ねぎのお話

 ねぎ ネギ類

1.ネギの古里とその名の由来

1)中国の古書に登場する「葱」は「キ」の一字

 ネギは、世界的にみますと、主に北半球に分布し、約300種も品種があります。特に中央アジアの高山に野生のネギが多く存在します。この高山の一つ、パミ−ル高原を中国語で葱嶺と呼ぶほどです。この高原で釈迦が修行を行ったと伝えられていますので、仏教の事を葱嶺教とも言います。

 ネギの原産地は、かつてはシベリアと言われていましたが、現在では否定され、中国の西部、中央アジア北部からアルタイ、バイカル地方であろうと、推測されています。有史以前から、中国に伝わり、華北・東北地方を中心に、軟白した白根を主として利用する太ネギ群が分布し、華中・華南・南洋地方には、葉を主として食べる葉ネギ群が発達しました。また、華北・華中を中心に、万能型の兼用種が古くから栽培されていました。

 中国では、紀元前からネギに関する記録が見られます。古書、山海経(中国古代の神話と地理の書)や礼記(五経の一、古礼に関する説を集めた書)に、ネギは「葱」の字で登場し、礼記にはネギの料理法が書かれています。また、爾雅(古代中国の字書)などにはネギ属の基本名として「葱」を当て、また、「胡葱」など渡来種と区別し、「漢葱」の語があります。斉民要術(中国の最古の農書)には、ネギを軟白するための土寄せについて、記載されています。

 ヨ−ロッパに渡ったのは、かなり遅く、16世紀の文献に初めて登場しています。アメリカにはさらに遅く伝わり、19世紀と言われています。ただし、現在に至っても、あまり普及していません。

 

2)日本伝播

 日本への渡来は、朝鮮半島を経て8世紀以前と言われています。もっともネギは、古代には神事や祭事の時に、神に捧げる野菜として使われていましたので、もっと早く入っていたのかも知れません。ネギの名が記録に初めて登場するのは、8世紀に編纂された歴史書「日本書紀」で、仁賢天皇の六年(493年)の記述で、「秋葱」(あきぎ)という言葉が出ています。また、平安時代の日本最古の本草学(薬物になる動植物、鉱物に関する学問)書であります「本草和名(深江輔仁:918年)」や「延喜式(藤原忠平:927年)」にも、ネギの説明と栽培法が記されています。

 戦国末期の伊予の国の農書・清良記(土居清良:1546〜1629年)にもネギは見られますし、江戸時代の農書・農業全書(宮崎安貞:1697年)には、詳細に栽培法が述べられています。また、和名を「キ」と言い、「キ」は文字が一文字であるので、後世「ひともじ」と言う様になったとあります。また、貝原益軒の「大和本草(1709年)」には、ネギによって死人を蘇らせる話が紹介されています。かつてネギは、

薬用に用いられたのみならず、呪術的色彩をも持っていたのです。それ故に、神事や祭事に使われていたのです。

 

3)葱と言う文字の意味するところ

葱根と書いて何を意味するか、ご存じですか

 ネギ類の植物(ネギ属)を、英語ではアリューム属と称します。このアリュームの語源は、臭う(olere)とか、強く臭うもの(halium)とか、ネギ属特有の臭いに由来します。東洋でも、ネギは古名をキ(紀、奇、気など)と言い、特に、臭いが強いものと言う意味で、かっては「気」と呼んでいました。「気(き)」一文字の名称にちなんで、今でも、ネギを「ひともじ」とも称します。なお「ひともじ」は、平安時代の宮中の女房(女官)言葉に由来し、同様な意味で、ニラのことを「ふたもじ」と言います。「キ(葱)」の根の部分を食用とすることから、「根葱(ねぎ)」と呼び、「根深(ねぶか)」とも言いました。なお、英語ではWelsh Onion或はSpring Onionと言います。

 また、漢字の「葱」の一字は「ねぎ」以外に、「ソウ」とも読まれます。元々、葱の字は、ユリ科の多年生草本で、野菜の一種でありますネギを示しますが、「蒼(ソウ)」の文字と同じく、浅い青色を意味したりもします。それで、ネギの白と書いた葱白(ソウハク)が葱の白根でなく、最も淡い藍色を指し、ネギの根は葱根と書きます。なお、後漢末の有名な漢詩「孔雀東南飛」に「指は葱根を削るが如し、口は朱丹を含むが如し」と詠われた様に、葱根とは女性の白い指の譬えでもあります。こうなると葱の文字も色気が出てきますね。 

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2.ネギの生態と特徴

1)日本人に愛されるネギ、西洋人の好むリーキ

 ネギ、あるいはネギ類と呼ばれる一群の野菜は、単子葉植物綱・ユリ目・ユリ科・ネギ属(Allium)に属する植物達です。なお、ユリ科の植物にはネギ属を始めに、ユリ属、スズラン属、エンレイソウ属、その他240属、約4,000種の植物が含まれます。なお、ネギ属に属する植物は、ヨーロッパ、アジア、北アフリカ、北アメリカなど北半球の温帯を中心に、約450種存在します。その内、わが国に18種存在します。

