「故郷」
【音風祐介より、念のため ――創作の常識を書くのは 大変恐縮なのですが、下記の作品は
全くの空想によって書かれたもので、作者個人とは無関係です。私は私小説というのは全く書きません。空想にまかせて書くのが好きなので。ついでに申しますと、これは数年前に書き、知人にご批評をうけたまわったものを最近になってほんの少し手直しした作品です 】
私の故郷は人生の謎が解き明かせる町だった。それにもかかわらず、私は故郷を離れ、長いこと銀行という所をあてどなく、さ迷った。外見から見れば、名のある銀行の町の支店長になって満足といいたいところだが、私の心は砂漠の様でオアシスを求めて、様々の哲学や宗教や文学の本を読み漁っていた。それは単なる趣味などをはるかに越えて、私自身の生き方を問うものであり、私は自分の故郷の町を捨てたことを後悔していた。
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周囲にはゆるやかな山が緑をたたえて聳える信州の小さな駅の改札口そして若菜は不思議な詩を朗読しました。
「わたしは永遠の生命のままで長いこと無意識に活動してきたが、ある時、目覚め森羅万象の美しさを見た。山も海も川も森もそこに生きる生き物の生活を見て満足した。私は不生不滅の身ではあるけれど、時々死の世界に戻るが、やはりこの生の世界が懐かしくなり又舞い戻ってくる。こうして死の世界と生の世界を往復して永遠に近い時がたった。生の世界についていつも気になることは人間が色々な災いや悩みに悩まされて、自分達の生活の土台になっている物質と一枚になっている永遠の生命のことをしばしば忘れて、物質と肉の欲望に執着して苦しんでいるのをみてなんとかせねばと思うのである。しかし、わたしがやきもきしても、人間がわたしの方を振り向いてくれないとわたしの永遠性と崇高な美を見失ってしまうのだ。わが永遠の生命の世界は「空」であるから、空からは桜の花よりもさらに華麗な美しさに富んだ花がちらちらと降ってきて、どこからともなく、モーツアルトやバッハに匹敵する不可思議な心を揺さぶる美しい音楽が鳴り響いてくる。わが永遠の生命の大地はかくも永遠で美しいのに、それと一枚になった物質の世界は地震や雷や津波や台風といった災害ばかりでなく、火事や戦争といった人災にもおびやかされいている。
ああ、人よ。永遠の生命を思い出してくれ。そこが人の故郷なのだということを忘れないで欲しい」
石田―――哲村電気のエリートとして採用されたということですな。だいたいここの高卒の指導をする研修所のコーチというのは
団塊の世代の窓際族のたまり場なんですよ。よく、あなたの様なエリート採用の方がきましたな。不思議です。karonv@hi-ho.ne.jp
【後書き―読み直して文章が粗削りなのに驚いた。このまま、ホームページに出すのは 読者に失礼かなとも思ったが、残念ながら 推敲する時間がない。色々な時間に追われ、最近はホームページに書く文章が少なくなっている。そんなあせりの中で掲載することにした。くどい文章や荒い文章はそんな訳でお許し願いたい】