電子部会(兵庫県)平成4年度 発表

兵庫県教育研究会 工業部会電子部会 研究調査報告(平成4年度)より抜粋

ロボットコンテストの参加とセンサ技術の指導について

 

             兵庫県立神戸工業高等学校

             情報技術科教諭 西 川 敏 弘

 

注)この記録は、平成4年に情報技術科がはじめて卒業生を出すとき

課題研究の授業で教員と生徒がライントレーサロボットを作成した記録です。

技術的にはたいした物ではないののですが、定時制高校での技術教育の実践例

としてお読みいただければと思います。

 


はじめに

 

 本校情報技術科は平成元年に新設された学科であり、平成4年度に初めて課題研究を行うことになった。

 情報技術科ではコンピュータについて、過去3年間の専門教育の基礎知識をベースとして、各自が進路と興味に応じたテーマを選択することとしている。特に、科内では産業教育フェアでのロボットコンテストを全員で取り組むことを決意しており「モノ作りに熱中できる人作り」の実現には非常に良い機会である考えていました。

 取り組みの結果、自分たちの作品が県レベルで見ても何等遜色もなく、努力については評価されていったので、結果的に生徒を元気づけることができたと考えています。

 ここでは、定時制の情報技術科で、どのような形で課題研究を取り組んだのか、自走式という課題について,どのような指導をしていったのかということを報告したいと思います。

 また、技術的には、自走式ロボットについて、回路、動作原理ともシンプルなものが出来ましたので、基礎的なセンサの入門教材等に利用できればと考え公開したいと思います。

 


(1)課題研究の指導内容について

 

(1ー1)テーマの設定と計画の概要

 

 私のテーマは、コンピュータのハードウエアとロボット技術に設定し、希望生徒を募集しました。

 日程計画立案などは、生徒同志で決めさせ、教師提案についても討議をさせ必要と思われるルール作りと責任の明確化を行いました。

 その結果、生徒から1学期はキット組み立てで基礎的なトレーニングをして夏休み中にアイデアが出せるように勉強する。2学期からはオリジナルの作品を設計製作するという具体的な提案があり、それを認めました。

 

 教師の役割としては、最低限必要な知識についての講義とトレーニング用としてのライントレーサーキット等の提供にとどめ、生徒の創造力を高める助言が適切にできるよう自走式ロボットの資料収集、教師試作(生徒開発参考用)などを進めました。

 これは私自身、ライントレーサーの設計をしたことがなく、生徒への技術指導をするため、教師自身もある程度の学習が必要であると考えたからでした。まさに生徒と共に学んだ1学期間でした。

 生徒にはキット製作をさせることにより、教師自身の時間的余裕ができ、生徒自身の力量や特性を認識すると共に、生徒の要求する内容を的確に把握し、生徒との個別 指導ができやすい環境を整備しました。

  

(1ー2)指導上の工夫と製作作業の概要

 

 本校は定時制であり、明らかに問題となる部分については教科会議で検討がなされ、 カリキュラム的にも工夫をしていた。

 まず、時間的な問題であるが、本校では課題研究2単位に加え2単位を実習(選択実習)すなわち1日4時間を1年間かけて指導できるように工夫している。

 本年度は、本校の文化祭と産業教育フェアがほぼ同時期に有り、作品完成については、文化祭に向けて生徒の自主的な努力が見られたが、無理の無い計画をたてるよう配慮もした。

 本校生徒の特性として、次の様な問題点がある。

 良い点としては社会人としての自覚があり、つまらない事はしないという点にある。

 その反面、すこし複雑なことになると始めからあきらめてしまうことが多く、長時間の授業では、生徒たちが興味をもてばよいが、失敗すると大変になることは予想できました。

 本校では、定時制であるからといって目標を下げることをせず、一人1点以上を産業教育フェア又は文化祭に出品することを目標に設定しました。

 特に1期生ということもあり、後輩への影響もあり教科会議でも他の先生がたとも意見を交換し、科の教師、4年生徒全員が取り組む体制もできた。

 ロボットコンテストについては自走式部門については、教師も適切なアドバイスをすると約束したが、その他の部門については完全に自分たちの手で作れという指示をしました。

 1人1作品以上を製作するというのが、結果的に個別指導の要素があり、それを目的としたものである。

 

