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アメリカン・ビューティー |
《Story》 舞台は郊外の新興住宅地。主人公のレスター・バーナムは、中年サラリーマン。住宅ローンを抱える身に、リストラの風が冷たく刺さる。妻のキャロリンは、取り柄のない夫にうんざりしながら、自分の理想とするオシャレ生活を躍起になって守っている。ハイスクールに通う娘ジェーンは、カッコ悪い父親を嫌って、ろくに口もきかない。アメリカならずとも、世界中、どこにでもある家族模様だ。だが、レスターが、突然、美少女に遭遇したことから、事態は急変する。吹っキレたのか、キレたのか?! ムラムラと燃え上がった中年男の恋心が、すべてを、危険な方向へと変えていく……。 《Review》 今年のアカデミー作品賞、監督賞、主演男優賞などを受賞したこの作品。超マジメ映画「グリーンマイル」を抑えての受賞ということで密かな期待を持って映画館へ・・・。観る前はアメリカのホームコメディかと思ったが、これが思ったよりマジメでシビヤなテーマを持った深〜い映画でした。舞台は現在のアメリカ。どこにでもありそうな中流家庭、主人公は冴えない中年サラリーマン、レスター・バーナム。まずはこのレスター・バーナムを演じるケビン・スペイシーに注目!家族から疎外され夫としても父親としてもまともにあつかわれずプライドのカケラも持てない行き場のないやるせなさをシリアスではなく、むしろコミカルに演じている。そこがまた切ない!チカラの抜けた彼の演技は絶品です。アカデミー賞でラッセル・クロウを押していた私も“納得”です。で、それ以外のキャストはというと、堅実だが特に目立った俳優は居らず、バランス重視といったところ。そのためか、映画としてもケビン・スペイシー中心にまとまりのあるものになった。監督であるサム・メンデスの演出力もスゴイ!何気ない会話を実に面白く表現している。さすがシェークスピアを手中にしたイングランドの一流舞台演出家はひと味もふた味も違う!ハリウッドの監督たちもシェークスピアやったほうがいいかも? とりわけ「グリーンマイル」が暗闇の中の“光”なら「アメリカン・ビューティー」は光の中の“暗闇”と言ったところか。アメリカがいくら好景気に沸いても、家族と言うミニマムな世界には必ずしも“バブル”は訪れない。むしろ、人々はいつもと変わらず一生懸命生きるだけだ。「何かが違っている。」と思いながらも人はおもしろおかしく生きている。 この映画は、アメリカの“今”と言う時代に生きる“人間”をマジメにとらえている。今度はアメリカ人の監督がこのテーマに挑戦する番だ。 |