日本列島の地質CD-ROM版(2002)より引用

1.1 地 形
 日本列島は,ユーラシア大陸東縁に位置し,千島弧,東北日本弧,西南日本弧,琉球弧,伊豆-小笠原弧からなる島弧の集まりである。千島弧と東北日本弧との境界は北海道中央部に,東北日本弧と西南日本弧との境界は糸魚川-静岡構造線に,西南日本弧と琉球弧との境界はほぼ九州と四国,本州との間にある。伊豆-小笠原弧は,伊豆半島の北側で東北日本弧と西南日本弧とに接している。それぞれの島弧の前面,すなわち大平洋側には千島海溝,日本海溝,南海トラフ,琉球海溝,伊豆-小笠原海溝が,背後にはオホーツク海,日本海,東シナ海,フィリピン海と呼ばれる縁海がある。また,島列に沿っては第四紀の火山が並び,その前縁である火山フロントと海溝との間の前弧と呼ばれる地域には,島弧方向に延びた盆地が点在し,その間に北上山地のような前弧高地と呼ばれる高まりが存在することもある。縁海の下には,千島海盆,日本海盆,大和海盆,沖縄トラフ,四国海盆などの背弧(海)盆と呼ばれる広大な盆地が広がっている。
 海溝は日本列島に平行して,海洋底が大陸地殻の下に沈み込むところである。北米プレート(またはオホーツクプレート)上にある千島弧と東北日本弧,フィリピン海プレート上にある伊豆-小笠原弧の下に太平洋プレートが沈み込み,ユーラシアプレート上にある西南日本弧と琉球弧の下にはフィリピン海プレートが沈み込んでいる。アイソスタシーの理論では,軽い地殻が重いマントルに浮いていると考える。大陸地殻からなる島弧は,平均的な厚さが30 kmであり,マントルを深くまで押し下げて大きな浮力を得るので,隆起した地形となる。大陸地殻のうち海水面より高い部分が陸地である。海洋地殻は,平均的な厚さは7 kmであって,低く平坦な地形を呈している。海洋底が島弧の下に沈み込む海溝は,さらに深く,水深8,000 m以上に達するところもある。
 海洋底の水深は形成時期が古いものほどプレートが冷えて重くなるために深くなる傾向がある。日本周辺の太平洋プレートは,白亜紀前期に形成されたもので,その水深は6,000 mである。古第三紀後半から新第三紀前半にかけて形成された四国海盆と日本海盆の水深は,それぞれ3,000-4,000 m,2,000-3,000 mで,更新世以降急激に沈降した沖縄トラフの水深は1,000-2,000 mと太平洋に比べてかなり浅い。
 千島弧が東北日本弧に対して西側に向かって衝上し続けている北海道の中央部は日高山脈から北へと延びる山岳地域になっている。また,西南日本弧が太平洋プレートの沈み込みに伴って西進する東北日本弧,及びフィリピン海プレートの沈み込みに伴って北上する伊豆-小笠原弧と接する本州中央部は著しく変形し山地が形成されている。中央構造線は,長野県諏訪から伊勢,和歌山,徳島,松山付近から九州に至る大規模な右横ずれ断層で,地形にも顕著にあらわれている。この横ずれ運動はフィリピン海プレートの斜め沈み込みによるものである。西南日本弧と琉球弧との接合部は,九州-パラオ海嶺との衝突するところにあたり,海嶺の前面には,屈曲した盆地が,そしてその背後には盆地に平行に山地が生じている。