 ネギはもとは宿根性作物ですが、一〜二年草として栽培されています。暖地における一般的な栽培では、葉は秋から春によく生育し、晩春から初夏にかけて、葉の間から中空の花軸を伸ばし、頂に白緑色の鐘形の小花を球状に集めたネギ坊主(花)を着けます。地下部の葉鞘(一般的に言う根)は白く、土寄せなど栽培法によっては、50センチにもなります。北海道など寒地では、一年草として、春に苗を定植し、晩春から夏、秋に収穫します。葉は中空の管状で、高さ30〜60cmになり、先はとがり、地中の葉鞘(ヨウシヨウ:葉が重なりあって茎に見える部分)は葉が幾重にも重なっています。

 先に述べました様に、中国西部からシルクロード沿線にかけての地域が原産地と言われていますが、未だ野生種が発見されていないため、確かなことは分かりません。元々は温帯の野菜ですが、寒さ、暑さに強く、アジアでは寒帯から熱帯まで広く栽培されています。また、簡単に採種できることから、古くから日本各地で栽培している内に、それぞれの地方に合った多くの品種が作り出されました。

 今やネギ属は、世界各地で、野菜、花、薬草として栽培されています。その内、野菜として栽培しているものは、ネギ、タマネギ、ニンニク、ラツキョウ、ニラ、アサッキ、ワケギ、リーキやヤグラネギなどがあります。西洋では、主として、タマネギ、ニンニク、リーキ(西洋ネギ)が栽培され、食卓を飾っています。一方、ネギ、ラッキョウ、ニラ、アサッキは東洋独特の作物で、西洋人には馴染みの薄い野菜と言えます。

 リーキは西洋ネギとも呼ばれますが、実はネギとは別種の植物です。葉は管状ではなく扁平で、明治時代に日本に導入されましたが、日本にはよく似た下仁田ネギがあることから、一般には普及しませんでした。もっとも、リーキと言う名は知らなくても、最近、ポロネギとか、ポワロと言う名前でフランス料理店のメニューに見かけるようになりました。今のところは輸入品が多く、オーストラリア、ベルギーから主に入荷しています。ヨーロッパでは何故か、「貧乏人のアスパラガス」と呼ばれて広く使われている野菜です。日本でも、新しい西洋野菜として再認識されつつあります。ところで、ポワロと言えば、名探偵を思い出す方もいますね。そうです。ベルギー生まれの彼の名探偵の姓は「西洋ネギ」だったのです。

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2)日本のネギの仲間(品種)とその特性

@ 昔は関東の根深ネギ、関西の葉ネギと言ったが、今は・・・

 現在、日本人が食べているネギは大きく分けますと、@長くて太い葉鞘部を、土寄せ、軟白し、その軟白部を利用する根深ネギ(太ネギ、白ネギとも言い、関東ネギ、東京ネギとも言いますと、A土寄せ、軟白をせず、よく株分かれ(分げつ)した緑葉を利用する葉ネギ(細ネギ、青ネギ)に分かれます。昔は、関東以北では主に根深ネギが、関西では葉ネギが愛用され、各々の地域で広く栽培されていました。しかし、最近では、逆に関西で根深ネギが好まれ、関東で葉ネギが売れている様に、従来のワクにとらわれない使われ方が広がっています。

 根深ネギと葉ネギは、形態的・生態的特性にかなり差があります。根深ネギの主体は東北・信越・北陸・山陰地方に分布する加賀群と、関東を中心に分布する千住群です。そして葉ネギの代表は九条群です。

 ところで、根深ネギが関東に多く、葉ネギが関西に多いのには、それなりの理由があります。根深ネギが元々、中国は北の華北・東北地域で生まれた太葱の流れをひき、寒さに強く、一方、葉ネギは中国南部の華南等に由来し、暑さに強い、と言う特性に因ります。また、土質の違いも関係しています。白い部分(軟白部)を長く育てるためには、土寄せを多くしなければなりません。すると、土層が深く砂質で、地下水位も高い所の方が作り易いです。関東地方がこの条件に当てはまり、これに対して耕土が粘質で土寄せし難い関西地方の場合には、軟白化しない葉ネギを作る方が楽なのです。



