《Story》
幕末の京都。討幕へ、維新へと傾斜していく世の流れに逆らうかのように、幕府の非常警察として抗争と殺戮に明け暮れる男たち−新選組。その血気盛んな男たちの集団にある日、ひとりの美少年、加納惣三郎が入隊する。「局中法度」「軍中法度」という厳しい戒律の下、鉄の結束を誇っていた新選組が、その少年の妖しいまでの美貌ゆえに嫉妬と噂、憶測の渦に巻き込まれ、狂気を帯びた混乱に陥っていく……。
《Review》
この映画の生命線は、松田龍平演じる加納惣三郎の妖艶さである。大島監督のキャスティングの意図は分かるが、松田龍平にはやはり荷が重かったように思える。内面からにじみ出る色気がない。容姿はそれなりに作られており、人間性も丁寧に描こうとしているが、それだけでは甘い。なにかが足りない。すべての登場人物が惣三郎に振りまわされるのであるから、そこには相当な役作りが必要になる。あえて難題に挑戦した大島監督の意欲は買うが、残念ながら不完全燃焼に終わってしまったように思える。
役者はビートたけしは相変わらずいい味を出している。ただ、その他の役者の使い方がもったいない。伊武雅刀などもっと面白く使えたろうし、あえて近藤勇に崔洋一を起用した意味もいま一つ感じられない。
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