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2006年4月4日(火)
病院をコンビニと考える人達

コンビニが普及する中、最近はコンビニ感覚で病院に来る人が増えているのには閉口します。眼科にかかっているけど、行くのがめんどくさいから、先生のところで薬を出して欲しいとか、整形外科にかかっているけど、どうせ薬をとりに行くだけだから、一緒に薬を出して欲しいとよく言われることがあります。国とかマスコミで医者は薬漬けにするという批判が根強くある反面、あの薬、この薬と専門外の薬を欲しいと言われ、不本意に薬漬けにしてしまっている実態になっています。本来は医者が診断して、自分の能力(専門性)の範囲内で出す薬を選んで出すべきなのに、便利になった世の中で、病院の非効率的なシステムが理解できない人たちもいるのでしょう。でも、医療の安全性というもの重視するならば、少々の非効率性は目をつぶらざるをえないと思います。また、医療費が高いから90日分の胃潰瘍薬を出して欲しいという方もおられますが、胃潰瘍の薬をずっと飲んでいて、実は癌だったとか、その間薬の副作用が徐々に出たという場合は、90日間も診察もせずにいると医者は必ず責任が問われます。
本来は薬の種類投与日数などは医者が診察して決めるものですが、今日のコンビニの便利さに慣れてしまって、薬の種類、投与日数を自分で決めれると勘違いする原因があるんじゃないかと思います。

2006年7月20日(木)
教科書を読まない医学生達

以前、近くの医学専門書の本屋にいったときのことですが、本屋のおばさんから声をかけられ、「先生達はよく勉強したね。最近の学生さんはちっとも教科書を読まないよ。問題集しかしないよ。」と言われました。そんなもんかなあとそのときは思っていましたが、高校生の子どもの参考書を買いに本屋に行ったとき、その事を痛感しました。何件かの本屋を回ったのですが、どこの本屋でも参考書の数が激減していました。今時の高校生は参考書をこつこと読んで勉強する人は少なくなり、殆どが、受験のために学校や塾から与えられる問題集でしか勉強しなくなってしまったのでしょう。
受験勉強の効率化をねらうばかりに、回り道をせず、効率よく問題集で勉強し、大学に入学する。手っ取り早く大学の進学率を上げたい学校、予備校、塾の欲求と効率よく良い学校に入りたいという受験生やその親たちの欲求が合致しているため、こういう勉強方になっているのでしょう。
時代が変わって学生が本を買わなくなってしまい、売り上げが減った本屋。ぼやきたくもなる気持ちもよく分かります。

2007年1月3日(水)
フィットネス

昨年もあっという間に一年が過ぎてしまいました。収穫としてはジムに通い筋力がついたことだと思います。もともと持病の腰痛が悪化した事で、減量と筋力アップの必要性を痛感し、近くの「わらわら」で筋トレを始めたのが発端でした。iPodを聞きながら週3,4回通い、夏などは毎日通いました。寝酒は止め、炭水化物と脂肪を制限し、タンパク摂取を増やすため、プロテインを飲むことにしました。最初は、腹周りに醜く溜まった脂肪がとれるなどということは期待していなかったのですが、3,4ヶ月もすると、結構嘘のようにとれ引き締まってきました。これには腹筋運動と寝酒を止めたことが大きかったと思います。もともと腹筋運動は嫌いだし、普段の生活では殆ど腹筋は使わないので腹の周りに脂が溜まっていたのでしょう。また、寝酒のせいで内臓脂肪も増えていたんだと思います。年をとって敏捷性や持久力は若いときのようにはもどりませんが、筋力アップは、まだ、大丈夫と実感しているこの頃です。
今年はさらなる筋力アップを目指して頑張りたいと思います