A 殿様ネギて、知っていますか

   消え行くナツメロ品種、昔のネギ

 加賀群は寒さに強い耐寒性のネギで、冬は低温に遭遇すると休眠し、地上部は枯れますが、地下(葉鞘基部)部は長期の積雪に耐え、越冬します。春になると葉鞘芯部から新葉が伸び、根深ネギ用として栽培されています。一般に冬期寒冷な地域で作られ、代表は、松本一本葱や加賀、札幌太などです。一本太と言う品種名が示す様に株分かれ(分げつ)が少なく、葉鞘が太いのが特徴です。なお、同じ加賀群のネギでも、会津太、青森地葱など岩槻葱グループは、葉身はやや細く柔らかなので、葉ネギにも適しています。

 上州一本ネギの名を持つ、下仁田ネギもこのグループに属します。下仁田ネギは軟白(葉鞘)部が最も太く(直径4センチ以上)、生で食べると辛みが強く、薬味向きではありませんが、熱を加えると独得の甘みとコクが出て、煮物や鍋物には最高です。まさに、すき焼きにビッタリのネギです。そのためか、暮から新年にかけての需要が多く、通常、泥つきの大束で売られています。この下仁田ネギは、なぜか他の土地で栽培しも同じ様な風味が出ないと言うから不思議です。江戸時代には将軍家に献上していたことから「殿様ネギ」の別名もあります。

 一方、千住群は軟白(葉鞘)部がやや硬いと言われますが、長大で、土寄せを十分に行い、軟白して利用します。休眠性、越冬性は中程度で、分げつ性も少〜中です。葉色により黒柄(クロガラ)、合柄(アイガラ)、赤柄(アカガラ)、合黒(アイグロ)と呼ばれるグループに分けられます。

 この千住群の一種である金長(キンチョウ)と言う品種は、病気に強く、作り易い上に、見た目も好いと言うので、最近では、主産地の千葉、埼玉を始め関東一円で作られる様になりました。お陰で、微妙な香りや風味を持った、昔の曲がりネギや錫杖(シャクジョウ)ネギなどが廃れ、残念がるオールドファンもいます。この他、吉川晩生、西田、石倉、深谷、伯州なども千住群の根深ネギの仲間です。これら千住群のネギは、先に述べた様に分げつが少なく、軟白部が太くて長いのが特徴です。品質は良質で、根深ネギ用に主として利用されていますが、葉ネギにも利用できます。

 

B 博多生まれでない人気者・博多万能ネギ

 一方、関西で好んで食べられる葉ネギは九条群のネギが利用されています。九条群は葉が細く、分げつは中〜多で、通常軟白せず、青い葉を利用します。太、細の二型があり、九条太は時には軟白することもあります。万能ねぎ(福岡)、奴ねぎ(高知)、シルバーステム(静岡)等は九条細の地域銘柄名です。ネギの青い所を捨ててしまう関東で、青みの美しい薬味用に使いだしてから人気が上がり、福岡県の朝倉町の葉ネギが「博多万能ねぎ」として九州から東京に空輪されています。この鮮度を保つための航空機利用から、「博多万能ねぎ」はフライト野菜とかジェットネギとも呼ばれています。

 「博多万能ねぎ」は、昭和50年代に、アサツキ(浅葱)をヒントに生まれた葉ネギの一種です。昭和55年以降は飛躍的な伸びをみせ、これに刺激を受け、他の葉ネギが色々と登場しました。

 九条ネギの様な葉ネギは冬にも休眠しないで生長し続けます。分げつが多く、葉肉が薄く、葉の質が軟らかくて、品質的には優れています。なお、九条ネギは太さによって、芽ネギ、葉ネギ、深ネギと使い分けます。また、薬味やサラダ用に使う若ネギ、小ネギ栽培にも、九条群、岩槻群のネギが使われています。

 ところで、芽ネギと言うのは、葉ネギの種を床土に蒔いて、10cm程度に生長したものです。すなわち、葉ネギが十分に生長しない段階で収穫したものが芽ねぎで、その形から針ネギとも呼ばれ、傷つき易いものを、きれいに根を切り揃えて、箱入に入れ出荷します。ごく細くて華奢な芽ネギは、芽物として日本料理のあしらいに使われますが、一般家庭では使うことは少なく、殆どが高級料亭で消費されています。

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3)ネギの代表的品種とその特性

@ 根深ネギ

 埼玉県の深谷産のものが有名で、関東では、ネギと言えばこの品種を指します。

現代青年よろしく、ネギの中では最も背が高く、葉鞘に土を寄せて軟白栽培します。軟白部があくまでも白く、青葉の部分が真っ青なものが良品で、両方の境がボケているのは、土寄せが悪く日焼けしていて、固いものが多いです。ネギの旬は秋から翌春までですが、特に、冬のネギは全体に甘みが強く美味しいです。根深ネギの代表選手です。

 

A 下仁田ねぎ

 その名の通り、群馬県・下仁田町の特産品です。根深ネギと違って、葉部も太くて柔らかなため、すき焼きなどの鍋物に非常に適した品種です。甘みが強く、栄養価もタンパク質が他ネギの三倍もあります。ガッチリと太く短い白根はもちろん、柔らかな葉部も美味しく食べられます。白さと張りをポイントに選びます。白い部分が黄褐色になっていたり、縮んでいるものは古い証拠です。ブカブカして、巻のゆるいものは、中に砂や土が入っていることが多いので注意が必要です。