 生徒数が8名であり、どれだけの作品が作れるか、そしてどれだけ積極的にロボットコンテストに参加できるかということを第一に考えたものであり、その概要と成果を下記に示します。

 

産業教育フェア参加品

 

バスケットトレーサー号

バスケットを利用したライントレーサー(自走式)。トランジスタ4石

、2センサー方式 軽量化(500g以下 )と安定した動作をさせる。

(TV放映/兵庫県9位)

ダック号 

アヒルがシッポをふりながら動く様子を表現(自走式)コースアウトぎ

りぎりの不安定な動作をさせる。ユニークな作品としての特別賞を期待

して製作。(TV放映/兵庫県12位)

シンコウ号 

金属加工で機構的な工夫を目的とした作品。(自走式)コースアウトし

やすいが、自分でコースに戻る機能がある。

      

リモスケ

操作性にすぐれ、回転半径を小さくしている。(リモコン式)教師の手が全

く入っていない生徒独自の作品。 

(TV放映/リモコン式兵庫県ベスト8)

そうじロボット

アイデアロボットの部に作品展示。ポケコンとDC小型クリーナで自動

除をさせる。 (TV放映)

 


(2)本校製作の自走式ロボットの技術的概要

 

 前述のように、本校では自走式ロボットについては教師側である程度の技術指導が必要でした。

 現在、ロボットコンテストをふりかえってみると、手探りで進めてきたという気持であり発表には恥かしい気もするが、結果を見ると自走式については完走ができないものが半分近くあり、上位についても同一校がいくつか占める現状です。

 学校ではうまく動作していたはずのロボットが、会場では動かないという話しは、当日何人の先生がたにも伺いました。

 

 ここでは、技術的な解説を加えますが、今後この分野を指導される先生がたの参考になればという気持と共に、今後ロボットコンテストに関する技術的なことが交流できればという気持で、私自身の失敗も含めて述べたいと思います。

  

(2ー1)フォトセンサーの選択と入手について

 

 自走式を考える上でまず重要となることはラインの白と黒をどう判断するかであると思います。

 世の中には、色々な方法がありますが、結果的に入手が容易で実用上特性が安定する等の理由から、フォトインタラプタ(反射型)に絞った指導を行いました。

 

 フォトインタラプタとは、赤外線発光ダイオードとフォトトランジスタが組合されたもので、一つのパッケージに入っています。

 これには、透過型と反射型がありますが、ライントレーサーの場合、反射型を利用します。

 具体的には、車体に固定されたフォトインタラプタを床面に向け、黒色のラインであれば、赤外線は黒色のラインに多くのエネルギーが吸収され、白色のラインであれば多くのエネルギーが反射されるという性質を利用するものです。

 反射された光エネルギーにより、フォトトランジスターが動作し、電流を流すというのがこの反射型フォトインタラプタの動作メカニズムの概要です。

 

 このフォトセンサの入手方法(選択も含め)や使い方が非常に重要と思います。

 自走式優勝作品の製作をした小野工業高校の生徒も、TV番組のインタビューで「センサを工夫した」と発言しておりますが、私もこれが非常に細かいことですが、いちばん大切な内容ではないかと思います。

 

 今回のコンテストでは、スピードに力点を置くより、完走できることを第一に考えました。完走できてこそ、次の段階であるスピードアップに挑戦できるという考えをしており、特にセンサについては力点をおきました。

 

 指導内容は、中心としてメーカーデーターの読み方と設計への活用です。

 したがって、電子デバイス的な学問内容(センサ内部のフェルミレベルの変化、フック作用などのフォトトランジスタの動作メカニズムなど)は対象としていません。

 

