入れ歯の痛みについて

 

 いくら時間をかけて慎重につくったぴったりの入れ歯でも、食事をすると痛い場合があります。この痛みは主として、ものを食べる時に入れ歯が動くことが原因なのです。とくに総義歯の場合、入れ歯は粘膜だけで負担しますので咬む力によりかなり沈下しますし、顎の複雑な運動により前後左右にも揺すられます。

 部分床義歯の場合はもっと複雑で、粘膜の沈下量は維持装置とつながっている天然歯の沈下量に比べてはるかに大きいですから、粘膜だけで咬む力を負担する部分と天然歯が負担する部分に動く量の差が出てしまい、義歯はシーソー運動を伴った複雑な動きをします。このような義歯の有害な動きを極力抑えようという目的でつくられたのが、コーヌス義歯などの保険外義歯なのです。

 新しい入れ歯を入れたときには、最初は何ヶ所か当たって痛いところがあるかもしれません。通常、このような義歯の痛みは咬み合わせが悪いためであることが多く、咬み合わせを調整すれば治るものです。1ヶ所だけ強く咬んでいるとか、顎を横にずらした時に異常な咬み方をするなどの場合、義歯に異常な力が働き一部の粘膜に強く当たって痛くなります。粘膜への当たりをがまんしたまま、さらにこれに義歯の過剰な動揺が加わると粘膜に傷をつくることになり、この傷がひどくなると褥創性潰瘍になり治りが悪くなりますので、いつまでも我慢しないで早めに調整することが必要です。

 なかには適切な調整をしても、なかなか痛みが取れない場合があります。入れ歯は2〜mm粘膜を介して顎の骨に支持されますので、粘膜が薄いところ(下顎の奥歯など)や骨が盛り上がったり(骨隆起など)突起状に飛び出している所では、粘膜が硬い義歯床と骨の間にはさまって痛くなりやすいのです。このような場所では、義歯製作の時にあらかじめ義歯床に一層スペースをつくってゆとりをもたせたり、あとで削除して当たらなくしたりします。

 入れ歯を支える顎の骨は、過剰な力が加わったり粘膜に炎症がある状態のまま長期間放置すると、しだいに骨が吸収されて痩せてきます。また粘膜に炎症があるまま合わない義歯を使っていると、骨吸収のほかに粘膜が繊維性に増殖、肥厚してぶよぶよになり、フラビーガムといわれる状態になります。これは総義歯の前歯部に生じやすいものですが、フラビーガムのまま新しい義歯をつくってもぶよぶよの粘膜に支えられる入れ歯もぐらぐらの状態になりますので、まずフラビーガムをきちんと治してからでないとうまくいきません。

 

 

 
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