 

B 万能ねぎ

 葉ねぎの中でも、最近人気の高いのがこの万能ねぎです。福岡県産のものが各地に空輸されています。アサツキに比べるとやや香りが薄く、ちょっと柔らかめです。

全身真っ青がベストで、葉先が少しでも茶色なものは、収穫から二、三日たっています。

 葉ネギは、その他にも、わかさま葱、武蔵ねぎ、青ネギ、やっこねぎ、吉四六ねぎ、あさづき(浅月)などの呼び名で店先に並べられています。

 

C わかさまネギ

 需要の着実な拡大が見込まれる小ネギの専門品種で、高温時でも葉色が濃く、耐暑性に優れ、ブル−ム(粉吹き)が出にくい品種です。

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3.ネギの生産と流通

1) 生産の推移

 日本で栽培の歴史が最も古い野菜の一つですが、統計が取られ始めた1909年(明治42年)のネギ(根深・葉ネギの合計)の作付面積は9,000haで、収穫量は106,000t、一人当たり消費量は2.2kg程度でした。多くの野菜と同様、戦中・戦後の激減期を除けば、年々増加を続け、作付面積は1965年(29,500ha)に、収穫量は1968年(638,500t、1人当たり消費6.3kg)にピークに達し、その後、減少に転じました。しかし、ここ10年ばかりは作付面積は24,000ha、収穫量は550,000t前後で、ほぼ安定し、一人当たり消費量は4.6kg程度で推移しています。なお、平成4年には、作付面積が24,500ha、収穫量は56,500t程度でした。

 ところで、ネギが東洋のものであるのに対し、タマネギは西洋由来のものです。タマネギは日本での栽培の歴史も浅く、まだ百年程度に過ぎません。しかし、タマネギの伸びは著しく、1950年代前半に収穫量でネギを凌駕し、1989年には作物面積が28,000ha、収穫量が1,250,000tに達し、完全にネギを圧倒しています。キャベツ対白菜に見られた様に、野菜の世界では西風が東風を圧する傾向にあります。

 根深ネギの東京への出荷を周年的に見ますと、最大の出荷元は千葉で、次いで埼玉、茨城と続き、これに群馬を加えますと、東京の需要の80%程度を満たしています。時期別に見ますと、千葉・埼玉は晩秋・冬〜春季にかけての出荷が多く、初夏〜初秋は茨城の比重が高くなり、晩夏から秋にかけては北海道、青森、新潟ものが目につきます。

 葉ネギは福岡からの入荷が圧倒的に多く、一年を通して見ますと、全体の50%程度を占めています。博多万能ねぎの威力ですね。この他、大分、高知からが多く、この三県で全体の80%程度を占めます。

 

2)ネギの育つまで

@ 根深ネギの作り方

 ネギは冷涼な気候を好む作物で、生育適温は12〜22度です。その種子は黒色扁平で、種子の寿命は低温・乾燥下でないと2年で発芽力が殆ど無くなります。発芽適温は15〜20度で、発芽が始まりますと、子葉の先が種皮を被ったまま地上に出てきます。子葉の曲がりがのびるようになると、子葉の下部が裂け、本葉第一葉が出てきます。

 根深ネギの栽培は、根もとに土を高く寄せて、葉の下部の葉鞘部を長く白く軟白する育て方です。種播時期は栽培地や栽培方法によって異なりますが、代表的なものは、春に種を苗床に蒔き、その苗を初夏に畑に植え付けて、11〜3月に収穫する栽培です。また最近では 春に深さ15〜20cmの溝を掘り、その底に種を直接蒔く省力栽培も出てきました。なお、北海道では、冬の間にハウス内に種を蒔き、その苗を早春〜初夏にかけて畑に定植し、夏〜秋にかけて収穫します。

 20cm程に育った苗を6月頃定植しますと、1〜2ヶ月はユックリ生長し、定植後3〜4ヶ月になると、グングンと伸びます。月一回、育ちに応じて肥料をやります。また、生育につれて、植え溝を埋め、更に盛り上げるように、根もとに3〜4回に分けて土寄せをします。

 ねぎの根本に土寄せすると、葉の下部の葉鞘部に光が当たらなくなり、そこが 白く長く伸びて、根深ネギのひきしまった白根が出来ます。それは外側の葉が枯れて、中の新しい葉が伸びて、入れ代わるからです。最後の土寄せは、収穫時期の前の軟白に必要な時間を考慮して行います。初秋で15日程度、秋で30日前後、冬では40日以上も必要です。こうすると軟白された真っ白な白根が30cm以上も土の中に伸びています。