 CQ出版の光半導体素子規格表には、各メーカーより販売されている商品が紹介されていますが、これから選ぶというのは得策ではないと思います。

 理由は、学校で購入する数量がごくわずかであり、製品自身が特殊な分野に属するので反射型フォトインタラプタの多くが受注生産化しているのが多いからです。(私が以前勤務しておりました某大手メーカーにも確認しましたので間違いないと思います。)

 これらのセンサは、産業用の用途としては、コピー機の用紙のサイズを自動認識するのに使用したり、VTR機器等のテープエンドの検出やプリンタの用紙検出などに利用されているものが多いようです。

 

 そのため、一般に流通している部品、すなわち日本橋のパーツ屋で入手可能なものの中から、自分の求める仕様に近いものを選ぶとか、場合によってはセンサーの特性にあわせて、自分の回路を変更した方が早いと思います。

 

 私の場合、自分の足で日本橋を廻りましたが流通しているのは、ごくわずかの品種であり、これらはほとんど前述の光半導体素子規格表には掲載されていません。

 それでは、どのようにしてその素子の技術資料を入手するのかということですが、

 メーカーの半導体営業部に依頼するのも方法ですが、電子部品販売店には各種有料のデーターシートを販売していたり、メーカーの技術資料(電子部品納入仕様書等)やデーターブックを準備している所があり、これらを利用する方法があります。

 

 昨年、私が調査したところでは、次のものが流通しておりました。

 (1)東芝製ではTLP903,904(いずれも長焦点距離ですがフィルタや光学的特性、内蔵の増幅回路が違う)

 (2)シャープ製ではGP2S22(短焦点距離)、GF540、GP2S01(長焦点距離)が、市販品として流通しておりました。

 (3)ジャンク品でノーブランド(購入したがデータが無く困った)

 

 金額はメーカー品でも200円ー500円程度であり、店により若干値段が違いますがそれほど高いものではありません。

 日本橋でも取扱いは5軒程度で非常に少ないので入手困難であるといえます。

 昨年6月では適当に在庫もあった様に思いますが、10月の時点では1軒を残しすべて売切れでした。コンテストに出た作品のうち、完走したロボットを見ると上記のいずれかに近いものか、カホ無線のキットで使用されているセンサであったように見受けられます

 本来の課題研究の主旨からすると、部品についての入手や選択も、生徒自身によるものが理想と思われますが、これらは私自身苦労したことでもあり、授業進行にも問題になるため、資料と共に与えることにしました。

  

(2ー2)フォトセンサーの自作や改造に関する注意点について

 

 フォトセンサについては、前述のように反射型フォトインタラプタを使用することにしましたが、フォトトランジスタとフォトダイオードを組合すことにより自作も可能です。このときの留意点としては次の点が考えられます。

 

 (1)使用する波長特性を送信受信とも統一すること

 

 赤外線発光ダイオードが放射する波長のエネルギーピークレベルと、フォトトランジスタの受光感度が最大となる波長と合致していなければならない点です。

 すなわち、発光ダイオードとフォトトランジスタの相性の問題があります。

 同じ、赤外線といえども波長の違いが問題となることに注意しなければなりません。

 

(2)可視光線フィルターや内蔵信号処理回路について

 

 光学フィルタが内蔵されているものでは、その特性や感度に注意して下さい。

 現在、可視光線のフィルタを内蔵されているモデルが多く有りますが、感度は若干低下します。そのため、フォトトランジスタの後段に小信号用トランジスタを1段ないし、2段のダーリントン接続したものが内蔵されているものもあります。

 また、照明器具の影響をさけるため、光変調回路と復調回路回路を内蔵したフォトIC(出力はTTLレベル等)もあり、これならセンサー回路を考えずにすみそうです。しかし、これも販売店にあるメーカーのプライスリストには掲載されておらず、入手は困難ではないかと思います。

 


(3)ビームパターンについて

 

