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リプリー |
《Story》 すべては、一着のジャケットから始まった。 富豪の放蕩息子ディッキーを連れ戻す役目を負って、イタリアに渡ったトム・リプリー。彼の前に現れたディッキーは、自分の思うままに生き、太陽のように人をひきつけてやまない男だった。その存在のすべてに、強烈な憧れを抱くトム。しかし、胸にたぎる思いを拒絶されたとき、彼は最も哀しい殺人者へと変貌を遂げる……。 ニューヨークのうらぶれたアパートに住む貧しい青年トムと、ヨーロッパで気ままな豪遊生活を送るディッキー。本来なら交わるはずのないふたりの人生が、南イタリアのまぶしい太陽のもとで交錯したとき、危険をはらんだドラマの幕はあがる。マージという恋人はいるものの、刺激のない毎日に退屈していたディッキーにとって、下層階級のトムは物珍しいオモチャそのものだった。トムを連れ、セーリングやジャズ・クラブで遊びまわる日々。そんななかで新しい世界の扉を開かれたトムは、自由奔放なディッキーの発散するオーラにひきつけられ、贅沢なライフスタイルに魅せられていく。自分もディッキーのようになれたら……。 《Review》 名作「太陽がいっぱい」のリメイク。だが「イングリッシュ・ペインシェント」のアンソニー・ミンゲラのアプローチは独創的で、全体に単調でシンプルな演出ではあるが、心理描写は的確で、映像にも統一感があり上映時間の長さは感じさせません。「太陽がいっぱい」の雰囲気とは全く違った映画に仕上がっています。ひとりの青年がたどる悲劇をゆったりと見せながら観客を引き込んでゆく。そのあたりはさすがです。 俳優陣もなかなかの芸達者たちが顔を合わせ、人間関係を見せる映画としては充分な演技をしています。ダサイ青年トムが徐々に変わって行く姿を外見ではなく内面から表現するマット・デイモン。いかにも金持ちの坊っちゃん、しかしそれに固執せず人生を楽しもうとあがく青年ディッキーを演じるジュード・ロウ。トムが憧れていく女性マージのアカデミー賞女優グウィネス・パルトロウ。さらにケイト・ブランシェットなど、皆個性を持って忠実に役を表現しています。 地味でやや物足りなさもあるものの、うまくまとまった映画です。 |