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救命士 |
《Story》 麻薬と暴力に支配された、1990年代前半のニューヨーク―フランク・ピアースはニューヨーク市の救急救命士だ。 救命士の仕事は、患者が病院に運ばれるまでの間に、症状の悪化を防ぐため一定範囲内の医療行為を施し、救急医療の最前線で人々を死の淵から救うこと。 フランクは腕のいい救命士だったが、あまりにも多くの悲劇を目撃してきた彼の精神は次第にすりへり、今や燃え尽きる寸前にまで追い込まれていた・・・・・。 《Review》 巨匠マーティン・スコセッシ監督と脚本家ポール・シュレーダー。全世界に空前のセンセーションを巻き起こした問題作「タクシー・ドライバー」のコンビが1990年代を舞台に新たに世紀末の「タクシー・ドライバー」を描いた・・・・。と、これがこの映画の“ウリ文句”ってことになる。だが、そう上手くはいかない。 ニューヨーク。ドラッグ。狂気。人物設定に至るまでどれをとっても「タクシー・ドライバー」的匂いがプンプンする映画だ。ただ、あの時とは何かが違う。時代が持つ「空気」が違う。だからどんなに頑張っても「タクシー・ドライバー」にはなり得ない。 スコセッシは金持ちになり過ぎたのだろうか?それとも、観客を無視してでも自分が作りたい映画を作って行こうとしたのか?「タクシー・ドライバー」の匂いをなぜ今スクリーンに映しだそうとしたのか?今ひとつ伝わってこない。 1990年代前半という中途半端な時代を選んだのはうなずける。近い過去ではあるが、「今」ではない。 今のアメリカは経済的にも景気がいいが、90年代前半はそうでもなかった。むしろ混迷を極めていた。そんな時代に「タクシー・ドライバー」的世界は合っていたのだろう。だが、「今」と言う時代を生きている我々には、それは逆にリアリティに欠けてしまったように思える。 |