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共観福音書比較研究



もくじ
共観福音書って何?
なぜ3つもあるの?
共観福音書比較表
共観福音書の成立過程 3つの福音書がどのように編集されてきたか、いくつかの説を紹介します。
共観福音書比較研究ノート マルコの福音書をベースにした共観福音書比較研究のノートを公開します。
カラー3福音書鳥瞰図 3つの福音書の関係がカラーで概観できるものです。
リンク 福音書関係のお薦めサイトです。


共観福音書って何?

新約聖書でイエスの生涯とその教えを伝える「福音書」という書物は4つあります。
その中で、最初の3つ(マタイによる福音書、マルコによる福音書、ルカによる福音書)は、内容が似通っているので(良く調べると違うのですが。)「共観福音書」と呼びます。最後の「ヨハネによる福音書」は明らかに前の3つの福音書と異なり、それらを補足するような内容になっています。
共観福音書は、距離的にも民族的にも急速に広がるキリスト教の基礎を堅持するため、イエス伝を正しく保存して伝える必要から書かれたと思われます。その内容の中心は「教え」ではなくイエスの「生き様」と「死に様」です。特に十字架の出来事に多くのページを裂いていることは、これが福音書の神髄であるからに違いありません。

なぜ3つもあるの?

あるひとつの事柄でも見る人によって全く違った見方をすることが良くあると思います。福音書もあくまでも人間が見たイエス・キリストを描いています。神の子イエスをできるだけ正しく描くために、神は3人を用いられたのでしょう。わたしたちも三次元の世界に生きており、見たものを正確に書き表すためには、それを様々な方向から見なければならないのと同様です。それによってわたしたちのイエス像が平面的でなく、立体的になるのです。いずれにしてもイエスという偉大な人物を描くのに、ひとりの人間では限界があるでしょう。

青野太潮という聖書学者は次のように言っています。
「4つの福音書はぴたりと符合する形で記述されていないが、それらを修正せず、正直に矛盾、齟齬(そご)をさらけだしているからこそ、人為的でない真実味が浮かび上がってくる。」
「否定的にではなく、むしろ豊かさを示すものとして受け止めるべき。」
(”どう読むか、聖書” 青野太潮 朝日選書490)


共観福音書比較表
マルコ マタイ ルカ
執筆年代 AD50年代。遅くとも70年以前。 AD60年代(保守的見解)
マタイは神殿崩壊を知っていたらしいと考え、85〜90年頃という説もある。
AD58−63年頃(保守的見解)
70年以降という説もある。
執筆者 マルコ(バルナバ、パウロ、後にペテロに仕えた) 12弟子のひとりマタイ パウロに同行していた医者ルカ
執筆事情 ローマ帝国による迫害が迫っていたときに急いで書いたらしい。ペテロから聞いたことを書いたとも言われている。 ユダヤ教との対立を背景とし、旧約とイエスとの連続性を主張。 テオピロという人物宛てに、歴史的正確さを証明するためルカ自身が調査、編集した。
対象とする読者 異邦人(特にローマ人) ユダヤ人 異邦人(特にギリシャ人)
イエスの見方 しもべとして 王として 人として
特徴 簡潔明瞭。イエスの行動、奇跡に重点。律法否定的。ユダヤの習慣を解説。不正確な記述あり。ギリシャ語が下手。
イエス誕生の記事も無く、また復活の記事も最初は無かったと思われる。精力的に宣教を行い、奇跡を行い、病気を治し、そして十字架につけられたイエスの姿を生き生きと描いている。
旧約の引用が多い。イエスの教えが多い。イエスは律法の成就者。パリサイ人への批判。教会と使徒の権威を強調。
イエスこそ旧約で約束されたメシア(救い主)であることを描く。時間順でなく主題別に構成されている。行動と教えがセットになっている。
独自の記事が多い。ユダヤ特有のものが少ない。美しいギリシャ語。
冒頭で述べているように、時間的順序で書かれている。全人類の救い主としてのキリストを描く。虐げられた人々、罪に沈んでいる人々への深い愛とあわれみに満ちた姿が美しい物語と共に(放蕩息子のたとえなど)描かれている。


共観福音書の成立過程

AD115年頃のイグナチオスの書物の中で、福音書ということばが単数形で使われていますが、明らかに複数の福音書の内容を知っていたので、このころは単一の文書として扱われていたと思われます。AD170年頃の「ムラトーリの断片では、ルカの福音書が第3の福音書と呼ばれているので、この頃には今と同じ構成になっていたと思われます。

その内容を詳細に分析していくと、どのような資料が背後にあり、どのようにして福音書が成立してきたかが浮かび上がってきます。(以下の共観福音書の重複構造図、およびカラー3福音書鳥瞰図を参照)

マルコ
マルコのみの記事はわずか5%しかありません。ほとんどマタイもしくはルカに並行記事があります。マルコが最も古く、マタイ、ルカがマルコをベースにしたというのが定説です。