2007年1月23日(火)
「あるある発掘大辞典」事件

あるある発掘大辞典の納豆ダイエットの放送がねつ造だったという事で、問題になっていますが、このような番組は他局にもいくつかあり、しかも、毎回毎回色んな食材や食品が健康にいいと紹介しています。しかしながら、信憑性については疑わしいものが多く、あるある発掘大辞典事件は氷山の一角にすぎないと思います。そもそもテレビの番組制作の現場では、企画の段階で、面白いかどうか、視聴率が上がるかどうかという事でふるいかけられ、それぞれの案がどれほど信憑性が高く、実験での再現性が高いかなどということを考えていないと思います。少なくとも、そのような判断ができるような専門家はいないし、いろんな事をいう研究者の話が正しいかどうかなんて判断できるスタッフはいないでしょう。企画の段階で面白そうな案を採用し、ストーリーに沿ってその画を貼っていく。しかし、実験とはそんな簡単にいくものではありません。私も以前、いろんな食品、食材が血清脂質、血糖、血圧、体重などに及ぼす影響を調べていました。コーヒー、紅茶、日本茶、牛乳、アルコール、大豆蛋白、清涼飲料水などについて調べましたが、数値が劇的に改善するという事はなかったし、ほんの少しでも改善するという結果が出ればいい方でした。研究の場合、実験がうまく行かなくても、失敗を糧に別の実験を次々に行えますが、テレビ制作の場合、経費と時間の制約があるため、企画で採用した案がうまくいかないと、放送することができなくなってしまいます。このような状況下で、実験を行うというのは、最初から無理があると思います。大学や製薬会社の研究者は、食材だけでなく、植物、野草、土の中の菌に至るまで、それこそ世界中から材料を集めて研究しており、そこには莫大な時間とお金と人手がかかっています。既にあるデーターの蓄積を利用して番組を作るというのなら理解できますが、テレビ局がちょこちょこっとやったくらいの実験で新しい事実が判明するなどということ期待して番組を作るというのは無謀としか言えないと思います。テレビ局は他局がやっているから、うちも健康物をやろうなどと安易な発想をするのではなく、真実を報道するとうい放送の原点に立ち返って、企画で出された案が確実に実証できるのかどうかもっと吟味し、、だめであれば途中で中止する勇気も必要だと思います。

2007年2月1日(木)
テレビのニュースは何故どこのチャンネルでも同じなのか

テレビのニュースは何故どこのチャンネルでも同じなのでしょうか?日本全国で事件や事故はたくさん起こっており、もし、テレビ各局が自前で取材しているとすれば、各局のニュースは違ってくるはずですが、放送されるのは同じ事件や事故で、ひどい場合には、放送される順番まで一緒だったり、同じ映像が使われています。私はアナウンサーがニュースに対して行うコメントまでが各局同じだったりするときには(特に政治関連)、本当にびっくりしてしまいます。
ニュースが同じになってしまう理由として考えられるのは、(1)ニュースのソースを流す問屋なるものがあり、そこが用意するものをテレビ各局が買っている、(2)テレビ各局の取材陣がお互いに協定を結んでいる、(3)協定を結んでいないとしても、他局を監視していて、同じニュースに走ってしまうなどが考えられると思います。(1)、(3)の可能性は高いでしょう。(2)については、もし存在するとすれば、言わば視聴率カルテルみたいなもので視聴者をバカにしていると思います。視聴率が上がらないニュースの制作コストを削減したいという思惑もあるのかもしれませんが、ジャーナリズムの精神を持っているのであれば、ニュースソースとその取材の中身で競争すべきでしょう。
談合やカルテルを批判する立場にあるテレビ局が、実は自分たちも同じ事をしていたということになると笑い話では済まされないと思います。