 

A ネギの軟白とお嬢様作物のネギ

 ネギの白根を多くするため、土寄せと言って、ネギの下部を土で覆い、日に当たらない様にします。そのため、溝を掘って、その中にネギを植え、生育と共に、土を寄せて行く作業を行います。中国では「北魏」の時代の斉民要術にも、このやり方が示されています。

 管理の行き届いた農家では、この土寄せの四五日前に、肥料をやり、軽く土とかき混ぜておきます。そして、肥料の馴染んだ土を根際に寄せるのです。すると、それが新たな栄養分の供給となって、ネギは順調に太って行きます。

 実は、ネギは肥切れと言って、途中で栄養分が途絶える事を嫌います。典型的なお嬢様作物なのです。常に、お腹一杯御馳走を食べさせてもらわないと、柔らかいネギに育たないのです。肥切れを起こすと肉質が不均質で、一部が硬くなります。 そのな訳で、ネギは栄養分の豊富な、肥沃度の高い土を好みます。丁度、お嬢さん育ちの娘さんには、金持ちの青年がお似合いのの様に、ネギには川筋の肥沃な沖積土が似合います。

北海道では、軟白を行う時、土を使わない方法が広がっています。籾ガラを利用する方法です。さらに近年は、籾ガラの替わりに、白黒のビニールフィルムと黒フィルムを使って、軟白化に成功しています。この方法だと、葉と葉の間に土が入り込むこともなく、見栄えがよく、いかにも清潔そうに見えます。

 問題は、この方法だと軟白部分が曲がり易いことです。ネギも人間と同じ様に、過保護で日陰のもやしにすると、グレるようです。特に、土や籾ガラの様に物理的抵抗感があると曲がらないのですが、ビニールフィルムで光を遮るだけですと、白根は気ままに曲がり易くなります。

 

B 葉ネギの作り方

 葉ネギの栽培には、春蒔き夏どり、夏蒔き冬どり栽培などがあります。夏蒔き栽培を例に話を進めますと、8月中旬に苗床に種を蒔きますと、1週間ほどで細い子葉が、先に黒い種皮を被って、折れ曲がって出て来ます。1〜2日もすると、5cm程の葉はまっすぐに立ち上がります。そして9月の初めになると、苗の葉は2本になり、長さも20cm前後に伸びます。9月中旬を過ぎると、葉は長く太く、白っぽい緑も濃くなり、9月下旬頃から苗は抜き取られ、数本ずつまとめて畑に植えつけます。この苗ぐらいの若いネギを収穫し、若ネギ、芽ネギとして出荷することもあります。

 夏から育てられたネギは、11月中旬以降、冬にかけて収穫されます。ネギの葉は先の尖った中空の筒形で、2列に互生しています。春になると、葉の間から花茎を伸ばし、膜質の総苞に包まれた花球(ネギ坊主)を付けます。総苞が破れると、花球の頂から順次に小花が開きます。開花後1ヶ月程すると、一つ一つの小花はそれぞれ熟し、割れて、中から黒い扁平な種子が出てきます。

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4.ネギの旬と選ぶポイント 

 夏場の葉ネギ(根黄)に冬場の根深ネギ(根白)と言われる様に、暑さに強い葉ネギは夏のもの、軟白部に養分をタップリ蓄積した根深ネギは冬の野菜。実際、「ネギと言えば鍋物」の連想が働く様に、歳時記にも冬の季語に入れられ、煮ても焼いても、薬味にしても、やっぱり冬が美味しいですね。

 根深ネギは、太ネギ、長ネギ、関東ネギなどとも言わますが、その旬は、一般的には10月から3月の内、特に冬です。冬場の根深ネギの美味しさは、肉質が厚く緻密で、水分が多く甘みがあり、歯切れのよさがあります。初霜の降りるころから早春まで、東京では口の中で甘くとろける千住系や下仁田ネギを味わえますが、春も盛りに入ると、トウが立ち始め、ネギ坊主も伸びてき、表皮も硬くなります。品種と作付けのヤリクリで、現在では一年中、市場には出ていますが、季節はずれのネギはやはり味も香りも落ちますね。

 軟白ネギを選ぶ時は、緑葉と軟白部の境目がハッキリ分かれ、緑色はあくまで濃く艶があり、軟白部は鮮やかに白い物が良いネギです。そして、長くてよく締まっているもの、輪切りにした時に、中身が出てくるぐらい肉の詰まったものが、歯切れもよく、多肉多汁で甘みがあり、良いネギです。また、しおれていないもの、白色部に弾力があるものが、新鮮で味も良いでしょう。古くなりますと繊維が硬くなり、かみ切れなくなります。

 