 現在、高感度のフォトトランジスタや高性能赤外線発光ダイオードといわれるものは、光学的ビームパターン(指向性)をもつものがほとんどです。

 残念ながら、これらは規格表レベルでは紹介されておらずメーカーのデータブック

 を見なければわかりません。

 私自身、長焦点距離センサーの自作を検討するため、センサドライブ回路を各種設計しましたが、試作しても思うような特性がとれず苦労しました。

 この原因はセンサーのビームレンズがお互いに鋭いものであったため反射光をうまく受信できなかった為でした。

 機構的にも、ダイレクトに入る光を遮る必要もあり、これらを自作することは困難と考え、私はフォトインタラプタを使用しました。(一部外観を改造しましたが基本性能はそのままです)

 

(2ー3)反射型フォトインタラプタの応用上の注意点

 

 反射型フォトインタラプタは、上述の特性上の問題も一応はクリアしたものでありますが、自走式ロボットのセンサーとして利用する場合、下記の点に注意する必要があります

 

 (1)センサーには焦点距離があること

 

 各社のデーターブックをみれば、焦点距離という項目がありますが、この値はセンサーと反射物(この場合はライン)の距離で、感度が最大となる距離のことです。

 市販品では1ミリ程度のものを短焦点距離型、5ミリ程度のものを長焦点距離型として販売している様です。

 私の調査では20ミリというカタログ値のメーカーもありましたが、すでに製造を中止していたり、完全受注生産のもので入手はできませんでした。

 

 (2)焦点距離からずれると著しく出力が低下すること

 

 これは、部品により特性が異なりますが、1ミリでも焦点からずれると、相対出力が50%になるものが多いようです。

 この場合の相対出力とは、焦点距離すなわち、出力が最大となる距離での出力を100%とした値です。

 この相対出力が50%になる範囲を焦点深度といい、この範囲が小さいほど厳密な調整を必要とします。とくに、ロボットでは走行中に焦点距離が振動により変化したり、坂道等の問題がありますから焦点深度の広い(大きい)ものが効果的です。

 

 (3)センサーは、反射対象物との距離が変化しないという前提で作られていること

 

 メーカーデータを読みますと、物体検出空間をX,Y,Zとすると、フォトインタラプタは検出物体をX,Y平面上で移動させ(Z軸である反射対象物との距離、方向位置は固定)その有無を検出するセンサーであることを明記しています。

 したがって、自走式ロボットのようなZ軸の距離が変化するようなものについてのスペックは直接的に定義されておらず、前述の焦点深度で光電流の変化を見るしか方法はありません。

 しかし、光電流の規定は相対出力であることに注意しなければなりません。

 自走式では最低2つのセンサを必要としますが、この2つのセンサの特性が異なれば、動作に悪影響を与えます。しかも、このようなセンサは光電流の特性が1つ1つ違うのは当然といえば当然なのです。

 フォトインタラプタの出力である光電流のピーク値が違ったり、焦点距離についても1mm以上違えば、もはや可変抵抗での調整は不可能です。

 これには、私自身非常に困りましたが、結局ある程度の数量をまとめて購入し、焦点距離と感度について選別作業をし、ほぼ同じ特性のものを左右ペアとして使用することで解決しました。

 しかし、この選別というのは、技術者としては最悪の手段であり、量産ではコストや品質管理上の問題がありますので胸を張って言える内容ではありません。

 

 (4)同じ白でも反射率が違うことと、黒色でもわずかに反射することについて。

 

 この事は、感度を上げすぎるのは良くないということと、ロボットコンテストの 、最終条件で調整確認をしなければならない事を意味します。

 私自身の失敗として、当初模造紙の上に黒テープを貼り実験しておりました。これは、実習室にテープを貼るのは気がひけたのと、ビニールテープの白色と模造紙の色とでは、そう変わらないだろうと勝手に思い込んでいたことが原因でした。紙の上では動いていたものが、タイル上ではダメだということで当初は、タイヤの滑りが原因と考えたほどでした。

 反射が良い物としてはアルミホイル等があり、白色の紙と、白色ビニールテープでは明らかに反射率が異なりました。私自身、コンピュータのOMRでもカードの使用紙質をJISで規定しているほどであることは、知っていたのですが思い込みとは本当に恐ろしいものです。

