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平成12年8月18日号通算92号 |
の日本酒を飲む会 ニュース |
新たに入ってみた昼の定食屋のおかずが、酒の肴にふさわしい。夜も営業しているのかと聞いたら、やっているという。帰路に立ち寄ってみた。
昼のにぎわいとは変わって、何となく安酒居酒屋という雰囲気だった。
この辺には「安い」ことだけで有名な居酒屋があり、その中の一つは、途方もない値段でビール某社系から他社系へ売り渡されたなどの噂があるところだから、うまくて雰囲気がよくて、それで安価な店を期待するほうが無理なのだ。
無愛想に迎えられて座る。「冷や酒はありますか?」と聞く。中国地方のAの生酒300ml瓶が出てきた。まずい。「他のはありませんか?」、東北の有名なB300ml瓶が出てきた。これもまずい。水っぽい。表示をよくみると、アルコール度数はAが14%、Bが13%であった。アルコール度数が低くても、美味しい酒はある。この夜の酒は、低アルでおいしく飲むための酒ではないようだ。15.5%で市販するつもりの酒に多量の水を加えて「低アルコール、低カロリー、安価」を標榜して市販したものだろう。決して「おいしい、楽しく飲める、サカナもうまくなる」というコンセプトではないと思われた。もし、メーカーが私の言い分を否定するなら、同社の経営陣、技術者たちのきき酒能力を疑う。
「安くしなければ売れない」、これは真実である。真理である。だから、「低アルコール」にした。当然増量になる。酒税も節約できる。この考えには「飲み手」の都合はまったく考えられていない。一抹の配慮があったとしたら、「300ml瓶入りの生酒だから、消費者は飲んでくれるだろう」という手前勝手な当て推量だったのではないか。
AもBも、地酒メーカーとして名前が通った蔵である。だから、地酒に知識のない飲食店でも安心して常備したのだろう。酒の種類や銘柄にこだわらない飲み手は、耳にしたこのある地酒銘柄のそれも生酒となれば安心して注文するだろう。商売がここで完結してしまうならオメデタイで済むが、うまいと思わぬ飲み手は店から離れるか別の酒類に移るかして、やがては日本から日本酒が消えることになる。当然、発火点の蔵も存在できなくなるのだ。
こういうのを自縄自縛とか自業自得とか言ったっけ。
だが、私には救いがあった。
「他に酒はないの?」と聞いたら、「お燗用のCがあります」。Cは関信地区有数の地酒メーカーだ。やむを得ない。「それ、冷やで」と言った。
分厚い徳利でCは出てきた。もちろん冷えてはいない常温である。これを口にしたら、味のバランスがよく、芳香はないが嫌味もない。ほどよい酸味がサカナを引き立てる。レッテルを確かめたわけではないが、本醸造規格と睨んだ。
大衆向け価格帯、数もこなせる商品で、このように手を抜かぬものもあったのだ。だが、生の表示も何もないから、こっちが安くてうまいとはだれも気づかぬだろう。
日本酒の売れ行きが低迷して。市場開拓を怠った業界、業者は、ファンの手で作られた需要に「品質表示」や「製造方法表示」をかざして割り込みを計ったのであろうが、この手は蛸が自分の脚を食う例えである。
危ういかな日本酒。果たして21世紀に残れるか。
かねてより予告したように、本会は11月例会をもって、きっちり25年で幕を閉じます。
会費は年内12月までいただいていますが、12月はニュース送付のみになります。ご容赦ください。
なお、各地の幻の日本酒を飲む会系の会から「こちらも止めねばならないですか?」という質問が有形無形で来ていますが、まったく心配なくお続けください。
これから「幻の日本酒を飲む会」と名乗って酒の会を発足させることも大歓迎です。念のため。
やせ浪人が、おのが存在をアピールするために開いたような「湯島酒堂」。いつ教室の屋根が落ちるかと思っていましたが、丸1年も保ってしまいました。
それではというわけで、酒の文化をより広く捉えて「私の好きな酒の本」をテーマに、諸先輩方に講義をしていただく予定です。
<期間>本年9月〜来年2月まで、全6回、土曜組もしくは水曜組
土曜組・・・14時〜16時30分
水曜組・・・18時20分〜20時50分
<場所>湯島ハイタウン会議室
<受講料>18000円(6回分)
<内容>毎回3部構成
1部・・・篠田次郎の講義
2部・・・他講師の講義
3部・・・きき酒
<講義予定日>
土曜組
9月9日(第2土曜)
10月14日(第2土曜)
11月11日(第2土曜)
12月9日(第2土曜)
1月13日(第2土曜)
2月3日(第1土曜)
水曜組
9月13日(第2水曜)
10月11日(第2水曜)
11月8日(第2水曜)
12月13日(第2水曜)
1月10日(第2水曜)
2月14日(第2水曜)
〒113-0034 東京都文京区湯島4-6-12湯島ハイタウンB-1308
TEL 03-3818-5803, FAX 03-3818-5814 幻の日本酒を飲む会
篠田次郎