このページではベルセルクにおける数々の謎等を独自に考察しています。
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○戦略・戦術その1〜クシャーン戦理論〜

 「千年帝国の鷹篇聖魔戦記の章 戦魔」において初めてクシャーン軍の用兵策の片鱗が公開された。
 クシャーン軍といえば「強力な武力を擁す血も涙もない軍隊」という噂が流れていたが、当該エピソードで描かれた実態は、この噂をより辛辣に物語るものであった。

 以下はその概略(戦法の手順)である。
1. 進攻にあっては、まず一戦して自身の強力な武力により敵を圧倒し捕虜を多数捕獲する。
2. 次回の戦闘では当該捕虜達を戦奴として強制的に利用。自らの兵力を温存を図る。
3. 温存した兵力で一気に勝利をおさめると同時に、更に捕虜を増やし次の戦闘にあてる。
4. 繰り返し

 クシャーン軍の将軍(?)の言によれば、これを繰り返すことで益々版図は拡大し、軍隊は益々強大となるらしい。 つまり、単なる局地的戦法(戦術)に止まらず大局を制することのできる戦略だということを言っているのである。
 確かに、戦闘において戦意は重要な要素であるからこれを削ぐため同国兵を迎撃に当てるのは理にかなっている。また同時に自国の兵を温存できることも納得できる。従って、戦争を単なる数の衝突として捉えるならば動員できる戦力数、戦意の点から言ってもクシャーン軍は無敵となるであろう。

 しかし現実にこの戦略が成功する可能性は限りなく低い。何故ならそれは、戦争が机上の論理ではない上、単なる数の衝突でもないからである。
 以下にこの戦術・戦略の大きな2つの問題点を検証してみた。

●用兵上の問題
 クシャーン軍が戦奴用いる利点は自国兵を温存したまま敵を倒せることにある。具体的には戦奴に敵を足止めさせておき、離れた位置から弓矢隊により敵を殲滅又は戦力を削ぐ戦術と考えられる。しかも足止め役の戦奴もろとも弓矢の餌食にしてしまう荒っぽいやり方。
 しかしこの方法では戦闘終了後、敵は掃討され捕虜を捕えることができないか、捕えても戦力にならないという状況に陥るであろう。
 これでは次の戦闘に注ぎ込む戦奴が存在しなくなってしまうから、「戦闘すればするほど戦力が拡大していく」という説には矛盾があることになる。(なお、捕虜にすることを目的として敵を殺さず戦う方法は実際的でないため論外)

 更に、この戦術が成功するには敵の足止めが大前提となるが戦奴達が必ず成功できる保証が無い。
 戦闘においては『マンチェスターの法則』(戦力は兵士数の2乗に等しい法則)が適用される(つまり敵半数の兵力で迎撃したとしても、戦闘における戦力差は2の二乗で4倍となってしまう)訳だが、捕虜の寄せ集めで編成された部隊は数的にも、士気的にも圧倒的に不足していると思われる。
 また、クシャーン軍としては戦奴もろとも敵の殲滅を狙っている訳で、そんな部隊の指揮を採る者がいる筈もなく、結局統率されない部隊に足止めを任せることとなるから当然成功できる筈もない。
 更に、たとえ背後から弓矢に狙われているとしても戦奴達が逃亡を図る可能性が非常に高い。
 これらの検証からこの戦術の実現性は非常に低いと言わざるを得ない。

●補給上の問題
 戦争では武器・防具・薬・食料・水など多量の物資を消費する。
 当然消費した物資は補給する必要があるが、それらの必要量は兵士の数に比例し、補給計画は兵士数に応じて決定されている。
 特に食料と水は生命活動に必須であるから、最重要な補給物資と言うことができる。古来より『飢えた軍隊が勝った例はない』といった格言があるほどだ。

 この点を押さえてクシャーンの言う戦略を考えた場合、戦奴として利用する捕虜数が戦闘ごとに膨れ上がるとすればその分必要食料量も増え続けることとなるが、これでは補給計画のたてようがなく補給が追いつかなくなることは明白である。
 従って無計画に戦闘を続けることは無理と言わざるを得ない。


○補足(対クシャーン戦)

 クシャーン軍の戦闘力は強大らしい。
 従ってミッドランドとしては正面から戦うのを避け、敵の弱点を攻めるべきと考える。
 そしてクシャーンの弱点とは『補給の困難さ』であろう。

 ただでさえ長征によりその補給線が長くなっている上、象部隊を編成しているクシャーン軍は食料消費量が大きいと容易に想像できるので、ミッドランド軍にその意思があれは補給線を断つだけで容易にクシャーン軍を弱体化せしめることができそうなもの。加えて徹底的な焦土作戦を展開し、占領地から強奪できる物さえ無くせれば理想的である。
 まぁ、ミッドランドの実情は100年に及ぶチューダーとの戦争で国力・戦力ともに疲弊しており、ましてクシャーン進攻に対して無防備だったこともあり組織的な抵抗ができなかったようであるし、また『敵に対しては正面からぶつからなければ卑怯』などの騎士道精神がこの対抗策を実施できない理由なのであろうが・・・・。
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