れを作ってしまいました。
 10mmほどの割れなので、アクリル用接着剤でくっつけて事無なきを得ました。
 アクリル用のドリルピットは後日にホームセンターで見つけましたが、4mm径のものしか無くて、やはり田舎の辛さです。また、かなり高価です。
 4枚のアクリル板をつなぎ合わせて出来ているパネルは2mmの厚さがあり、強度はまあまあありますので、接合部分にのみ裏から補強板を当てるだけにしました。


2014年12月

 次にミニコックピットの骨組みとして、9mm厚木板で枠を作り、そこにパネルを取り付けます。
 パネルには、ガラス窓などに貼り付ける磨りガラス調シートを貼りました。
 というのも、黒いアクリルパネルはピカピカ光っていて美しいのですが、触ると指紋が着いたりしてすぐに汚れてしまいます。また、角度によっては自分の顔が映ることもあって、う~~ん、となってしまうものですから....
 また、シートの弾力性が、少しなりともアクリルパネルの強度を補強してくれるということも期待できます。
 シートは接着剤が付いていないタイプなので、具合が悪ければ簡単に剥がすことができます。

 次には、筐体カバーを作ることにして、発泡スチロールのブロックを半分に切り、筐体カバー天板側の支えを作りました。
 また、階段滑止め用のスポンジ材で筐体カバーの縁飾りを作りました。柔らかい素材なので、カバーの曲線に合わせてうまく曲がってくれます。

 ここまでで、BackyWorks製QVGA液晶計器を取付ける準備が出来たわけですが、他に、スイッチ類を制御する電子回路が必要です。
 この時点で既に、BackyWorks製FIPのファームウエアがバージョンアップしていて、FIP1個に付きスイッチ回路を5個まで使用できるようにはなっていたのですが、ちょっと電子知識の維持のためにも、他の方法も試してみることにしました。

 以前にスロットルユニットを作ったとき、不要になったUSB接続ゲームコントローラーの基板を改造して使ってうまくいったことがあったのですが、今回もその手でいくことにしました。
 ちょうど不要になった12ボタンのゲームコントローラーがあって、その中に入っているスティック回転検知ユニットの半固定抵抗器が、Saitekスロットルクオドラントに使っている部品と同じなので、本来の目的の前に、まずはクオドラント補修用部品確保のためにもと、半固定抵抗を取り外して保管することにしました。
 半田ごてと半田吸取り器で悪戦苦闘してユニットを取り外しましたが、予想通り基板は正常動作しなくなったので、代替として4.6kΩの抵抗を付けて回転軸以外の動作を回復させ、あとは基板の配線を眺めて必要なコードを配線して、スイッチ12個まで制御できる基板は準備できました。

 なお、現在では、BackyWorks計器の追加機能として、1台のQVGA計器につき5個の各種制御スイッチが接続できるわけですが、コントロールソフトにあるプリセットメニューの中から、各種機能を割り当てる事ができます。上記の12ボタンではとても足りないので、完成したコックピットでは、このFIPスイッチ機能も使用しています。

 ここで、ちょっと。
 12ボタンスイッチの1回路では、ランディングギア用にオルタネート動作スナップスイッチを使うのですが、電子回路的にはモーメンタリー検知にするために、220μFの電解コンデンサとリレーで小細工をしました。
 要するにスイッチを上げても下げても(入れても切っても)、短く1回だけ接点がつながるようにするために、スイッチを入れたときはコンデンサに電気が溜まるまでの間リレーが通電し、切った時にはコンデンサに溜まった電気でしばらくの間リレーをONにするだけのものです。一応動作はしていますが、コンデンサは330μFぐらいがよいようです。
 また、DCリレーは+-の極性の無いものでないと動作しません。