 ところで、北海道のネギは、初夏の6月から秋にかけてが,旬と言えるかも知れません。府県では、春先から夏にかけて、ネギはボンボリを着け、いわゆるトウ立ちになります。すると、葉や茎が急に堅くなり、ネギがネキに変身するのです。ところが、冷涼であまり温度の上がらない北海道では、夏場も肉質の柔らかいネギが作れます。そのため今では、全国的にも北海道は夏ネギの名産地になっています。

質のいいネギは全体にぴんと張りがあり、締まって硬いですが、指で押すと弾力があります。反対に、古いものや時期はずれのものは、外側が硬くても中がブカブカしています。

 一方、関西系の葉ネギは、冬にも出回りますが、根深ネギの味が落ち、青菜類の少ない早春には、なによりの野菜です。葉ネギはもちろん、葉のすみずみまで力のいきわたった、しおれや折れのないものを選ぶます。新鮮なものは瑞々しい青緑色で、香りも強いです。葉先まで鮮やかな緑色で、ピンと張っているものがよいものです。最近は関東でも葉ネギを食べる人が増えました。太さはいろいろなものがありますので、好みのものを選んでください。

 これらのネギ、葉ネギも根深ネギも、ラツプで全体を包装したり、新聞紙などに包んで、5度前後の冷蔵庫か、冷暗所に立てて置くと一週間ぐらいは持ちます。また冬場の泥つき根深ネギは、日陰の土中に斜め埋めておくと、春まで新鮮なものを楽しめます。

 葉ネギを薬味などに切りすぎた時は、残ったネギは冷凍しておくと、適宜利用できます。但し、切ってすぐに凍結すると、団子になって少量ずつ利用しにくいので、軽く切り口を乾燥さえてから凍結すると便利です。

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5.ネギの栄養価と機能性

1)葉ネギに軍配、栄養価競争

 ネギには、カロチン(ビタミンA効果)、ビタミンC、カリウムを多く含まれていますが、カロチンは緑色部分にのみ含まれています。食用部分で考えますと、栄養的には根深ねぎより葉ねぎの方が優れていると言えます。ホワイトアスパラガスよりグリーンアスパラガス、白いカリフラワーより緑のブロッコリーが、栄養的に優っているのと同じです。しかし、調理面から見ますと、各々に使い道があり、異なる機能性を持ちます。

 そんな意味では、関東の根深ネギ(軟白部分)は、栄養的はあまり高くありませんが、硬いため捨てられてしまう葉の緑色部分には、相当量のカロチン、ビタミンCを含みます。葉を出来るだけ捨てずに、みそ汁などに利用したいものです。また、ネギは寒ければ寒いほど甘みが増すとも言われ、土の下で冬眠しながら白い部分にタップリ糖分を貯えます。特に、厳寒期に耐えた下仁田ネギは、味が良いだけでなく、タンパク質や後で述べます薬効成分も、他のネギの三倍近くも含んでいます。

一方、葉ネギの方が根深ネギよりミネラル、カロチン、ビタミンCやB群が多く含まれています。

 ネギが昔から身体に良いとされてきたのは、ネギ類特有の機能性成分によります。その内の一つ、アリシンは、ニンニクやタマネギにも含まれ、それらと同様に、ビタミンB1と結びついて、より効果のあるアリチアミンを作ります。これは腸管からの吸収が特に良く、かつ安定です。ですから疲労回復や冷え性などにも効果があります。

 また、ネギの機能性成分としては硫化アリルがあります。ネギ類を刻んだ時、目に染みる成分で、生で食べると、神経を刺激して消化液の分泌が盛んになり、食欲がでます。ネギを生で薬味に使うのは、この食欲増進効果を狙ってです。このネギを刻むと酵素の働きで発生します特有の香り・硫化アリルは、鎮静効果があります。よく眠れない時に、枕元にネギやタマネギを刻んで置いておくと良いのは、硫化アリルが神経を鎮めるのに役立つからです。また、ネギには身体を温める効果があり、その結果、内蔵の動きは活発になり、血行がよくなり、体内の余分な水分や老廃物を排除するので血液の浄化にも役立つます。昔から風邪に効くと言われたのは、このためです。

 

2)漢方薬としてのネギの効能 

 漢方医学の立場からも、ネギの効能はよく知られており、既に述べました様に、江戸時代の貝原益軒が書いた「大和本草」には、漢方書からの引用として、急死した人の鼻や耳にネギを差し込むと、死人が鼻血を出して蘇ると言う、極端な話が記載されています。それだけ効能が昔から信じられていたのですが、もう一つ、ネギ類の持つ魔除け、厄除けの民間信仰とも密接に結び付いていたのでしょう。

 民間治療でも、ネギはよく使われています。昔の子供達は風邪をひくと、焼きネギで湿布し、刻みネギとウメ干しを入れた熱いお湯を飲まされました。これは先に述べました様に、ネギの持つ機能性成分に起因します。ネギは身体を温め、発汗を早め、痛みや痰を取り去り、その上、胃腸を整え、グツスリ眠らせて、身体に力をつけると言う総合作用を発揮します。また、硫化アリルには、体内で硫酸を作り、解毒作用に役立つとも言われています。さらに、便秘、整腸、利尿、神経痛などにも薬効を示します。

