(株)西田酒造酒店見学レポート

青森駅から西田酒造へ

 2月20日朝8時17分にに青森駅へ到着。
 大雪が積もっており、さらにバンバン降っている。スキーをしない僕は,雪国には数度しか来たことがない。しかもいつも天気がよかったので,こんな大雪は初めてだ。大雪に興奮しているためなのか,厚着のおかげなのか,あまり寒いという感じがない。それにこっちの女子高生は,この雪の中でもスカートに生足である。寒くないのだろうか。

 駅の近くの市場へ入って,朝ご飯を食べる場所を探す。ぶらぶらと回って,お寿司と定食の店を見つけ,どやどやと9人が入っていく。僕は市場定食1200円(写真)を注文,これはさしみ盛り合わせ,焼き魚(ホッケ),おかず4品,ご飯,お味噌汁と,東京では考えられないような価格だ。その他に誰も食べなかったが,うに丼2,500円があった。みんなゆっくり味わい過ぎて西田酒造への出発が遅くなってしまい,慌ててタクシーに乗る。そのタクシーも大雪でなかなか進まない。

 予定を少し遅れて,10時過ぎに西田酒造に到着した。吹雪の中から垣間見える「喜久泉」の看板(写真)が渋い。中には新酒ができたことを示す新しい酒林(写真,杉の玉)がぶら下がっていた。東京では写真に写っているのれんの「田酒」ブランドが大人気だ。

 蔵には秋田地酒の「酒屋まるひこ」栗谷さんが先に来られていた。西田さんへの挨拶が終わってまもなく「蒸米」作業が始まるとの連絡があり,さっそく見学させていただく。

蒸米

 蒸し上がった米が300kg毎にクレーンでつり上げられて放冷機に入れられ(写真),パイプで次の工程に送られる。放冷機につながっている布(ビニール?)は、熱い蒸気を部屋の外へすごい勢いで排出している。空気を吹きつけるのではなく,空気を吸い出すことで空気が蒸米の間を通り,その時に米の熱を奪っていくということである。

精米

 精米は竪型精米機(写真)を使って行なう。
 60%精米の(4割が糠として捨てられた)米を35%まで精米にするのに20時間かかる。精米の際に出る糠は,玄米の皮などの混じった赤糠からはじまって,中糠,白糠,および上白糠の4段階に分けている。上白糠はお菓子屋さんに持っていくらしい。
 山田錦,華吹雪,八反錦,古城錦などの玄米や精米後の米を見せて貰う。華吹雪は山田錦に負けないくらい大きい米である。

貯蔵

 特別純米クラスまではタンク貯蔵,吟醸以上は瓶貯蔵をする。タンク貯蔵の温度も2種類あり,15°C貯蔵のものは早出し年内に出荷するもので,13°C貯蔵のものは年明け1〜3月に出荷するものである。13°Cに貯蔵する理由は,貯蔵中にひねない(過熟しない)ようにするためで、これは西田さんの好みだそうだ。このひね香が少ないところが,僕が喜久水を好きな理由なんだなぁと納得する。

麹室

 麹にされる米は蒸された後,放冷されて麹室に運び込まれる。麹室では米に麹がふりかけられる。西田酒蔵さんでは床麹でやられているようだ。麹室の温度は室温42°Cで,けっこう暑い。華吹雪の麹米(写真)を触らせて頂いたが,手触りはさらさらしている。かじってみると少し甘いような気がする。

酒母

 山廃酒母の温度は 58°C〜62°C。こんなに熱いとものだとは思っていなかった。

きき酒

 一通り見学が終わり,楽しみのきき酒(写真)をさせて頂く。
 きき酒の形式を取っているが,口に入れた物は飲んでしまうのはこの会の流儀である。写真で手前から酒母3日め, 酒母当日モト上げ,純米(仕込み50号, 51号, 52号, 53号, 61号),純米吟醸(41号, 42号), 大吟アル添(43号, 40号), 大吟もろみ(1, 3)である。手前の二つは酒母なので,白くどぶろくのように見える。蔵の中でなければ絶対に飲めないものまで味合わせていただく。

 酒母は乳酸が非常に強いので,歯が悪くならないように飲んだ後は口をゆすぐこと,というアドバイスを受ける。実際にすっぱい。これも意外で,酒母は甘酒のようなものだと思っていた。我々は,酒で口をゆすいで,当然のように飲みこんだ。

西田さんのお話し

 見学の終わった後と,昼食時に西田さんがいろいろ話をしてくださった。これはその中の一部。

 酒質に関しては,少硬めでもひねる前のものが良い、という考えだそうだ。本当は買ってすぐに飲んで欲しいのだが、(冷蔵庫の)外で保存してから飲まれることが多いので、硬めで出して消費者の手元で熟成することを想定している。
 流通の段階で生ヒネを出すおそれがあるので,ほとんどの酒は火入れして出荷しており,生酒は純米生貯しぼりたて 180mlのみである。

 喜久泉の酒には色が着いている。この色は、米、麹から来る色である。普通酒は炭素濾過するが、純米以上の酒には濾過を行なわない。無理に色を取ると味も取れてしまう。

昼食

 お昼は西田さんに案内して頂き,駅の近くのてんぷら「つの川」へ向かった。
 大雪のためにいつもの道が塞がっており,店のすぐ近所に来ているがたどり着けない。このまま雪の中に埋もれてしまうのかと心配になったところで到着した。
 田酒無印生原酒,田酒特別純米しぼりたてを頂く。めったに飲むことはできない田酒生酒を緊張しながら注いで回していく(写真)。手前に写っている小さな瓶は田酒特別純米しぼりたてである。

酒屋まるひこ(栗谷信彦さん)

秋田県秋田市大町4-1-2, TEL.018-862-4676, 営業時間 9:30〜22:00, 日曜休み