/// 伏見稲荷大社  ///  (03/04/23)

大鳥居を越えると楼門
 京阪電車の伏見稲荷駅からして稲荷色
です。そう、駅のイメージが、あの鳥居
の朱色なのです。伏見稲荷駅から大社
への参道も稲荷らしいお土産物店が
並びます。
伏見人形、稲荷寿司、キツネの煎餅、
そしてびっくりなのはスズメ、ウズラの
姿焼き。それを見てスズメ、ウズラと
云う固有名詞は思い浮かびませんが、
小鳥であることは一目瞭然。

稲荷大社は祭神の一座として
宇迦之御霊神(うかのみたまのかみ)を
祀り、穀物の神だとか。そう云う訳か、
穀物を食い荒らすスズメは焼き鳥にして
食べてしまえと云うのでしょうかね。

稲荷の語源は「稲成」、「稲生」の
”ネ”が省かれて「イナリ」になった
と云う説もあれば、「イナル」、つまり
”激しく鳴り響く”と云う雷を意味する
と云う説もあったりします。
古来、円錐形をした山は、神をなびき
寄せる山としての信仰がありました。
俗に神奈備と称しますが、今の稲荷大社
の背後の稲荷山は、まさしく神奈備と
云える地形です。
端正な五間社流造の本殿
恵の雨をもたらす神々を招き入れる
ことは、穀物の収穫につながるとも云えます。

山城風土記にも、秦伊呂具(はたのいろぐ)
が裕福であることに驕(おご)り高ぶって、
餅を的に弧(ゆみ)を射たところ、餅は
白い鳥となって稲荷山の峰に飛び去り、
その鳥の降り立った所に稲が生え、その時
以来、秦氏の家運が傾いたと伝え、その
子孫は驕りを悔い改めることで繁栄を取り
戻したと云います。
この当たりは往時の秦氏の勢力を物語る、
伝える伝説の様相も含まれているようです。
千本鳥居、鳥居のトンネル…
平安時代には、稲荷信仰は真言密教と
強く結びつきます。淳和天皇が病気に
なった原因は、弘法大師空海が東寺の
建立に当たって稲荷山の木々を伐り出した
ことによると云う宣託を受けて、天皇は
稲荷神に従五位下の位を贈り謝罪する
ことで、その非を認めることなどから、
東寺と稲荷大社の結びつきは強固になり
ます。

また、東寺は西寺と共に国家鎮護の寺と
して建立されますが、稲荷社の位置関係も
京の都から見て東南の方角に当たるので、
これも王城鎮護の役割とも合いまったもの
のようです。

稲荷と云えば、煎餅もあったように
キツネを思い浮かべますが、密教には
荼枳尼天(だきにてん)と云う仏様が
いるそうです。
その荼枳尼天はキツネだと云うのです。
そして、先ほどの「弧(ゆみ)」が「狐」
に転訛したと云う説もあります。
そして、社殿も元は三つの峰に上、中、
下の三社に分かれていたけれど、応仁の
乱の兵火で焼けて現在の地に遷ったと
云いますが、これまた三つの峰、三箇峰
から三狐峰と呼ばれ、「狐」につながり
ます。
重いか、軽いか、持ち上げてみよう
こうなってくると、稲荷とキツネの関係
は何処までがこじつけで、さては、
そうではないのか、頭の中の整理が
大変です。

表参道から歩むと巨大な鳥居を越えて
楼門が見えてきます。
この楼門は豊臣秀吉が生母大政所の
大病平癒を稲荷神社に祈願し、こと
成就のあかつきには1万石を寄進する
との約束があって建立されたと云います。
楼門を抜け拝殿の向こうに目をやると、
これも端正な本殿があります。室町時代、
明応3年(1494)建立の五間社流造の
堂々たる社殿で、桃山時代の特徴とも
云える唐破風(からはふう)が付き、
その社殿の装飾も蟇股(かえるまた)に
牡丹、唐獅子を配するなど唐草装飾で
見所も多いです。
不思議、神秘な光景、御膳谷奉拝所
本殿脇の階段を昇り、上御殿から奥の院
への小径には俗に千本鳥居と呼ばれる
鳥居のトンネルが続きます。よくテレビ、
雑誌に登場する風景です。
奥社には「おもかる石」と云われる
一種の神占石があり、思いを念じつつ、
燈籠の最上部に当たる石を持ち上げ、
軽いと感じれば、思いもたやすく通じる
と云われ、反対に重いと感じれば、その
思いは前途多難だそうです。

私も試してみたところ、これが微妙な
重さなのです。
私ではどちらにでも取れる重さだった…、
こう云う時は都合の良い方に解釈するに
限る。やはり願いごとに、その重さも
違って感じることになるのか…
珍しい奴禰鳥居
神奈備と云う言葉も登場しましたが、
神が降臨する山だけにあって、この奥は
「お山めぐり」と云われ、幾つもの社が
点在し、一般人にはほどよいハイキング
コースのようです。
稲荷社の聖地でもある御膳谷奉拝所、
かつての祭祀遺跡と云われる御饌石
(みけいし)が残っていたり、
三条小鍛治宗近の話が残る御剣社、
枕草子に記された清少納言が登ったと
伝わる春繁社など、逸話、説話の類には
事欠かない「お山めぐり」です。

その中で珍しい鳥居を一つ紹介しま
しょう。奴禰(ぬね)鳥居と云われる
鳥居です。
スズメ、ウズラの姿焼き、お味は??
普通の鳥居は一番上部の横木である島木、
そして、下の横木に当たる貫(ぬき)の
二本の水平な横木があって、その中央
部分に額束(がくつか)と云われる、
一般に社名が書かれている板の部分が
ありますが、この奴禰鳥居ではその部分に
屋根型の組み込みが入る珍しい鳥居です。
何と云うことはない鳥居ですが、発見して
みて下さい。

今回の伏見稲荷大社紹介はほんの概略
です。それこそ丹念に書き始めれば、
それだけで一つのHPも作れてしまい
そうですが、私としては、これだけでも
知ってハイキングがてら出かけよう。

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