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6.ネギの調理と料理

1)利用法

 日本を代表する冬野菜・ネギ。日本古来の野菜の需要が減少している中で、ネギは順調に生産が伸びています。日々の生活の中に、例えば、冬の鍋料理「すきやき」「水たき」「どぜう鍋」に入れられるネギ、細く切りそろえた白髪ネギと一緒に食べる「北京ダック」、「赤ちょうちん」の焼き鳥のネギ、飲んだ後の「ざるそば」に添えられるネギ等々、ネギは本当に味の引き立て役、最高の薬味として、料理のつまとして愛されています。

 夏バテで食欲のない時、冷たいめん類に薬味のネギを添えれば、知らない内にのどを通ってしまう。冬の熱々のうどんや鍋物の味も、案外ネギの風味に誘われているのかもしれない。まさに、ネギは食欲増進剤、文字どおりの薬味です。

 白髪ネギは、深ネギの軟白部を三センチくらいに輪切りにし、包丁で縦に一本筋を入れて、まな板の上に外側を表にして広げ、ごく細に縦にせん切りにして、冷水に放ち、これをサッとしぼって吸い物に浮かべたり、和え物の天盛りに使います。

また、「北京ダッグ」に添えます。また、薬味用のみじん切りは、縦に細かく包丁目を入れ、ささら状になったものを端から細かく刻んで行きます。

 

 和風料理では、和え物、汁の実、炒め物、煮込みなどによく使い、中華でも色々活用しています。特に、魚や肉の臭味を消してくれる重宝な野菜として、ネギは肉類との相性がよく、焼き鳥や串焼き、バーベキューに、鴨鍋やすき焼きを始め各種鍋物等に、広く利用されています。なお、鍋物、特にスキヤキには下仁田ネギかせ最高ですが、普通のネギのつもりで煮ると溶けてしまい、本来の味がなくなってしまいます。煮すぎに後用心下さい。

 ネギマ(葱鮪)もネギの味をタップリ味わう古くから伝わる日本の味ですが、「葱鮪」の文字の通り、葱とマグロをぶつ切りにして、醤油味で煮込んだ冬の料理です。また、アジやイワシの生魚とネギを包丁でたたいて混ぜるいわゆる「たたき」は、ネギの消臭作用を利用し、魚の生臭さを消す使い方ですし、ギョウザやシュウマイを作る時に、肉にネギを混ぜるのも、肉の臭みを取るためです。

 中華料理では炒ため物を作る時に、まずネギを最初に炒め、油の臭いを消すと同時に、ネギの芳香を油に移す方法をよく使います。ショウガやニンニクも同様な使い方をしますが、なかではネギが一番クセがないので多く使われます。

 中華スープや、魚を使った潮汁(ウシオシル)を作る時も、ネギを肉や魚のにおい消しに使います。また、西洋風のスープにもネギを使います。あまり甘みを出したくない場合に、タマネギの代わりにネギをやわらかく煮込むのです。これは本来は西洋ネギ、リーキの役目です。リーキは外見は下仁田ネギによく似ていますが、日本ネギの様に葉が筒状でなく押しつぶした形をしています。

 このリーキの白い部分を長時間煮込んで、フランス人はサラダとして食べます。リーキの白い部分を縦に二つ割りにし、数本ずつ束ねて大鍋で、タマネギ、タイム、ローリエ、粒コショウ、塩を加えて一時間以上茹でます。柔らかくなったらザルに広げて冷まし、器に盛りつけて、ソースやドレッシングかけ、トマトの角切り、パセリのみじん切りを散らします。まさにアスパラガスに匹敵する味。

 葉ネギは、根深ネギよりビタミンA、B1、B2、Cが多く含まれています。利用

は、薬味や汁の実、料理の色づけなどに使います。また、茹でてヌタにも使います。ところで、関東では和え物にはネギの代わりにワケネギ(ワケギの名で売られています)を使います。一方、芽ネギは、発芽まもない針の様な細いネギで、独特の香りと辛味があり、椀ダネとして使われます。

 

2)ネギのサラダ ネギとネキの違い

 薬味以外に利用するネギ料理と言ったら、焼鳥で肉の臭い消しを兼ねて串刺にされるか、ネギ筏と相場が決まっています。しかし、石倉か深谷ネギの軟白物をサット茹でて、辛みの強い大根をおろして、ポン酢と共に、このネギにかけると、和風サラダの出来上りです。マヨネーズやドレッシングで食べる洋風サラダも良いですが、こんな食べ方も、時には如何でしょうか。お年寄りは勿論、若い方にも意外とウケると思いますが。また、グラタンやマリネにネギを利用しても美味しいですよ。ネギをソバ、うどんの薬味から解放し、料理素材として見直したいものですね。