2007年3月3日(土)
不透明な国立医学部入試制度

入試のシーズンですが、最近、国公立大医学部の入試制度を見てびっくりしました。AO入試や推薦入試があり、一般入試も前期とか後期に分かれていて非常に複雑な制度になっています。かつて、医学部の入試は、勉強のできる生徒だけが集まり、患者の痛みを理解する良い医者を養成できないと批判されました。その結果、面接試験や小論文試験が課せられたのですが、最近になって、AO入試、推薦入試などが出現しました。もともと医学部は定員が少ないのに、AO入試や推薦入試枠を設けられると、一般入試枠で受ける学生の競争率はとてつもなく高くなり、超難関になってしまっています。すなわち、AO入試や推薦入試で受けれない生徒にとっては、大変な狭き門になってしまっています(学力偏重を助長している)。その一方で、このAO入試と推薦入試の中身ですが、殆どの大学でdisclosureがされておらず、何を基準に生徒の点数をつけているのか、あるいは何を基準に指定校推薦枠を各高校に割り当てているのか不明瞭です。試験とは、本来、公平であるべきなのに、推薦枠や採点の基準が曖昧であれば大変な不公平になってしまいます。もっと言えば、試験制度が曖昧で非公開であれば大学当局による不正行為も起こりえるでしょう。例えば、権力者の圧力ですんなりAO入試や指定校推薦枠で合格する学生がいるかもしれません。こんなことになったら、学力偏重の医者を養成する制度を是正するどころではありません。試験とは客観的で公平かつ公正であるべきです。筆記試験に比べ、AO入試、推薦枠などは非常に主観的であるため、本来、試験には不向きな制度であると思います。そこを敢えて、そういう制度を採用したわけですから、少しでも客観性を持たせるためには、AO入試の採点基準や指定校推薦枠の選択基準をオープンにすべきだと思います。勤勉で正直で人から信頼される医者を養成するためには、先ず、入試の制度自体が情報を開示し、公正で信頼できるものであるべきでしょう。

2007年5月28日(月)
麻疹:騒ぎ立てるマスコミ、付和雷同する国民

最近の麻疹騒動には、ほとほと呆れかえります。マスコミ、特に、ネットサイトのニュースではどこどこ大学が休校になったとか連日麻疹の記事を掲載しています。また、テレビや新聞で医者が、一回の予防接種じゃうつる危険性があると説明していて、心配になった国民は自分や子供に対して、麻疹の検査をして欲しい、麻疹のワクチンを打って欲しいと病院に殺到しています。そのため、ここにきて、麻疹の検査も試薬が無くなって検査できなくなり、麻疹のワクチンやMRワクチン(麻疹風疹ワクチン)が品薄の状態になっています。麻疹のワクチンは1回打っていれば、殆どの人は大丈夫なのですが、マスコミ出る医者は、まれなケースが或る場合、大丈夫だと言いにくいので慎重な言い方をするという事情があったり、医療関連番組や記事は特殊なケースを取り上げて新鮮味を出そうとするところもあるので、検査しなさい、ワクチンは2回打ちなさいという事になるのだと思います。医療の最前線にいる、私を含めた医者や看護婦の殆どがワクチンを1回しか打っていないのに、それよりずっと感染機会の少ない人達が、何故、大騒ぎするのか不思議に思います。また、不安に思ってワクチンを打ちに来る人たちがあまりにも多くて、本来、ワクチンを打つべき、未接種の子供達がワクチンを打てなかったり、本当に麻疹にかかった患者が検査できなくなってしまうという事態になると大変なことだと思います。検査試薬が枯渇し、ワクチンが少なくなってしまった現状では、医療機関は本当に必要な患者に優先順位を付けて、検査するなり、ワクチンを打つという風にせざるをえないでしょう。
日本人は単一民族でどうしても同じ行動をとり、一斉に動くという性質があると思います。加えて、日本のマスコミには不安心理を仰ぐ報道で視聴率を稼ぐという体質あるために、このような小規模ながら社会的なパニックに状態になったのだと思います。今の現状からすると、もし、日本で新型インフルエンザが出れば、間違いなく大パニックになるでしょう。

2007年7月7日(土)
O−157に注意!

