/// 八坂の塔から清水寺へ ///  (00/02/25)

 清水寺へは東山五条のバス停から五条坂を、清水道のバス停から清水坂を
登って行くのが普通ですが、清水道のバス停から北へ直ぐの八坂通を登る
コースを紹介しましょう。
八坂通に入ると遠くに八坂の塔が望めます。道幅は車一台が
通れるほどしかありません、小さな商店街です。
魚屋、豆腐屋、八百屋、お菓子屋などの庶民の店に混じって
土産物店も並びます。

八坂の塔と云われる五重塔は臨済宗建仁寺派の法観寺。
創建は推古天皇の時代とも、天智天皇の時代とも云われ
定かではありません。
五重塔は消失と再建を繰り返し、現在の塔は室町幕府の
足利義教によって再建されたと伝わります。塔の高さは
約40メートル、重要文化財に指定されており、ここ八坂の
シンボルです。ここまで来て気づかれるかと思いますが、
東大路通からこの辺りまで、景観がすっきりしています。
修景地区と呼ばれ電線の地中化が行われた地区です。  
軒先を見ると赤い座布団を丸めたような玉状の物が
幾つか連なって釣り下げられています。
これは猿を象ったもので、魔除けの意味があります。
御所の鬼門でもそうでしたが、猿はここでも魔除けを
意味しているようです。
この先、商店街を抜け八坂の塔近くにくると八坂の
庚申堂(こうしんどう)と云う小さなお寺があります。
天台宗の寺院で、金剛寺というのが正式な名称で俗に
「八坂の庚申さん」として親しまれています。
狭い狭い境内ですが、
日本の三大庚申に数えられているお寺でもあります。  
ここは庚申信仰を基にするお寺ですが、庚申信仰は一般には庚申待ちとも
云われ、江戸中期には、本州各地に普及していたそうです。
干支で60日ごとに回ってくる庚申(かのえ さる)の日に、庚申講という
集まりを当番の家で行い、そこで「庚申さん」と呼ばれる掛軸を掲げて
唱えごとをして、食事、長話などで夜が明けるのを待つと云うものです。
そうすることで、災いから逃れられると云う民間信仰です。

その庚申ですが、「申」はサルとも読めることから、猿が災い除けの対象に
なったのかなと思います。
八坂の庚申堂は約1200年前、浄蔵法師に
よって創建されたと伝わり、八坂の塔が
傾いたときには、これを法力で起こしたり、
亡くなった人を蘇生させたりと霊力の
強い修験者(山伏)だったと伝わります。
本堂には商店街にあったものと同じ猿を
象ったものが無数に奉納されています。
八坂の塔、八坂の庚申堂を後に石畳の道を
登って行くと、左手から二年坂と交わります。
ゆるく坂は右にカーブを描きますが、その
内側には湯豆腐で有名な奥丹があります。
この奥丹にはもうひとつ、面白いことが
あります。

ご主人が「世界豆資料館」を開いておられます。
約三千種の豆の資料や一部は現物も展示されて
います。また一部は奥の畑で栽培されている
とか、でも「世界豆資料館」と云う大々的な
看板は掲げられていないので、店の人に頼めば
見せて貰えると思います。

この辺りからは左右どちらを見ても土産物店、
喫茶店、甘味処が軒を連ねます。やがて
産寧坂(三年坂)、登り切れば右手には七味、
香辛料だけを商う、その名も七味家です。
何故、産寧坂(三年坂)と云われたりするかと云えば、これが色々な説が
あって判らないと云うのが正しいのでしょうか。

安産にご利益がある子安観音への参詣道だったから産寧坂、坂上田村麻呂が
大同3年にこの坂道を開いたからとか、清水寺にお参りして願いが成就し、
そのお礼のお参りをする道と云う意味の「再念坂」に由来するとか、
どの説もそれらしい由来を伝えていますが、さて、さてどれでしょう…

この先の坂道はそのシーズンは修学旅行生でごった返します。
土産物店も修学旅行生目当ての、アクセサリー、小物を商う店が多くなります。

坂道には経書堂(きょうかくどう)とか大日堂とかの小さなお堂もあるのですが、
人混みに紛れてそれすら気づかずに通り過ぎてしまいそうです。

経書堂は聖徳太子の創建といわれ、16歳の時の姿をうつした太子像を本尊と
しています。
大日堂(真福寺)の本尊は大日如来坐像で高さ2.3メートルもあり、
重要文化財に指定されています。小さなお堂に所狭しと座る大日様です。
「お抹茶いかがですか〜。」、「八ツ橋どうです〜。」の呼び声を聞きながら、
やがて清水寺の三門に到着します。
清水寺は京都で三本の指に入る観光スポットです。

清水寺の山号は音羽山で、本堂の東側に広がる
山の名でもあります。その昔、鹿狩りに
来ていた坂上田村麻呂が、この山で修行して
いた延鎮と云う修行僧に殺生を戒められ、
改心した坂上田村麻呂は千手観音像を祀り、
お堂を建立したのが、清水寺の始まりと伝わります。
本堂の懸崖造りと呼ばれる崖にせり出した構造は
「清水の舞台」としてお馴染みです。
清水寺の本尊は、十一面千手観音像ですが、
これは観音菩薩が衆生の身に応じて三十三の姿で
衆生を救済すると解く「観音経」の教えに基づいて
います。そして33年ごとに開帳されるのも
習わしとなっていて、今年がその年に当たる
そうです。3月3日(金)から12月3日(日)まで
拝観できます。期間が長いので機会があれば
清水寺へも足を延ばしてみて下さい。

2000年、平成12年の話題です。追記(02/01)

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