2015年1月

 パネルにQVGA計器7台を取り付けました。パネルはBackyさんがコンピューター制御NC旋盤で穴開けをしてくださっているので、数多いネジの位置と寸分の狂いもなく、ぴったりと収まりました。恐るべしNC旋盤。
 その他に、BackyWorks特製ラジオスタック(Backyさんからいただいたものです)、GoFlight RP-48や Saitek FIPも取り付け、動作テストに入りました。
 コックピット下部(ヨークの右)のパネルはこの時点で未完成ですが、ここにはエンジン系やライト類、ランディングギアのスイッチが付くだけですから、計器表示のテストは出来る状態です。

 先ずはFSX接続無しでの動作チェック。設定ソフトで各QVGA計器への機能割り振りを行い、各計器が無事に表示されることを確認。
 なお、各計器・機器への電源供給ですが、PCのUSB端子のみでは数も足りず電力不足にもなりましたので、セルフパワーのUSBハブを3個併用しました。
 QVGA計器は1台につき150mAほどの電流が流れるとのことです。液晶計器と他の機器類でおよそ1.5~2A流れると見て、全体としての消費電力は約10Wぐらいでしょうか。

 基本的な計器表示の動作確認が出来た後は、FSXとの連携確認です。
 セスナ172でバーチャルコックピットを表示しながら飛行し、QVGA計器の表示と比べてみます。
 もちろんのことながらQVGA計器も正確な値を表示しています。
 急激な上昇下降をしたときに、昇降計の反応がほんの少しだけ遅れる感じもありますが、問題はありません。
 FSXのフレームレートへの影響もほとんど無いようです。

 このチェックが終わったら、いよいよ「自作」の部分となるスイッチ類のパネルを作るのですが、その際、航行灯類の5個のスイッチは、PCの5インチベイ用のファンコントロールユニットを使うつもりでした。それをそのままはめ込んで使うつもりでいたのですが、スイッチ動作が重く、力を入れないとレバーが倒れません。また、見た目がいかにも昔ながらの「トグルスイッチ」なので、今ひとつだな~とは思っていたので、ここは思い切って感じのいいスイッチに5個とも取り換えることにしました。
 以前にkanoさんから大量にいただいた電子部品の中にちょうどいいものがあったのを思い出し、早速取り換えてみたら、見た目もいいし動作も軽いので、ここは一手間掛けてみて正解でした。


2015年1月中旬
 いよいよ最終局面。
 追加パネルも出来、スイッチ類も取り付けました。いよいよ、スイッチの機能割付けと確認、パネルへのレタリング文字貼付けを残すのみです。

 ミニコックピットは全体で4つの部分から出来ています。

 は、BackyWorks特製FIP計器キット7台+SaitekFIP1台で構成されるパネル。
 は、マグネトー選択エンジンスターター+予備スイッチのパネル。
 のパネルは、ライト類のスイッチ+フューエルタンクセレクタ+フューエルポンプ+ピトーヒート+パーキングブレーキ+ランディングギア。
 は、GoFlightのRP48+BackyWorks特製ラジオスタックユニット+フラップやGPSレンジ等スイッチ。

 00と06の計器は、スイッチにて5種類の計器に切替え可能です。
 04と06の計器にはロータリーエンコーダーによる数値設定ノブが付いています。
 PCにつないでテストフライトしましたが、私の飛ばし方で使う限りFSXのコックピット画面無しで問題なく飛行できます。他にSaitekのスロットルクオドラントとラダーペダル、ELECOM製のキーボードエミュレーター機能付きゲームパッドがあるので、PCのキーボードは全く使う必要がありません。
  最下部にあるSaitekヨークは、ねじ止めして一体化してあります。全体の重量のおかげで、固定器具なしでも何の問題もありません


2015年2月

 BackyWorksFIPの追加スイッチ機能には、ライト類スイッチ(5回路)と、燃料タンク切替え+燃料ポンプ(計4回路)、マグネトー+スターター(計5回路)に割り当ててあります。