5月にマスコミは麻疹の報道に明け暮れていましたが、同月に出たO−157の集団感染を何故かあまり報道しませんでした。都内某大学の食堂で170人もの感染者を出したにもかかわらず、新聞記事に少しでただけでした。保健所が調べたものの、感染源は分からなかったそうです。170の学生が感染し、電車で通学していたとすると電車のつり革や手すりから二次感染する危険性がありますし、彼らが飲食店でアルバイトしていたとすると、そういう店での二次感染もあるでしょう。また、心配なのは、O−157に感染して病院に行ったときに医者がO−157の発生を知らなくて、ウイルス性胃腸炎と誤診することがあるかもしれません。もし、ウイルス性胃腸炎と診断され、O−157の特効薬である抗生物質を投与されなかったとすると、治療が遅れてしまうことになるかもしれません。マスコミがあまりにも麻疹の報道に偏る一方で、O−157の発生を伝えなかったという事で視聴者が感染予防する機会を逸し、医者も判断を誤るという事もあると思います。麻疹を騒ぎ立てるマスコミに翻弄され、麻疹ワクチン接種に東奔西走するものの、秘かに麻疹より大流行していたO−157に感染したという事態が起こったかもしれません。幸い、この大学以外での集団感染は今のところ起こっていませんが、キャリアー(症状の出ない保菌者)はいると思います。暑くなるこれからの時期、いつまた、O−157が発生するかもしれません。外出から帰った後の手洗いは常に心がけたいものです。

2007年7月8日(日)
参議院選挙

参議院選挙が間近になっていますが、自民党の大敗、民主党の大勝になるでしょう。前回の衆議院選挙は郵政改革が争点となる「郵政」選挙で、自民党がこれに勝利しましたが、今回は、年金の問題が出て、「年金」選挙になるでしょう。従来より、年金の掛け金の増加、受給額の減少、受給年齢の引き上げで、国民に不満が溜まってきていた中、年金加入記録の問題が出てしまったので、国民の怒りは頂点に達し、その矛先は与党に向いています。自民党が大敗して自公が参議院で過半数を割るという状態になると自民党内での責任論が出て、党内的に不安定になり、国会運営的にも法案が通らず、国政が不安定になるでしょう。以前、1970年代イギリスは、不景気のどん底で、いわゆるイギリス病で悩んでいました。政権は保守党と労働党でコロコロ変わり、政治が非常に不安定で非効率的でした。そんな中、保守党からサッチャーが登場し、国営企業を次々と民営化し、労働党に再国有化させないために民営化した会社の株を外人に売りました。サッチャーの強力なリーダーシップの下、次々と改革が断行され、イギリスは生まれ変わり、再生したのです。日本の政治も小泉前首相の時代から変わったと思います。バブルがはじけて不景気に病んでいた日本の国民が求め始めていたのは、自民党、民主党という党ではなくて、国を再生してくれるリーダーであったと思います。今回の参議院選挙では民主党が勝つと思いますが、もっと長い目でみれば、小泉前首相を引き継いだ阿部首相が自分たちの思っていたリーダーではなかったと思っただけで、民主党を支持した訳でもなんでもありません。したがって、その次の選挙では、又、民主党が大敗するという事もあるでしょう。国民が求めているのは国を再生してくれるリーダーであり、そういう人物が登場しない限り、国民の支持は日和見的に変わり、政治が安定せず、日本は中々日本病から回復できないでしょう。

