酒一筋田植体験レポート

 写真は木陰浮月粋人盃の中川さんから提供して頂きました。

岡山駅から利守酒造へ

 6月5日(土)晴れ。岡山駅前のロータリーで宇野バスを待っていると、鈴木さんが「酒一筋だ」と叫ぶ。バスの後ろをみると「酒一筋」の看板が付いている。利守さんもやるなぁ。

 7時30分発の林野行きバスに乗る。
 途中で小学生の集団が乗ってきて一時にぎやかになる。
 川沿いの道を進んでいくうちに,小学生も降りてしまい,すっかり静かになって進んでいく。早起きしたせいと,暖かい日差しだ。今日はいい田植ができそうだ。

 やがて道路脇に利守酒造への行き方の看板が出ていて「軽部上〜」という停留場名がアナウンスされる。バスのブザーを押して,鈴木さんと二人降り立つ。

 利守酒造はどこだっけ。「前に来たことあるんでしょう?」と鈴木さん。

 前回は送迎してもらったから,分からないですよ。周囲を見回してみる。
 道路を渡ったサービスエリアの売店の向こう側にお蔵らしい屋根が見える。

 「そうだ,こっちですよ」
 サービスエリアの前を右に向かっていくと小さな橋がある。この橋を渡ると利守酒造が見える。右側が母屋で,左側の建物は...なんだっけ,忘れた。
 左側の建物の前には掲示板があって「平成10酒造年度」の金賞入賞とモンドセレクション受賞の告知が貼ってある。

 8時30分,まだ大分早いが,きっと石毛さんあたりは来ているのだろうと思って蔵に入っていく。社長夫人が出迎えて下さる。あわわ。「こんにちは。弘充さんはいらっしゃいますか」と言っていると弘充さんが登場する。

 9時。事務所は人でいっぱいになっている。社長の挨拶,田村杜氏による田植の注意事項の説明のあと,田圃に向かう。

田植開始

 慣れた人たちはどんどん田圃の中に入って行き,稲の束を適当な間隔にまいていく(田植開始直前の写真)。
 初参加の僕はなんか気後れしてすぐには入れない。2回目参加の中川さんはビーチサンダルを畦に脱ぎ捨ててズンズン入っていく。

 ビーチサンダルは田圃に入るためじゃなかったんだ!

 恐るおそる足を入れてみると,ムニュムニュっと泥にめり込んで指の隙間に粘土が割り込んでくる。気持ち良いような、くすぐったいような感じ。
 ぐずぐずしていたので周りに知り合いがいない。これはちょっと不安だから,石澤さん達がいる田圃の真中の方に向かう。前に聞いた話では,たまにこけて泥まみれになる人がいるそうだ。田植が始まる前にこけたらみっともない。慎重に「おいしょっ」と声を掛けながら足を抜いて進む。

 やっと田圃中央のみんながいる付近に少し空いている場所を見つける。50センチおきくらいに並ぶ。
 そして足元に数珠のような玉がついた紐が張られる。

 「玉のところと,玉と玉のあいだとに植えてください」と杜氏が声をかける。

 さあ田植開始だ。
 中川さんに苗は3本ちぎって植える,と聞いているので「1本,2本,3本」と口の中で3本数え,稲束からちぎり取る。ムシムシっとちぎれる。しゃがんで土の中に植える。

 ところが地面が無い。
 いや,無いのではなくって底が深い。泥のあるところまで根を持って行くと,稲が水没してしまう。色々な人が歩いて土がへこんでいるんだ。慌てて周りから泥を集めて,そこに苗を植える。いや,押し込んでみる,というほうが正しいだろう。急ごしらえの土のせいか,根がちゃんと埋まらない。苗がフワフワと浮かんできそうだ。ああ,不安。