マタイ
マルコのほとんどの記事を含み、それに独自資料とQ資料を合わせて、テーマ毎に編集されています。 イエスの教えに重点を置き、奇跡物語は短縮されていることがあります。用語も変えられています。例えばマルコでは「神の国」が、マタイでは「天の国」となっています。

ルカ
他に比べて独自資料が多いのが特色です。Q資料、マルコとの並行記事については、マタイよりも原本に忠実なようです。ギリシャ語としては洗練されています。

3福音書の重複記事

共観福音書の重複構造図


【例】
マルコ5:41 その子どもの手を取って、「タリタ、クミ。」と言われた。(訳して言えば、「少女よ。あなたに言う。起きなさい。」という意味である。)
マタイ9:25 イエスは・・・少女の手を取られた。すると少女は起き上がった。
ルカ8:54 イエスは、娘の手を取って、叫んで言われた。「子どもよ。起きなさい。」

マルコは「タリタ、クミ」というイエスが話した生の言葉(アラム語)を残している。 マタイはこの記事自体を簡略化しているので、イエスの言葉を省いている。 ルカは、マルコに沿っているが、アラム語を省き、その訳もマルコのようにぎこちない翻訳ではなく、自然な訳にしている。

2資料説(マルコ優位説)
このように「マルコによる福音書」と、Q資料の2つを底本として福音書が編集されたとする説。現在もっともポピュラーな学説。マタイ独自資料(M資料と呼ばれる。)とルカ独自資料(L資料と呼ばれる。)を合わせて「4資料説」と呼ばれることもある。
マルコの原典(原マルコと呼ばれる。)とQはアラム語で書かれたのではないかと思われる。

2資料説
2資料説


2福音書説(マタイ優位説)
一部の学者はマタイが先に存在したと考えている。この説ではQ資料の存在を仮定する必要が無い。しかし、マタイとルカの重複記事の説明が困難である。

2福音書説
2福音書説


リンジー説
1950年代にイスラエル在住のリンジー博士が提唱した説。元はヘブライ語で書かれたと考える。それがギリシャ語に直訳され、項目別に整理され、さらにギリシャ語文法が改良されたものがルカの福音書の元になった。マルコはルカを元に、マタイはマルコを元に書かれたが、それらは、時間順もギリシャ語も改良されていない「アンソロジー」をも利用した。この説は、福音書のギリシャ語がヘブライ語の直訳であると考えるところから出発している。今でもリンジー博士の弟子たちが(エルサレム学派と呼ばれる)継承している。

リンジー説
リンジー説


聖書批評学
前述の資料説での説明はあくまでも仮定にすぎない。それに対して、合理主義的な批評学を聖書に適用してその起源を解明しようとする運動が20世紀に起こった。

・様式批評
福音書は口頭伝承の断片の結合とみなし、各口伝の文学様式毎に分類し、その起源を明らかにしようとした。しかしその極端な懐疑主義により、奇跡物語をはじめ多くの物語が福音書記者の創作とされた。そして奇跡も行わず、また自分が神の子であることも主張しない、単なる立派な教祖にすぎない人間としての「史的イエス」が現された。

・編集批評
福音書記者が自らの神学と目的に基づいて、資料を編集したとする。この場合も編集=創作とする傾向があり、そもそもどれが編集なのかは明確ではない。

・保守的批評学
保守派は、このような批評学の合理的結論によって聖書の権威が否定されたため、批評学を無視してきた。しかし近年、保守派の中では、理性を絶対化せず、また聖書の権威を保持しつつも、批評学の成果を積極的に受け入れる者が増えている。彼らは編集を人間的な作業ではなく、そこにも神の介入があったと考える。

参考文献
「新約聖書の生い立ちと成立」、榊原康夫、いのちのことば社
「新約聖書は信頼できるか」、F・F・ブルース、聖書図書刊行会
「イエスはヘブライ語を話したか」、ミルトス
「新聖書辞典」、いのちのことば社


共観福音書比較研究ノート

マルコの福音書をベースにして、共観福音書比較研究のノートを公開します。 あくまでも個人的な研究です。学問的価値は無いと思いますが、ご参考になれば幸いです。 細かく説明していませんので、ご自分で聖書を開いて確かめて見るのが良いと思います。



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Q資料とは?
マタイとルカに共通する記事の元になったと推測される、イエスの説教を中心とした仮説資料。このイエス語録がかなり早い時期から文書として存在していたと考えられている。現存しないが、近年の福音書編集史研究により明らかにされ、多くの学者に受け入れられている。Qの存在を確信させるものとしては、エジプトで発見された外典の「トマスによる福音書」がある。Qの写本が発見されれば、まさしく21世紀最大の発見になるだろう。

リンク

Q資料について
あぶくま無教会 マルコ研究


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