記録の光と影

2001年、パシッフィックリーグの覇者は大阪近鉄に落ち着いた。
優勝への原動力の一翼を担ったのが、現在本塁打王、タフィーローズ選手に他ならない。
彼はその本塁打と持ち前の明るさでチームを引っ張ってきた。
いつしかその数は、現福岡ダイエー監督が持つシーズン最多本塁打記録55本に達していた。
そう言った事情を背景に、近鉄とダイエーの試合が福岡ドームで行われた。そして事件は起こった・・・

1打席でも多く打順をと、1番バッターになったローズ選手に対しての『敬遠劇』である。
その『敬遠劇』が、なんの戦略をも持たなかったことが後に明らかになる。
試合後のダイエーバッテリーコーチのコメント。。。
「監督は決定に関係ない。優勝されるわ、記録も抜かれるわ、では申し訳ない。監督に対するわれわれの配慮です」
「外国人に抜かれるのは嫌だった。ONでも長嶋さんは記憶に残る人、うちの監督は記録に残る人だから」
ローズ選手への投球に関して、「選手に任せている。個人的には、彼にがんばってほしいと思う」と監督コメント。
そしてこの日のローズ選手への投球は、18球中ストライクは2球だけ。
その状況を終始見てなにも言わなければ、監督の存在価値なんてどこにもない!
根本的なことを言わせてもらえれば、部下のミスこれすなわち上長のミスなのだ。
ゆえに、コーチの独断だろうが、それは監督責任なのだ。それを「選手に任せている」責任回避弁論とは論外なのだ!

皮肉なことに、海の向こうメジャーリーグでは、イチロー選手が、大リーグ新人シーズン最多安打記録の234本を樹立。
果たして彼が日本人ということで、記録に臨んだときに差別を受けただろうか?
日本のクソアナウンサーがローズ選手に対する差別発言を吐いた。
「身長も体重も分からない選手に王さんの記録を抜かれたくない」なんと情けないことか・・・

こんなエピソードもある。
バースがあと1本で王監督(当時巨人監督)のホームラン記録に追いつこうという時、チームのみんなが敬遠する中で、
江川は敢えて勝負をいどんだ。江川は王監督より、ファンに対しての誠意を重んじた。
王監督はイラ立つばかりだった。表面化はしないものの、江川の巧妙なメッセージは充分伝わってくる。
「あいつは肝心な時に裏切ってばかりだ」
そんな愚痴の回数も増え、62年に入りとうとう江川のエース権剥奪という処置をとることになる。。。
王の狭量加減が伺いしれる。

まぁいいのだが、現在と大きく異なる箱庭球場にて、圧縮バットで達成した記録。
それを後生大事に泥にまみれて堅持する意味が、一体どの程度あると言うのだろか?
まさに歴史が捏造された瞬間を垣間見た。
結果として、歴史は信用できなが、己の記憶を大切にしたい。そして汚れた55本の記録秘話を後世に・・・

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