第32回木陰浮月粋人盃例会

 小雨降る10月21日美酒の卓・海鮮山鮮さんで第32回木陰浮月粋人盃を行ないました。
 福井県鯖江市の吟醸蔵「梵」さんの特集ということもあって,あっという間に予約で一杯になってしまい,キャンセル待ちを含めて沢山の方にお断りをいたしまして申し訳ございませんでした。ありがたいことに当店ではこのお蔵もとの酒で改めて日本酒の旨さを再確認されたファン,お燗酒の旨さにはっとされたファンをはじめ,一昨年酒蔵ツアーで蔵元の情熱にぞっこん惚れてしまったファン・・・とさまざまの梵さんファンがいます。

 梵さんの最大の魅力は,何といってもすべての酒が飲み頃を迎えてから出荷されるということです。一言で飲み頃と言っても,そのこだわりは驚異的と言っても過言ではなく,例をあげると晩酌に気軽に飲める本醸造においても+5度の2年熟成というスグレモノ!

 皇室献上酒となった「超吟」に至っては−8度の5年熟成という永いタイムトンネルから抜け出して,私達のもとへ届けられるのです。古酒,という表現は全くこのお蔵には当てはまらないと言っても決して過言ではないと私自身は思っている。
 何故ならファンそして消費者の誰一人としてこのお蔵のお酒を古酒として楽しんではいない。共通の一言は「ま・ろ・や・か」なのだ。

 さて当日は,会費の許す限り「梵」の吟醸酒を楽しみました。2種類の大切な吟醸酒を蔵元,加藤さんに譲っていただきました。お馴染みの純米大吟「吉平」の隠し酒「真打吉平」,そして2度とありつけないと思っていた「秘蔵37年古酒(非売品)」。昭和36年に生まれた酒であるが,確実に吟醸造りされた酒である事を感じ取ることができる。蔵元にこの時代の吟醸酒が残っていること自体が驚きであり,酒蔵ツアーで初めて口にした時に震えたのを思い出す。

 2度目の再会に言葉が出ない。蔵元加藤さんは技術屋であるというが,いわゆるウンチクは一切口にしない。むしろ朗らかに酔うためのシチュエーションには驚くばかりだ。

 酒は「耳」で味わう「物」ではないことをいやというほど知っている。酒飲みだから酒飲みの心が見えるのだろうか?「うまい」という一言はあまりにアバウトな表現であり,勝手に一人歩きする一言だが,大吟醸「梵」には,どうやら他の言葉が似合わないような気がする。

 私の会のために協力して下さった,海鮮山鮮マスター渡辺栄治さん,この場をかりてお礼申し上げます。