 次を植える。ここにはちゃんと土がある。OK.
 よし次。
 よし次。
 なかなか快調じゃん。

 「はーい,いいですか」と目印の紐を次の場所へ移す合図が掛けられる。

 早い,早すぎる。「ひゃ〜」とパニックになる。
 「まあ〜だぁ〜」と近くで女性が大声を上げる。助かった。いい人だ。

 左隣の人は動作がすばやい。僕がグズグズしていると,僕の前の分もちゃんと植えてくれる。ありがたい。ありがたいけど,くやしい。

 3本取って,おいしょ。3本取って,おいしょ。だんだん要領が分かってくる。
 自分の持ち分を植えて後ろに下がった際に,さっきいた場所の泥を手で慣らして平らにしておくコツも身につける(田植中の写真)。

 よし,持ち分終わり,後ろへ下がって・・・
 「後ろに稲があるから気をつけて!」右隣の池田さんからビシッと声がかかる。
 振返って足元を見ると,あっ大切な苗を踏みそうだ・・・ セーフ。

 (こんな感じで(参加者A参加者B参加者C参加者D)田植をしていました)

 そんなに日差しがきついとは思わないけれど,汗がどんどん出てくる。泥まみれの手で手ぬぐいの端を持って,額を拭く。拭いても拭いても汗が出てくる。

 鈴木さんが帽子を田圃に落としたらしい。「いいやちょうど冷えて」なんて言っている。
 こういう時に麻雀をやると勝てるかもしれない。

 開始から何分たったのだろうか。もう試験田の一番うしろまで来た。
 「あぁ,やっと終わった」と「あれ,もう終わったの」が混じった複雑な思い。

 田植が終わって畦に上がる。自分が植えた個所の苗を見る。
 なんかひ弱そうで,雨が降ったら流れて行ってしまいそうだ。もう一度田圃に入って土を盛って上げたい。かわいい。

田植の後・昼食

 田植が終わったあとは,田圃の横を流れている水 路で足を洗う。ビーチサンダルをはいて水路に入る。冷たい水が気持ち良い(足を洗っているお母さんと息子さん)。中にはサンダルを流されてしまう人もいたようだ。

 昼食の準備が始まる前に,田村杜氏にお願いして記念写真を一緒に撮っていただく。

 昼食は田圃の横にビニールシートがひかれ,おにぎり,お漬物,山葵漬け(酒粕は当然・・・),そして赤磐雄町と田植酒が並ぶ。うまい,うまい,うまい,うまい。ふだん飲んでも旨い。労働の後はなお旨い。雄町のおにぎりと一緒に飲むとさらに旨い。

 田植に来てよかった。

 昼ご飯を食べながら田村杜氏のお話を伺う(写真)。杜氏の酒の好み(赤磐雄町と田植酒でどちらが好きか),酒に酔い過ぎないコツ,杜氏が田舎に帰った時に飲む酒の話など,とてもたくさんの話をして頂いた。して頂いたが,この頃はもう酔っ払ってしまい,いい気持ちになってしまって忘れてしまいました。

 楽しい昼食も終わり,ビニールシートを片づけながら田圃を見ると,さっきはダランと元気がなかった苗が,しゃっきりとしていた(写真)。秋の収穫が楽しみだ。

田植に参加するために

 今回始めて田植に参加しての服装の教訓です。
 日差しはそんなに強くはなかったですが,昼食の時に腕と太股を日焼けしてしまい,1週間くらいヒリヒリしました。そんなわけで昼ご飯でビニールシートに座っている時は,バスタオルで体を覆いましょう。

服装 Tシャツ まあなんでも良いですが,美白な人は長袖が良いかもしれません。
ただし田植の最中は捲り上げることになると思います。
半ズボン これもまあ何でも良いです。
ただし田植の最中はひざの上まで捲り上げることのできるものが良いです。
小物 タオル 汗を拭くためです。
ビーチサンダル 泥まみれの足を洗うために水路に入ります。
帽子 日差しが強いですから,日射病(熱射病?)を避けるためにはあったほうが。
バスタオル 昼食時に日焼けを防ぐために,肩・腕や足を覆います。