太刀の形 七本
一本目
 打太刀は諸手左上段、仕太刀は諸手右上段で、打太刀は左足、仕太刀は右足から、互いに進み、間合に接したとき、打太刀は機を見て右足を踏み出し、仕太刀の正面を打つ。
 仕太刀は左足から体を少し後ろに自然体でひくと同時に、諸手も後ろにひいて、打太刀の剣先を抜き、右足を踏み出し、打太刀の正面を打つ。打太刀が剣先を下段のまま送り足で一歩ひくので、仕太刀は、十分な気位で打太刀を圧しながら、剣先を顔の中心につけ、打太刀がさらに一歩ひくと同時に、左足を踏み出しながら、諸手左上段に振りかぶり残心を示す。
 打太刀が剣先を下段から中段につけ始めるので、仕太刀も同時に左足をひいて諸手左上段を下ろし、相中段となり、剣先をさげて元の位置にかえる。

二本目
 打太刀、仕太刀相中段で、お互い右足から進み、間合に接したとき、打太刀は機を見て仕太刀の右小手を打つ。
 仕太刀は、左足から右足をともなって左斜め後ろにひくと同時に、剣先を下げて、打太刀の刀の下で半円をえがく心持ちで打太刀の打ち込んでくるのを抜いて、大きく右足を踏み出すと同時に打太刀の右小手を打つ。
 打太刀は左足から、仕太刀は右足から十分な気位で残心を示しながら、相中段になりつつ、刀を抜き合わせた位置にもどり、剣先を下げて、元の位置にかえる。

三本目
 打太刀、仕太刀相下段で互いに右足から進み、間合に接したとき、互いに気争いで自然に相中段になる。そこで打太刀は機を見て、刃先を少し仕太刀の左に向け、右足から一歩踏み込みながら、鎬ですり込み、諸手で仕太刀の水月を突く。仕太刀は、左足から一歩大きく体をひきながら、打太刀の刃身を物打で軽く入れ突きに萎やすと同時に打太刀の胸部へ突き返す。
 打太刀はこのとき右足を後ろにひくと同時に、剣先を仕太刀の刃の下から返して、諸手をやや伸ばし、左自然体の構えとなり、剣先は仕太刀の咽喉部につけて仕太刀の刃を物打の鎬で右で押さえる。
 仕太刀は、さらに突きの気勢で左足を踏み出し、位詰に進むので、打太刀は左足をひくと同時に、剣先を仕太刀の刃の下からまわして返し右自然体の構えになり、物打の鎬で押さえるが仕太刀の気位に押されて剣先を下げながら左足から後ろにひく。仕太刀は、すかさず右足から二、三歩小足にやや早く位詰に進み、剣先は胸部から次第に上げていって顔の中心につける。その後、打太刀は右足から、仕太刀は左足から相中段になりながら刀を抜き合わせた位置にもどり、剣先を下げて元の位置にかえる。

四本目
 打太刀は八相の構え、仕太刀は脇構えで、互いに左足から進み間合に接したとき、打太刀は機を見て八相の構えから、諸手左上段に、仕太刀もすかさず脇構えから、諸手左上段に変化して、互いに右足を踏み出すと同時に、十分な気勢で相手の正面に打ち込み、切結んで相打となる。
 相打となってからは、双方同じ気位で互いの刀身が鎬を削るようにして、自然に相中段となり、打太刀は機を見て刃先を少し仕太刀の左に向け、右足を(左足をともなって)進めると同時に、諸手で仕太刀の右肺を突く。
 仕太刀は、左足を左前に、右足をその後ろに移すと同時に大きく巻き返して打太刀の正面を打つ。
 打太刀は左足から、仕太刀は右足から、十分に残心の気位を示しながら相中段になりつつ、抜き合わせた位置にもどり、剣先を下げて元の位置にかえる。

構えの説明
八相の構え
 諸手左上段の構えから、そのまま右拳を右肩のあたりまで下ろした形で、刀をとる位置は、鍔を口の高さにし、口からほぼ拳一つ離す。構えるときは、左足を踏み出し、刀を中段から大きく諸手左上段に振りかぶる気持ちで構える。刃先は相手に向ける。
脇構え
 右足を後ろにし、左半身となり、刀を右脇に剣先を後ろにし、刃先は右斜め下に向ける。剣先は下段の構えより少し下げた位置にとる。構えるときは、右足をひきながら、刀を中段から大きく右脇にとる。特に刀身が相手から見えないように構えなければならない。

五本目
 打太刀は諸手左上段、仕太刀は中段で、打太刀は左足から仕太刀は右足から、互いに進み、間合に接したとき、打太刀は機を見て右足を踏み出すと同時に諸手左上段から、仕太刀の正面を打つ。
 仕太刀は、左足からひくと同時に左鎬で打太刀の刀をすり上げ、右足を踏み出して正面を打ち、右足をひきながら諸手左上段に振りかぶって残心を示す。
 打太刀が剣先を中段につけ始めるので、同時に仕太刀も左足をひいて剣先を中段に下ろし、相中段になる。打太刀は左足から、仕太刀は右足から小足三歩で、刀を抜き合わせた位置にもどり、剣先を下げて元の位置にかえる。