 

 ちなみに、私の回路条件で調整すると、白テープは白と判断し、黒テープは黒と判断しますが、周囲のPタイル(肉眼では白に近い灰色に見える)は、白でないと判断します。これは、黒のビニールテープが予想以上に反射するためでした。

 

 ちなみに、白の紙と黒の紙では、70:10の相対光電流の差があるといわれています。測定条件は、最大出力となる焦点距離ですが、想像以上に黒も反射することがわかります。

 要はこの差を利用してうまく調整するのです。

 

 (5)周囲の電気照明と、橋やトンネル等のコースがセンサに与える影響について

 年度当初より、決勝戦には、橋とトンネルがあることは公示されておりましたが、これはセンサ面どのような影響があるかということを考えたいと思います。まず、橋ですが登り坂に段差があれば、その場所でセンサとテープの距離が大幅に変わり、影響があると思われますが、規約には段差がないと明記してありますので、特にセンサーについての影響は無いと思います。

 しかし、車体の構造やセンサの取り付け場所が悪いと、坂を登り始めたときセンサーと、ライン間の距離が変動し誤動作することが考えられます。

 センサーの取り付け位置は坂道に影響が無い場所で、さらにこれを考慮した調整確認をする必要があります。

 

 また、トンネルについては周囲との明暗の差がはっきりとする他に、センサ自身の発光のみでコントロールする必要があります。

 照明器具から出ている光は、可視光線の成分のみではありません。

 特に白熱電球では多くの赤外線成分を出しており、蛍光灯においても赤外線成分を出しております。

 そのため、センサーの赤外線が出ていなくとも、これら室内灯の影響でうまく働いているように見えることがあります。

 勿論、このような場合ではトンネルに入ると動作は正常ではなくなります。

 赤外線発光ダイオードは、ガリウムひ素(GaAs)のPN接合ですが、逆方向ブレークダウン電圧は非常に小さく、逆電圧の絶対最大定格は3〜6Vです。

 

 そのため、ものによっては、テスターで導通試験をしてつぶしてしまう事も考えられますし、試作での誤配線も破損につながります。

 勿論、赤外線発光ダイオードの動作は肉眼では確認できませんし、破損しても外観上で確認できません。(そのため、テスタを使用してつぶしたとなれば笑えません)

 そのため、専用の赤外線チェッカ(といっても同じ回路を向い合わせて使うだけですが)を作り、センサが正しく動作することを確認いたしました。

 


(2ー4)動作原理について

 

 本校では、回路をシンプルとするため、下記の制御手順を考えました。

 

 (1)センサーとラインの位置関係

 センサーを2個として、かつラインが交差しても問題なきようにセンサは、黒のラインの内側をセンスする方式としました。

 

 (2)電源スイッチ

 合図があるまではモーターの電源を入れないようスイッチを設けました。

 

 (3)センサーについてはモーターとは別の電池を利用しスイッチも別に設ける。

 

 DCモーターが動作したとき、大電流が流れるため、同じ電池を使用すると電圧降下により、センサ回路の動作が異常となる可能性があります。

 

 (4)センサーが左右とも黒と判断した場合の処置

 これは、ラインが曲っていないと判断し、直線的に前進させます。車は前進するよう、右モーター、左モーターとも、正方向に回転させます。

 

 (5)センサーが右を黒、左を白と判断したときの処置

 ラインは右の方向に曲っていると判断し、車を右に向けるため

 右のモータを逆回転させ、左のモーターを正回転させます。

 

 (6)センサーが右を白、左を黒と判断したときの処置

 ラインは左の方向に曲っていると判断し、車を左に向けるため

 右のモータを正回転させ、左のモーターを逆回転させます。

 

 (7)センサーが左右とも白と判断した場合の処置

 両方とも白ということは、ラインからはずれたか、ラインがなくなった場合であると判断します。もとの場所に戻るようバックさせます。

 車は後退するよう、右モーター、左モーターとも、逆方向に回転させます。

 