さて、ネギとネキ、濁点の有る無しで、味は雲泥の差が生じます。ネギが抽台(花が咲く用意)し、ボンボリを着けるようになりますと、急に葉が堅くなります。ネギでなく、ネキ(根木)になるのです。また、寒さに強いネギは越冬します。北海道でも伊達地方の様に雪が少なく、温暖な地方では十分越冬出来ます。ところで、春に再生してきたネギは、ネギ(葱)でなく、ネキ(根木)であると言う人もいます。言われてみれば、ボンボリの着いたネギ同様に、肉質が堅く、香りも乏しく、木の様なネギに出くわす事がありますね。

 ネギと言えば、ソバ、うどんの薬味と相場が決まっていますが、ラーメンにネギを薬味としてタップリ使っているのが、栗山の名物ラーメンです。有機栽培のこだわりネギを使ったネギラーメンは、なかなかのものと好評です。

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7.ネギ アラカルト

@ ひともじのぐるぐる

 熊本地方の郷土料理に「ひともじのぐるぐる」と呼ばれる料理があります。他県の人は、何の事か分からず、首をかしげます。実は、この料理は細いネギを茹でてグルグルと巻いたヌタのことです。皆さんは、既に、「ひともじ」が宮中の女房(女官)言葉でネギを指すことをご存じですが、一般の人には何やら判じ物の様ですネギの漢名は「葱」、これを和名で「き」と読んだことから、ネギを別名「一文字」と言うようになったのです。同じ中国から伝来したニラにも「二文字」と言う呼び名があります。

 

A アカネギ

 日本や中国に野生種が見られますので、恐らく、中国当たりが原産地でしょう。ワケギによく似ていますが、ワケギよりさらに細葉で辛味が強く、つま野菜として主に使われます。栄養価はタンパク質、カルシウム、カロチンなどを多く含み、ネギ類の中では栄養価の高いのです。ネギ特有の香りの素になる含硫化化合物を含み、ニンニクと同じアリシンをも含んでいます。アリシンには、ビタミンB1の吸収促進、安定化の作用があります。

アカネギの葉は、カロチン(ビタミンA)やビタミンCが豊富で、関西の葉ネギ(九条ネギ)に似て、鮮やかな緑色です。茎の部分も美味しいですが、葉もクセなく、ヌタなどにして食べると旨いです。丸くふくらんでいて張りのあるものが鮮度がいいものです。

 茎は葉の変化したもので、正しくは葉鞘と呼びます。古来、茎の色の濃淡で赤柄、黒柄系に分けられています。日に当たらない部分が赤くなるため、アカネギと呼びます。なお、赤い色素はアントシアニンによります。表面が乾いていないものが新鮮で味も良いです。アカネギは一本植えしたものが、通常7〜8本に分げつします。

 ネギは一般に冬が旬で、美味しいですが、特に、赤ネギは寒中が美味です。アカネギは独特の香りと辛味があり、煮ると甘味が増すのが特徴です。

 

B 魔除だったネギ

 祭りの御輿や橋の欄干の飾りには擬宝珠(ギボシ)がつけられていますが、あれは「ネギ坊主」をかたどったものです。ネギやニンニクを始め、ヨモギやショウブなど、独特の強い香りをもつ植物は、昔から魔除け、厄除けの効果があると信じられ、各地で、独特の使い方がされていました。スキヤキ用の高級ネギ、殿様ネギの威名を持つ下仁田ネギの本場、群馬県下仁田地方では、真っ白に洗い上げた根つきのネギは、夫婦共白髪を表すめでたい供え物として、正月に飾る習わしがあります。そのため、年末になると桐箱入りの白いネギも出回ります。

 ネギは、古代には神聖な野菜でした。寒さにも暑さにも強く、栽培が簡単なことから、日本中どこででも作られるようになり、すっかり庶民的な野菜として定着しました。薬味に鍋物にと、日本では台所の常備野菜となっています。この様に、古くから親しまれてきたネギは、冬の季語として俳句にも数多く詠まれています。

「ねぎ白く 洗ひたてたる さむさ哉」は芭蕉の句として有名ですが、冬の季語としては「ねぎ」だけでなく「ねぎ汁」、「ねぎ鮪(鍋)」などがあります。また、春の季語には「ねぎの花」、「ねぎの擬宝」、「ねぎ坊主」と多彩です。

 「さむざむと 葱束ねつつ 古き顔  飯田龍太」

 「ねぎま汁 風邪のまなこの うちかすみ  下村槐太」

「葱坊主 子を育てては 嫁にやり    成瀬桜桃子」

 「老夫婦 いたはり合いて 根深汁     高浜虚子」

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