 割り当てに当たって一工夫。
 スイッチ回路の効率的割当て(節約?)のためと、わずか300μAとはいえ複数の回路がONのままでは気持ちも良くないので、スイッチレバーを上げ下げしたときに一瞬だけスイッチがON(モーメンタリー動作)になるように、回路を組むことにしました。

 ランディングギアスイッチでも、これをリレーとコンデンサを使って処理しましたが、リレーの手持ちも多くないし、何せスマートではないので、この部分はトランジスタを使ってやってみることにしました。

 FIPのスイッチ回路はONのときに300μAが流れるので、トランジスタ(2SC945)の増幅率を考えると、ベースには100~200分の1程度の電流でよいので、100KΩでいいかな、とか、FIPの動作電圧は3,3Vなので、安全のためUSBの5VをLED2個で降圧して、といった感じで、ブレッドボードでのテストの後、トランジスタスイッチング回路を組みました。
 ベースに繋いである0.01μFは、スイッチのチャタリングを少しでも回避できるかと、おまじない程度に付けたものです。計算に依れば1m秒までぐらいのチャタリングに対処出来るかもしれません。

 左写真はスイッチ部分を下(裏側)から見たところです。
 心配していたチャタリングの影響は出ていません。
 ただ、スイッチを指で弾くようにして荒々しく「パンッ」と落とすと、回路が反応しません。スイッチの動くスピードが速くてOFF時間が短かくなってしまい、回路側で検出できないからでしょう。
 スイッチを指で持ちながら静かに「カチッ」と下ろすときちんと反応します。ちょっとだけ気を遣いますが、スイッチのためにはいいかもしれません。
 スイッチを、中点で止まるON-OFF-ONタイプのものにした所は、十分にOFF時間があるので確実に反応します。

 なお、トランジスタスイッチは7回路分作ったのですが、そのうち2回路は他の基板の回路(何とGNDがプラス電圧)を制御するために、5Vリレーを駆動するようにしました。このリレーは動作電流が40mAなので、ベースの抵抗は4,7KΩにしてあります。2SC945のコレクタ電流は100mAまでなので、ちょっと~、ですが、1秒間ぐらいしか導通させませんし、まぁ大丈夫でしょう。
 また、リレーには逆起電力対策のダイオード(10D1)を付けました。
 左の写真、下方の2個の四角いものがリレーです。



 このようにして、Backyさんの開発開始から約10ヶ月、私の製作開始から2ヶ月余りを経て、ようやく長年の夢、いや、FSを始めたころ(FS95の一つ前、FS4?)には実現の可能性さえ見えなかったマイコックピットが出来上がりました。
 実機のパネルよりは小さいのですが、机の上に置いてFSを楽しむには十分なサイズです。横幅は24インチモニターとほぼ同じ58cm。高さは28cm、奥行きはヨーク部分を除いて22cm。

 ひとつだけ問題なのは、ミニサイズとはいえ、これだけの装置になると部屋の中に置いておく場所がないことです。
 かといって机の上に置きっぱなしにして、メインPCや机をFS専用にするわけにもいきません。サブPCはVistaマシンなので、そう安心して使い続けることも出来ませんから。
 これから、PC周りの整理をしたり、ソロリと妻の陣地に割り込むなどしてスペースを作り出さないといけません。

 それにしても、実機に似たコックピットでバーチャルフライト。長年、夢の又夢であったことが、とうとう実現していることに、我ながら感動しています。
 ツインエンジンのジェネアビ機でも、細かい所を気にしなければこのミニコックピットで十分楽しめますし、古いアナログ計器タイプのジェット機でも飛ばせるはずです。
 せっかく作ったミニコックピットですから、大切にしながらも十分に使っていきたいと思っています。
 計器を開発し各種アドバイスをしてくださったBackyさん、工作のアドバイスをいただいたfuji3さん、部品をいただいたkanoさん、応援してくださった皆様に御礼を申し上げます。

( 2015年2月記 )

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