2007年9月21日(金)
工学部志願者の激減に日本の将来を憂う

小学生の頃、先生から、「アメリカやソ連は資源が豊富で平地も多く農産物も沢山とれる。生活に困れば資源を売れば困ることはない。でも、日本は資源がなく、国土も狭い上に山ばっかりで食料も自給できない。日本人が生きていくためには、加工貿易で付加価値の高い物を作り続けるしかない。そのために日本人は一生懸命勉強しないといけない。」と言われ、そう信じていました。日本の発展は富岡製糸工場などの繊維を代表する軽工業に始まり、八幡製鉄所を代表とする重工業に移り、さらには、精密機械、輸送機械、電気機器、半導体、化学工業などへと発展してきました。つまりは、物作りの国として外貨を稼ぎ発展してきたわけです。一方、食料受給率は低く、最近では40%を切ったと言われています。すなわち、物作りによって稼いだお金で、足らない食料を輸入しているわけです。しかし、最近、新聞を読んでびっくりしたのですが、大学の工学部の人気が落ち続けており、志願者数は20〜30年前の4分の1近くになっているという事でした。工学部人気の低下に対して、安定した生活を求めて医学、薬学系に受験生が流れる傾向にあるようです。ある調査では日本屈指の秀才高たる灘高では1番から20番までの受験生全員が東大か京大の医学部に行っているということでした。また、驚いた事には、代ゼミや旺文社の大学難易度を見てみると、京大、名古屋大など中央の大学から信州大などの地方の大学に至るまで、工学部の難易度が、保健−理学療法科(理学療法士を作る科)よりも低くなっていました。理学療法をするのにそんな頭のいい人がいるとは思えません。優秀な人材が工学部に行かなくなった。これは、日本国家にとって憂うべきことです。将来日本を背負う優秀な若者が物作りからどんどん離れてしまうと、今日まで日本が行ってきた加工貿易による外貨獲得ができなくなります。優秀な医者や理学療法士が増えても日本人全体を支えるだけの外貨獲得は不可能です。バブル崩壊で自信を喪失した日本人(特に優秀な人程自信を無くしたかもしれない)は、経済危機でも乗り切れるのは医療系であり、高齢化社会になる日本では医療系は益々必要とされると考え、我が子を医療系へと進学させるのでしょう。しかしながら、ゆきとどいた高度な医療というのは経済力のある先進国でのみ可能であり、莫大な借金をかかえ、その増大を押さえることさえも不可能となってきている日本では、医療系職業の将来は安泰という訳にはいかないでしょう。むしろ優秀な人材は戦後日本発展の原点たる高度成長期のように工学部に行き、外国に負けない製品開発をすべきであり、学校教育の現場や家庭では、物作りの楽しみや日本国家のあり方を教えるような教育をもっと子供にしていくべきだと思います。

2008年1月7日(月)
開業医と勤務医

最近よく新聞やテレビなどのマスコミで開業医と勤務医が対比され、勤務医の労働は過酷だとか、開業医に比べて報酬が少ないと報道されています。しかしながら、開業医と勤務医を労働や報酬で単純に対比することは不可能です。なぜなら、開業医は勤務医(研修医、専修医を含む)として出発し、10年から20年くらい勤務してから、独立し開業するからです。医者という職業は医学部を卒業して国家試験に合格すれば直ぐに医者として働けるわけではなく、研修医(2年)、専修医(2年)としてトレーニングし、その後も幾つかの職場や病院を変わって、色々な診療の経験を積んで初めて一人前になります。すなわち、勤務医というのは、会社で例えると若い修業時代の新入社員から社長までの社員または役員で、開業医は会社である程度働いた後に独立した中小企業の社長みたいなものです。若い社員の多い会社の平均給料とある程度年配になった中小企業の社長の給料を比べたら、後者の方が高いに決まっているし、仕事時間も若い研修医や専修医の多い勤務医が長いに決まっています。

そもそも20代から30代の医者の勤務が過酷という議論自体が何を基準にしているのかよく考える必要があります。このころの医者は医者としての修行期間であり、実地の「勉強」をしているわけで「労働」をしているという認識はないと思います。やる気のある医者なら、つらいなんて思ってはいないし、むしろ少しでも長く病院にいて多くの症例を診て、早く一人前になりたいと思っているでしょう。私も14年間勤務し開業しましたが、勤務医時代には、24時間食事を取れなかったり、1週間病院から出られなかったり、日曜に病院に出勤していて、祖母が危篤になったときに駆けつけることができなかったという事もありました。でも、過酷だとか労働対価が低いとか思ったことは一度もないし、患者のためであり、一人前の医者を目指す自分のためでもあると思っていました。

