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サイダーハウス・ルール |
《Story》 メイン州ニュー・イングランド。人里はなれたセント・クラウズにある孤児院で、ホーマー・ウェルズは産声を上げた。ウィルバー・ラーチ院長、そして二人の看護婦アンジェラとエドナに面倒を見てもらい、ここから新しい家族のもとへ巣立っていくはずだった。ところが、何度引き取られても彼は親たちの希望に添うことができず、いつもセント・クラウズに戻されてしまうのだった。ホーマーは特別な子だ。そう考え直したラーチは彼を孤児院に留め、「人の役に立つ存在になれ」と教えを説き、父親のように愛情を注いで育てた。 孤児院でのホーマーの暮らしは、満ち足りていた。家族のような愛情を注がれ、大好きな映画『キング・コング』をみんなで見るのが大の楽しみだった。毎晩寝る前には、院長が皆に本を読んで聞かせ、おやすみの挨拶代わりの言葉が子守り歌となった。 「おやすみ、メイン州の王子、そしてニュー・イングランドの王」 《Review》 いい映画です。複雑で捉えどころのない人生をさわやかな感動で包み込んでいる。優しさに溢れた映画になっています。「ガープの世界」「ホテル・ニューハンプシャー」などで知られる原作者であるジョン・アービング自らの脚色が実にイイです。台詞が素直で生き生きしている。半世紀以上前のニュー・イングランドの小さな町の風景がまた素晴らしい。そこで生きる人間の淡々としたリズム、息づかいが伝わってくるようです。 この映画にはいくつかのテーマがあります。「人工中絶」「家族」「ルール(規則)」。映画はその答えをあえて出してはいません。答えの出ない複雑な社会を主人公であるホーマーは生きている。しかし彼は人間としてあくまで素直に淡々と前向きに生きている。 孤児院のラーチ院長を演じた名優マイケル・ケインは、子どもたちに対し父親のように接し、その反面、眠れない日々の中エーテルに浸っていく弱い部分も持ち合わせながら、ホーマーを心から支えている役どころをさりげなくも存在感たっぷりに演じています。作品共々地味ではあるが秀逸な演技をしています。オススメの一本です。 |