日本列島の地質CD-ROM版(2002)より引用

九州四国地方の地質

 九州四国地方では大断層である中央構造線の南側で付加コンプレックスのなす帯状構造が顕著である。四国から西南西に延びるこの帯状構造は,九州で南南西に折れ曲がる。四国から九州東部にかけては,中央構造線に沿って白亜紀末の堆積岩類(和泉層群)が分布し,その北側に白亜紀の珪長質深成岩類が広く分布している。中央構造線の南側では,北から,後期ジュラ紀-前期白亜紀の付加コンプレックスを原岩とし白亜紀に変成した高圧型変成岩類(三波川変成岩),ジュラ紀-前期白亜紀の付加コンプレックス(秩父帯),白亜紀-新第三紀初頭の付加コンプレックス(四万十帯)が順に並び,さらにその南側,南海トラフに面した地域ではフィリピン海プレートの沈み込みによって現在も付加コンプレックスが形成されつつある。九州の北部には古第三紀-新第三紀の前弧盆あるいは背弧盆を埋めて堆積岩類や火山岩類が分布する。また,瀬戸内海に沿っては前期中新世後期-中期中新世前期の海成の堆積岩類が分布する。四国の石槌山,九州の大崩(おおくえ)山や尾鈴(おすず)山などの珪長質火山岩類や深成岩類は中期中新世の太平洋側での火成活動の産物である。中国地方西部から西方に続く火山フロントに沿っては九重 (くじゅう)山,阿蘇山,霧島山,桜島などの活火山が集中している。別府湾から雲仙へ続く地域は,鮮新世から沈降し始めた地溝(地殻の沈降によって生じた狭く長い凹地,グラーベンまたはリフト)で,そこには地溝の中や周辺の火山から噴出した火山岩類が厚く集積している。