「ミミック」を鑑賞して

概略

ニューヨークで子供達の命を奪うストリックラー病が広まる。助かっても、不自由な身体になるという恐ろしい病気。たいていは死ぬ。治療法が確立されていない時に、昆虫学の スーザン・タイラー博士はストリックラー病の媒体になっているゴキブリを一掃するために、遺伝子組み替えによって、アリとカマキリの遺伝子を合成し、ゴキブリの天敵となる新種の昆虫をつくる。こうした遺伝子組み替えに反対する学者もいたが、彼女の努力が実り、見事に成功して恐ろしい伝染病は一掃される。このゴキブリの天敵となる新種の昆虫を「ユダの血統」という。

ユダのメスは繁殖能力がなく、生存可能日数は 120日から180日のはずだつた。

ところがそれから三年後、このユダの血統が独自の進化をとげ、生き延びていたのだ。

この三年前に街に放されたユダは死滅しないで、繁殖していることをスーザン博士は知って、それを夫に話す。

その少し前あたりから、奇妙で恐ろしい事件が起きてくる。雨の中、死んだ人が廃虚のビルにひきずりこまれる様子を窓から見ていた靴みがきの子供がその犯人を「変な靴を履いたおじさん」と表現する。このおじさんこそ、ユダが人間に擬態するという形に進化した未知の生命体なのだ。

そして、スーザンの夫ピーター 警察官一人と一緒に 閉鎖され、廃虚のようになっている薄気味の悪い地下鉄の深い

トンネル構内へ、その未知の生命体の巣のありかをめがけてつき進んでいく。しかし、未知の生命体は人間を敵として、人間に牙を向ける恐ろしい存在になっていた。

 このあとはスリルとサスペンスに富んだ世にも恐ろしい話になるのです。

 

2コメント

遺伝子組み替え食品の議論が激しくなってきた。欧州には反対派が勢力を持ち、アメリカは賛成派が既にシェアを拡大し、日本に輸出している。日本の厚生省は安全性に問題なしとして、輸入を許可した。

私もこの点について不勉強で、十年近く前にバイオテクノロジーの本を数冊読んだ時は何か砂漠に緑が増加し、人類の食糧危機を救うという楽観的な論調のものが多かったように記憶している。そういうわけで、バイオテクノロジーには なんとなく二十一世紀の夢ある科学という印象があった。

ところが、ここ数年 マスコミでこの遺伝子組み替え問題やクローンの問題が取り上げられてくると、そんなに単純な話ではないことを知り、あわててそういう方面の本も数冊 読んでみた。

科学は常に諸刃の剣であるとは常に思っていたが、あれほどバイオテクノロジーに関してはなんとなくロマンを感じていたのが一挙に崩されていくのを感じ、驚き不勉強を恥じた。

そんな時、この映画「ミミック」を見た。これは勿論 SFタッチのスリル満点の面白い映画であるが、単に娯楽作品として見るには現在の遺伝子組み替えのプラス・マイナスの両面を押さえているという点で、ホットな話なのだ。

主人公の女性 スーザン博士もニューヨークを襲った恐ろしい伝染病を撲滅し、多くの子供達を救うために、菌の媒体になるごきぶりの天敵を遺伝子組み替えでつくり、短期的には成功し、多くの人々に感謝されているという物語になっている。

物語のように、遺伝子組み替えというのは短期的には人類に朗報をもたらすことが多いことも事実のようだ。しかし、長期的に見ると怪しくなる。そうした食品が人体に害がないということを証明するには時間がかかるからだ。時間がかかり、その時になってひどい害がありましたでは遅いのだ。

映画の場合もそうだ。疫病がおさまってから、三年後に恐ろしい事件が次々と起こる。遺伝子組み替えが学者ですら予想できないような、人類を害する恐ろしい未知の生命体を生み出す可能性があることをこの映画は知らせようとしているのだろう。

  { 音風祐介 }