DVD映画鑑賞

「禁じられた遊び」を見て

監督・脚本 ルネ・クレマン

音楽 ナルシソ・イェペス

この映画を見るのはこれで二度目である。あの美しいギタ−の音楽を聞くのも久しぶりだった。ドイツ空軍に橋の近くで襲われて逃げまどう民衆の中で一人の少女が両親を失うという衝撃的な場面から映画は始まる。その後は一転して静かなフランスの田園地帯が画面に広がる。光と影が美しい。少女はミシェルという少年の住む農家の世話になる。十字架の現わす神の象徴の意味も、死と墓場の意味も知らなかった幼女は田舎の貧しい農家で起きる家庭劇の中でミシェルと親しくなる。そして二人は十字架を使って墓作りをするという禁じられた遊びに熱中するようになる。

十字架というのは西欧人にとって、特別な意味を持つ。神の子 キリストがそこで処刑されたからだ。だから、神の子 キリストを信じる者にとって、尊い存在となる。その尊い十字架をあちこちから盗んできて、墓作りの遊びをする無邪気な子供達二人。少年の方は悪いことをやっているという意識が強いが、幼い少女はそういう意識すら希薄だ。

その頃、馬との事故でミシェルの兄貴が死に、父がつくる霊柩車の十字架を盗もうとする。

「十字架が三つある」とミシェルは少女 ポ−レットに言う。

「犬ともぐらよ。二つでいいわ」

この映画は 画面全体に光と影が巧みに配置されて、人の顔や家具や田園を美しくくっきりと浮かび上がらせる。影と光の様に、死があるから生は貴重で尊いものとなり、この二人の子供達は無意識にこの神秘な「生の意味」を禁じられた遊びに熱中することによって味わおうとしていたのではないだろうか。まだ、そんなことを考えたり、感じたりするのにはあまりに幼い子供達にそのように仕向けた戦争とは何とむごいものだろう。

音風祐介