このページではベルセルクにおける数々の謎等を独自に考察しています。
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○生贄の謎2〜グリフィスが捧げた理由〜

 グリフィスは鷹の団を生贄を捧げた。
 生贄を捧げるという行為は自分の夢を実現させるためのグリフィスに残された最後の手段であったことは否定できない。では、一見残酷とも思えるこの行為に何故彼が及んだのか、生贄の対象については「生贄その1」で考察しているので、ここではグリフィスの心情面に焦点を当てて考えてみたいと思う。

 まず考えられるのは『全てを犠牲にしても良いほどの強い決意ができた』ということ、つまり屍の上に成り立つ夢という現実を積極的に受け入れたということである。
 これは事前に深層心理のビジョンを観せられたとはいえ、「自らの夢を実現させるため」には手段を選ばないグリフィスの本質をストレートに表現したもの、言い換えれば自分は夢を追い続ける権利を主張したと言ってもいい。
 実際、夢実現のためなら微笑みながら酷い真似のできるニ面性をグリフィスが内包してる描写は少なくないし、自ら「何百何千の命を懸けながら自分だけ汚れずにいられるほど・・・たやすく手に入るものではない」とも「オレはオレの夢を裏切らない」とも言い放っており、夢実現が最優先されていることを物語っている。
 ストーリー構成及びキャラクター設定からしても、基本的にこの解釈で先ず間違いないと思われる。

 次に考えられるのは『自分の夢を実現させることこそ皆が望んでいるもの』という解釈
 ガッツにしろ鷹の団にしろグリフィスの夢のためにその身を委ねでくれるものであるから、夢を実現させなければならない義務があるという考え方である。
 かなり自分本位と思えるが、プロムローズ館におけるシャルロットとの対話に見られるとおり「彼らは優秀な部下」と言っている辺りからして、十分考慮に値することは確かではある。

 さて、注意したいのが『ガッツが許せなかった』という解釈。そしてガッツが幸せを感じている対象全てを「許せない」と考えたためにその場にいた鷹の団員全てが生贄にされたという見解。
 一見突拍子も無いことのように見えるが、実はグリフィスがガッツに対して殺意や嫉妬、或いはそれに近い感情を見せている部分が何度も描かれており、下記に見られるように心情としては理解しやすく在りそうな話である。

 再生の塔におけるグリフィス救出劇ニ際して、監獄内でガッツを初めて認識したグリフィスはガッツの首もとに手を添えているが、これはガッツの首を絞めようとした行動に他ならない。
(結果として、ガッツの涙に絆され、彼を許しそうと決めたことがグリフィスの目が優しくなったことによって判る。なお、一連の行動にジュドーだけが気付いていたようではあった。)
 その後の逃避行においても夢を諦めざるを得ない状態と同情の中に埋もれそうになる自分を自覚するにつれ、殺意と友情の葛藤が何度もあったはず。少なくとも、幸せを掴みかけているガッツに嫉妬しているのが、キャスカに強引に覆い被さった事件をとっても見て取れる。
 これは究極的であるが、蝕直前自殺さえできなかったグリフィスが「今お前に肩を掴まれたらオレは二度と二度とお前を・・・・」と考えた場面、コミックでは伏せられている最後の部分「・・・・」はヤングアニマル掲載時は「許せなくなる」であった。

 しかしながら、この殺意論には基本的に無理があって成立し得ない。
 というのはグリフィスの望みは『夢の実現』であり、『ガッツの死』ではないから・・・。
 事実かつて伯爵が「生への執着」のために敵であるガッツを生贄にしようとしたが、ガッツへの憎悪が願いではないとして退けられている例が存在する。
 従って、同様に『ガッツを生贄とすれば完全に自分一人の物にできる』というような解釈も成り立たないことは自明。

 最後になるが、生贄を捧げる直前の「グリフィスが見せた優しい瞳」と「戦場でガッツ肩を組んで笑っている光景」は、単に失うべき蜜月時代を懐かしんでいたに過ぎないと考えるのが妥当と思っている。
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