(2ー5)制御回路の実際

 前項で述べた、制御仕様を満足するためには、ポケコンによるDCモータの制御をするのも方法の一つである。

 今回は、制御方式で良いアイデアが無く、コンピュータ制御をわざわざする必要もないレベルの内容であったため(これが一番の敗因だが)ポケコンの重量を考え、軽量化のため4石の電子回路でこれを実現しました。

 

 センサでは、白のラインを感知しますと光電流を流します。これが制御基板にある可変抵抗VRに入り、光電流により、可変抵抗の両端に電圧が発生します。

 これが、初段増幅の2SC1815Yのベースに入ります。

 2SC1815Yはエミッタ接地方式で使用しておりますが、このVBEが、約0.7Vになるとスイッチングされ、2SC2120とダーリントン接続することにより、小型リレーを動作させている。したがって、2SC2120は、リレーのス イッチングドライブに使用できる電流値から求めたもので(コレクタ電流が多くとれるが、実売価格が25円と安い)2SC2001等でも使用できます。

 また、2SC1815Yは小信号用のポピュラーなもので、2SC372や2SC945等も使用できます。

 リレーについては、なるべく小さい電流で動作するDC5V定格のものを選びました。

 私の場合、オムロンのG5A237Pを選びました。

 

 動作に電流が多く必要があるリレーではもう1段の増幅が必要でしょう。

 この回路では正回転の電池(アルカリ単3を2個=3V)と、逆回転の電池(マンガン電池1個=1.5Vさらに電流制限用抵抗を直列接続して速度を減少)をリレーで切り替えております。つまり前進と後退ではスピードを変えて、これによりスムーズな動作をさせたり、アヒルのようなあぶない動作をさせたりしています。

 

(2ー6)DCモーターとギアボックスについて

 本校では、当初ステッピングモーターの使用も考えたが、制御の容易さ等から市販品のDCモーター(ギアボックス付き)を利用しました。

 結局は、上り坂より下り坂で問題が生じることになり、ギア比を上げて対策せざるを得なくなってしまいました。

 これは、スピードダウンの要因となり、機械系メカニズムに関する知識不足に加え自走式の制御方式に対する技術的探求の欠如が最後まで尾を引いてしまったものだと反省しております。

 結局、問題点の重要性に気がついたときには授業は進行しており、後へは引き返せない状況が生じており、いかに年度当初のツメが大事かを思い知らされました。

 


(3)最後に

 情報技術は、さまざまな文化の集大成であり、どこまでも発展する可能性があります。 私は、その情報技術のなかで、ハ−ドウエアというものを課題研究のテーマにした為ロボットコンテストというイベントにも参加でき、目標を持たせた個別指導を実践することができました。

 

 参加により、多くの学校がいろいろなアイデアを出しているのがわかりました。

 

 大会のビデオを今みると、なるほどあの学校はこのような方式なのかと研究することもできますが、実際に担当した先生がたのお話しが今後貴重になるのではないかと考えております。

 

 電子部会の技術記事としては、難があるのではないかとも思いますが、全国初の定時制情報技術科による課題研究紹介記事としてお読みいただければ幸いです。

 

 また、情報の大切さを感じられましたので、コンピュータネットの活用も必要と思い、最近は兵庫教育ネット(ERN60036),NIFTY(JBC03074)、RBBS(JF3MXU)を積極的に利用しております。

 

 兵庫教育ネット資料室「工業高校の課題研究のコーナー」には、私の実践内容について、技術的以外の視点により記述したものをアップロード(教育研修所より依頼されたものですが)しております。

 

 本稿についての、お気付きの点等ございましたらぜひ電子メール等をいただけたらと思います。

 


[参考文献]

 

*シャープ半導体データーブック 光半導体1

 誠文堂新光社

 

*小型搬送車 NRC−91K組立説明書  株式会社ナガイ

 

*最新光半導体素子規格表 

 藤村則夫・他  CQ出版株式会社

 

*トラ技ORIGINAL 1991 No.7

 第2章 無人搬送車の製作

 鈴木憲次  CQ出版株式会社 

 


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