開業医と勤務医の無意味な対比をマスコミがする理由は、それを流すソースがあるからで、そういう対比をして開業医を減らしたいという意図があるからでしょう。しかしながら、もし開業医が減れば、必ず、勤務医はもっともっと過酷になります。開業医の多くは高齢で実は年金だけでも暮らせる人がたくさんいて、そういう人は勤務医にはもどるとは考えにくいし、若手で勤務医にもどる人がいたとしても、医者にとって環境のいい都会に行ってしまうでしょう。そうなると辞めた開業医が診ていた患者は行き場を失い勤務医のところに押し寄せます。すなわち地方では開業医も勤務医も居なくなり、益々医者不足になります。医療の地域格差、小児科および産婦人科の不足を問題視しているのに、さらに拍車をかけることになるでしょう。さらには、開業医が減って、大病院に患者が集中すると医療費が増えるでしょう。

以前、マスコミはリピーター医師の問題をさかんに取り上げましたが、そのため、医療訴訟のリスクの高い小児科医や産婦人科医などが減少してしまいました。また、医者の派遣(バイト)の問題についてもマスコミは大騒ぎしましたが、派遣される医者が来なくなった病院では、負担(外来、当直、検査など)が増えて忙しくなった常勤医が辞めて赤字になり、閉鎖に追い込まれるところも出てきました。こういうマスコミの無責任な場当たり的報道姿勢が今日の医師不足問題を作り出す原因になっているのに、今回もまた間違った方向で議論が進んでおり、非常に危惧しています。

2008年4月5日(土)
シャットダウン

揮発油税の暫定税率延長を含む法律が時間切れで予算が通らず、国、地方の政治家、役、関連業界の人達は混乱しています。これは短期的には経済的にマイナス影響がでるかもしれませんが、日本の民主主義という点では大きく前進し、政治的に成熟していく可能性がある出来事だと思います。アメリカなど海外の国においては予算案が通らないという事は時々あることで、私が十数年前にアメリカに留学していたときも大統領が議会が提出した法案にサインすることを拒否したために予算が執行できなくなり国の機関はシャットダウンになりました。国の職場は殆ど休止状態になり、公務員は給料がもらえなくなるので職場にも来ませんでした(実は給料は後から支払われる)。大統領は軍、警察、病院など休止状態にすると支障が大きいところの予算は直ぐに通したのですが、それ以外は通さず、国立公園など優先順位の低いところは一番後まで通りませんでした。私が働いていた研究室も国立の機関だったので一週間位休みになり、みんな特別な休暇をエンジョイしていました。このとき私は予算が通らないこともあるんだという事でこのとき非常にびっくりしたのですが、よくよく考えてみると、日本の方がよっぽど変な国で、「予算が通らないと大変なことになる」と予算案が国や自治体でいつもそのまま通っており、議会が機能していない、或いは、機能できない状態にあるわけです。予算がそのまま通るのであれば、役人主導の予算案になってしまい、役人の天下り確保、埋蔵金、贈収賄などが起こりやすい環境になるでしょう。しかし、もし、今回のように予算が通らないかもしれないという事になると、国民の目線に立って予算を組む必要が出てきます。
少子高齢化でしかも人口減少時代に入った今日、道路、ダム、空港がまだ必要でしょうか?明らかに需要が減少する分野の予算を確保し続けるために、需要が増えるから大変だと危機感を募り、医療福祉の予算を抑制しようというのでは時代錯誤だと思います。予算を作る財務省は、今後、与党のみならずもっと野党の意見も聞く必要があるでしょう。また、「暫定」とか「特定」とかという言葉でごまかして、予算を組んでいける時代は
近い将来終わるでしょう。