マリアージュ

塩はひとつまみ。
コショウ少々。
ボウルに卵を2個割って・・・・・これくらいの塩加減が丁度良い。
鍋にお湯を沸かしている間に、卵をよくかき混ぜる。生クリームを50cc入れるのを忘れないように。
お湯が沸いたら、ボウルを湯煎にかける。でも、かき混ぜる手は、止めてはいけない。
だんだん卵が固まってくる。
「うーん、いい感じ。」
とろとろになってきたら、お湯からはずし器に盛る。
陶器のワイングラスに、6割くらい。
最後にキャビアをのせて、イタリアンパセリを飾る。
この料理に合わせるのは、シャンパーニュ。
モエ・エ・シャンドンかヴーヴクリコ、否、ローラン・ペリエにしよう。

2皿めも、やはり、塩はひとつまみ。
タイムを少々。
小海老によくなじませる。
じゃがいもの皮をむき、糸のように細く細く切る。
切ったじゃがいもは、決して洗ってはいけない。
細く切れたら、ラップの上に均一に敷いておく。
小海老に、小麦粉と溶き卵をつけて、いもの上に並べていく。
巻き寿司の要領で、丸めたら、フリーザーで凍らせる。
フライパンにグレープシードオイルを引いて、こんがりと色づくまで、焼き上げる。
「このじゃがいものかりかり感がたまらない。」
ソースは、オレンジソース。
エシャロットを軽く炒めて、オレンジの果汁を煮詰め、塩で味を整えて皿のまわりに流す。
付け合せの、マッシュポテトをバーナーであぶる。
仕上げに、セルフィーユを飾って完成。
彼女の好きな小海老の料理。
ワインは、グラーブの白、カルボーニュにしよう。
このワインの柑橘系の香りが、ソースとよく合うはずだ。

そして、メインは、牛フィレ。
形を整えた牛フィレに包丁を入れて、ひらくように薄くのばしていく。
マッシュポテトに、マスタードと生クリーム、塩、コショウを加え、なめらかにする。
これを、のばした牛肉に薄く敷き、ロール状に巻いて糸で縛る。
オリーブオイルをひいたフライパンで焼き色をつけ、220度のオーブンで15分。
形を整えたときに出たくず肉もフライパンで焼いて香味野菜と一緒に煮込み、ジュ・ド・ブフをつくる。
この肉と野菜のエキスがソースの味を決める。
彼女の笑顔のために、鍋の中でうんとうまくなってくれ。
肉が焼きあがったら、切り分けて、温野菜と一緒に皿に盛る。
エシャロットをローズマリー、セージと一緒に炒め、ジュ・ド・ブフとハチミツ少々、赤ワインを加え、塩で味を整える。これを濾してから、少し煮詰め、バターでとろみをつける。
肉と皿の周りにソースをかけて、クレソンを飾る。
「よし、完璧。」 ワインは、ボルドーの赤、シャトー・パルメを合わせよう。

デザートは、クレーム・ブリュレ。
卵黄2個に生クリームと牛乳がそれぞれ100cc、砂糖小さじ6杯にブランデー少々とバニラエッセンス。これを良く混ぜ合わせ、耐熱容器に注ぐ。湯煎をしたまま、140度のオーブンで50分。冷蔵庫で冷やしたら、食べる直前に砂糖を薄く敷いて、バーナーで焼き色をつける。
焦げた砂糖とコーヒーが良くマッチする。

お、そろそろ、彼女が来る頃だ。今のうちに着替えておこう。
指輪を渡すのに、エプロン姿ではさまにならない。

ピンポーン。

あらら、約束の時間には、まだ、早いけど。
「少し早かったかしら。」彼女のとびきりの笑顔。
「いや、大丈夫。待ってたよ。」エプロン姿では、さまにならないけど。
「あら、いい香り。今日は、何をご馳走してくれるのかしら。」
「食事の前に、まずは、シャンパンで乾杯だよ。」
「今日またひとつ歳をとったと思うと、乾杯の気分でもないんだけど。」
「ま、そういわずに。あがって。」最高の笑顔だ。

卵とキャビアとローラン・ペリエ。
小海老のオレンジソースとカルボーニュ。
牛フィレの赤ワインソースとシャトー・パルメ。
クレーム・ブリュレとコーヒー。
ひとつ歳をとった彼女とエプロン姿の僕。

そして、 ダイヤの指輪とマリアージュ。

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