六本目
 打太刀は中段、仕太刀は下段で、互いに右足から進み、間合に接したとき、仕太刀は機を見て下段から打太刀の両拳の中心を攻める気勢で、中段に上げ始めるので、同時に打太刀も、これに応ずる心持ちでやや剣先を下げて、仕太刀の刀と合おうとする瞬間、右足をひいて諸手左上段に振りかぶる。
 仕太刀はすかさず中段のまま大きく右足から(左足をともなって)一歩進む。打太刀は、直ちに左足をひいて中段となり、機を見て仕太刀の右小手を打つ。
 仕太刀はその刀を、左足を左にひらくと同時に、小さく半円を描く心持ちで、右鎬ですり上げ、右足を踏み出し、打太刀の右小手を打つ。
 打太刀は剣先を下げて、左足から左斜め後ろに大きくひくので、仕太刀は左足を踏み出しながら、諸手左上段に振りかぶり残心を示す。
 打太刀、仕太刀ともに右足から相中段になりながら、刀を抜き合わせた位置にもどり、剣先を下げて元の位置にかえる。

七本目
 打太刀、仕太刀相中段で、互いに右足から進み、間合に接したとき、打太刀は機を見て、一歩軽く踏み込み、刃先をやや仕太刀の左斜め下に向けて、鎬ですり込みながら、諸手で仕太刀の胸部を突く。仕太刀は、打太刀の進む程度に応じて、左足から体をひくと同時に、諸手を伸ばし、刃先を左斜め下に向け、物打の鎬で打太刀の刀を支える。
 互いに相中段になり、打太刀は、左足を踏み出し、右足を踏み出すと同時に、体を捨てて諸手で仕太刀の正面に打ち込む。
 仕太刀は、右足を右前にひらき、左足を踏み出して体をすれ違いながら諸手で、打太刀の右胴を打ち、右足を踏み出し左足の右斜め前に軽く右膝をついて、爪先を立て左膝を立てる。諸手は十分に伸ばし、刀は手とほぼ平行に右斜め前にとり、刃先は右に向ける。その後、刀を返して脇構えに構えて、残心を示す。
 打太刀は、上体を起こして、刀を大きく振りかぶりながら、右足を軸にして、左足を後ろにひいて、仕太刀に向き合って、剣先を中段につけ始めるので、同時に仕太刀も、その体勢から刀を大きく振りかぶりながら、右膝を軸にして左に向きをかえて、打太刀に向き合い、剣先を中段の程度につける。つづいて仕太刀が十分な気勢で立ち上がってくるので、打太刀は左足から後ろにひきながら、相中段になり、さらに互いに縁が切れないようにして打太刀、仕太刀ともに左足から、刀を抜き合わせた位置にもどる。
 七本目の場合は、いったん太刀の形が終わるので蹲踞して互いに刀を納めて立会いの間合にかえり、立礼をして終わる。

小太刀の形 三本(打太刀−太刀、仕太刀−小太刀)
一本目
 打太刀は諸手左上段、仕太刀は中段半身の構えで、打太刀は左足から、仕太刀は右足から、互いに進み間合に接したとき、仕太刀が入身になろうとするので、打太刀は右足を踏み出すと同時に、諸手左上段から、仕太刀の正面に打ち下ろす。
 仕太刀は、右足を右斜め前に、左足をその後ろに進めて、体を右にひらくと同時に、右手を頭上に上げ、刃先を後ろにし、左鎬で受け流して打太刀の正面を打ち、左足から一歩ひいて上段にとって残心を示す。
 その後、いったんその場で相中段になってから、打太刀、仕太刀ともに、左足から刀を抜き合わせた位置にもどり、剣先を下げて元の位置にかえる。

二本目
 打太刀は下段、仕太刀は中段半身の構えで、互いに右足から進み間合に接したとき、打太刀は、守る意味で、下段から中段になろうとする瞬間、仕太刀は、打太刀の刀を制して入身になろうとするので、打太刀は、右足を後ろにひいて脇構えにひらくのを、すかさず、仕太刀が、再び中段で入身になって攻めてくるので、打太刀は脇構えから変化して諸手左上段に振りかぶり、右足を踏み出すと同時に仕太刀の正面に打ち込む。
 仕太刀は左足を左斜め前に、右足をその後ろに進めて、体を左にひらくと同時に、右手を頭上に上げ、刃先を後ろにし、右鎬で受け流して面を打ち、打太刀の二の腕を押えて腕の自由を制すると同時に、右拳を右腰にとり、刃先を右斜め下に向け、剣先を咽喉部につけて残心を示す。
 その後、打太刀は左足から、仕太刀は左足から相中段になりながら刀を抜き合わせた位置にもどり、剣先を下げて元の位置にかえる。

三本目
 打太刀は中段、仕太刀は下段半身の構えで、打太刀は立会の間合から、右足、左足と進み、次の右足を踏み出すとき、仕太刀が入身になろうとするのを中段から諸手右上段に振りかぶって、仕太刀の正面に打ち下ろす。仕太刀は、その刀をいったんすり上げて打太刀の右斜めにすり落とす。
 打太刀は、直ちに左足を踏み出し、仕太刀の右胴を打つ。仕太刀は左足を左斜め前に踏み出し、体を右斜めにひらくと同時に、胴に打ってくる打太刀の刀を、左鎬ですり流し、そのまま左鎬で、打太刀の鍔元にすり込み、小太刀の刃部の?で打太刀の鍔元を押さえて、入身になり、打太刀の二の腕を押さえる。
 打太刀がひくので、仕太刀はそのまま攻めて、二三歩進み右拳を右腰にとり、刃先を右斜め下に向けて、剣先を咽喉部につけ、残心を示す。そのあと、打太刀は右足から仕太刀は左足から相中段になりながら刀を納めて立会の間合にかえり、立礼をして終わる。


参考文献

日本剣道形解説書

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