希望の季節 音風祐介 作

若草の萌える土をふみしめて

息ずく呼吸の音もやわらかく

喜びの鐘の音も青空にひびく

祭りの喜びをうたいながら、私は春の町に友情のメールを届けよう

並木道に美しい風が吹きわたる時に

緑の梢がさわさわとゆれている

おお その存在の喜び

生命の喜びが音楽にも似て宇宙にどよめいている

それはあちらからもこちらからも聞こえてくる永遠の歌声

世界は今 砲弾の音が聞こえる二十世紀を終えた

商品は山の様に店頭に並び、ダイオキシンは恐怖。

月並みな科学への信仰が拝金主義とプラスされ

地球号は 嵐に見舞われた難破船の様に傾いている

その時 行き交う黒雲の中に希望の星の様に青空が突如現れた

君は不可思議な瞳を僕に向けた

遠い緑の山でさらさらとさらさらと流れる小川の音と共に

綺麗なショーウインドーのある店やビルの並ぶ人ごみの前であったか

それは 場所や時間に限定されない宇宙のありとあらゆる神秘な所で

僕が出会った君の瞳

君の瞳は 大空にやさしくほほえむ魔法の瞳だ

君は 存在の塔に愛に満ちた宝石や銀の星を飾る

君の瞳の流す涙は雨になり、稲光は深海をも照らし生命の誕生を告げる。

僕は感じるのだ。森羅万象は真理そのものの現われなのだと。

君の瞳から流れる葡萄酒を飲みほすように、喉に天国の味をしめらして

僕は踊ろう、さあ、歓喜の中で己を忘れて踊ろう

君の瞳はありとあらゆる美醜を包み込み、善悪を慈悲に変え

ポンペイの様な廃虚とパリの様な栄える町を同居させている不思議な芸術的な瞳だ

この世界は調和と矛盾に満ちており

君の瞳は愛に満ちている、死も新しい生命への入り口。希望の春だ。

ああ 夏の町に僕の歌声を届けよう

海水の美しい夏空の下で逞しい筋肉と肌を見せる男女の群れ

砂浜に耳をよせて聞けば

不思議な海の底のひびき、永遠の祈りにも似たそのささやき

時として 雷雲おこり 大砲のような雷と稲光

宇宙の新しい生まれかわりの日のように

その時の天使の合唱のように

聞こえてくる 夜のしじま

あたたかい南風にゆられて僕は 自分の歌声をこの夏の町に送り届けよう

酷熱の太陽に照らされた清潔な町よ

僕は 町の輝くような逞しさを そこに働く人々の労働の汗を愛するのだ

そして夏の夜に飲むビールの歓喜

夏の星空がひろがる中で心の中に陶酔感が岩にしみいく清流のようにひたる時

僕は生きる喜びを歌にして この町の人々に伝えよう

酷暑に挑戦する向日葵の逞しさを人は汗とビールで知っている

ああ 秋の町に僕の手紙を届けよう

秋晴れと雨の日の交替という楽器にも似たうつろいやすい空の人生

そして又 悩みある青春にうちこむスポーツと読書

それらすべてを この青空は知っている

澄んだ青空にも 曇る空にも 僕は存在の芸術を感じる

震える魂のペンを手にして白い便箋にむかうのだ

僕は やわらかい 陽射しに満ちた秋の町に

冬の到来を予感させる寂しさがあるにしても

こんなにも 穏やかな日を恵んだ天をたたえる詩を書き手紙としたのだ

僕のメールがこの町に届けられる時

町は 学校の運動会や文化祭も終わり

街路樹の紅葉がしだいに落ち葉となっていく

ああ 冬の町に僕の孤独の詩を届けよう

雪降る日 窓から街角をながめる僕は永遠の存在の重み故に 喜びと深い憂いを知っている

あたたかい部屋の中で 冬の寒さが外の世界を荒らしまわっていることを感じる時

僕は 宇宙の究極の寒さを感じてしまうが、その奥に存在の歓喜が波打つのを聞く

ああ あの星は 冬の寂寥とした荒野にかこまれている

ああ あの星は 冬の氷と雪に包まれた白一色の中でいのちをはぐくんでいる

やがて来る愛の炎にいのちが再び点火され、季節が到来するのを夢見ている

夢である人生に見る幻の様な老いた星よ

僕は 宇宙の広大さに目を向ける時

冬の町のショーウィンドウがクリスマスと正月にはさまれて

にぎやかな飾り、はなやかな歌声に満ちているけれども

月夜の晩に感じる あのぞうっとする孤独

その中で予感される死への旅路をどの星もさし示しているに違いないけれども

僕は冬の町に予感される死をはらいのけて

永遠の生命の歌を 存在の喜びの歌をたえず詩にしていこうと思う

おお 春と夏そして秋と冬の町よ、僕は 季節の町の姿に見入り

そこから聞こえてくる生活の歌を聞こう

あそこの床屋で あそこのレストランで あそこの店でにぎやかな人間の声が

宇宙から飛来した昆虫のように

月やわらかな晩に歌う南国の小鳥のように

存在の神秘性を語りつづけている

時計の音は音がして消え、再び音がする

音はあたかも実在するようで、それでいて無があるようだ

昆虫も小鳥も歌いはするが、その歌は実在しているのだろうか

音だけ、感じていればそれは無。無が音。揺りかごに眠る赤子の様な無が全てだ

歌も同じ、無はゆらぎ生きているが故に様々に変身する

脳は変化を比較し、音楽の実在を蜃気楼の様に浮かび上がらせる、まさに空華。