LES PORTES DE LA NUIT

STAFF 監督 マルセル・カルネ

脚本 ジャック・プレヴェール

 

CAST ピェール・ブラッスール

イブ・モンタン

ナタリ・ナティェ

セルジュ・レジアニ

 

枯葉 【夜の門】を鑑賞して

この映画は パリの町の1945 2月に始まる。この時のパリは 歴史的にも特異な時間帯の中にあった。ドイツ軍のパリ占領がパリ市民の手でその半年以上前の八月の市街戦で解放され、まだベルリンは陥落せずドイツは降伏していない時期なのである。

パリ解放はこの映画では 出てこないが、大変感動的なもので、私はその時のドキュメンタリーや映画「パリは燃えているか」などを見たことがある。

この映画「夜の門」では最初に、ドイツ軍に対するレジスタンスに参加した闘士のディエゴが綺麗なトレンチコートを着て、貧相で混雑した電車の中に立っている。すると、ディエゴと視線が何度もあう、全体に汚い印象を与える帽子をかぶった男が声をかける。この男は映画の最後まで「運命」と名乗る謎の男である。

ディエゴは その男と同じ駅を降りる。沢山の人達が通りに出て行く階段の所では当時のフランスの人々の人情が美しく描写されている。国産のライトを売る行商の男の大きな声と、その階段の下で彼の娘がパンを売っている。その娘に近づく純朴な青年。そして二人の初恋が点火されるのに合せたかのように、大道芸人が「愛し合う子供たち 夜の門で堅く抱き合う」と歌う。素晴らしい歌で胸とどろき、人生の秘密が愛の中にあることを感じさせる。

デイエゴはやがて、その町の一角にあるアパートを訪ねる。階段を降りていく子供達の群れと、出会った後、デイエゴは 友人レイモンの妻を訪ねる。

ディエゴは 言いにくそうに、レイモンが昨年の六月の末に、ロマンビルで死んだ旨を告げ、報告が遅くなったことをわびる。その時、レイモンの妻は 気が変になったのかと思わせる様な激しい笑いの発作におそわれる。それもその筈、その直後に死んだ筈のレイモンがその部屋に現われて、デイェゴを驚かせ、喜ばせる。レイモンの妻は 今度は今の仕合わせに涙あふれる。そして、二人の友人の会話の中で、レイモン達を密告した裏切りの男がいたことを確認する。デイエゴは その裏切りの男の笑い声だけを覚えていた。

レイモンの住んでいるアパートの家主はドイツ人協力者と言われ、家主の息子の表の顔は英雄だが、実は仲間を裏切った男で、デイェゴはその笑い声で裏切り者と見抜き、詰問する。しかし、それより少し前に、イブ・モンタンが扮しているディエゴは この裏切り者の姉マルーを愛してしまう。

枯れ葉の歌が出て来る場面は ディエゴが深く愛することになるマルーという女との不思議な深夜の出会いからダンスをするまでの繊細で詩的な会話で埋まっている。さすが、フランスの名画ですね。愛する男と女の微妙で美しい会話を楽しみたい人はどうぞご覧になってください。

マルーはやがて事故{ ? }で死にます。この愛する者が引き裂かれる悲しみのラスト・シーンは見る者の心の琴線を激しくかきたてます。映画の最初の初恋の初々しさを讃歌する場面と、中途に出て来る枯れ葉の場面と、このラスト・シーンはそれぞれに男と女の愛の謎こそ、人生の神秘と見る者に感じさせる効果を持っているかと思われます。

音風祐介