Nikon S2


S2オーバーホール(2000.12)

 発見時から特に機能的に悪い部分があったわけではないが、せっかくなので思いっきり綺麗にしてやりたいと思い、ニコンのサービスセンターにOHに出すことにした。主な目的はファインダー内の僅かなカビの除去とヘリコイドの鳴きの調整である。

 見積もりに出したところ、レンズにも絞りに油の滲みが見つかったので両方ともOHをお願いした。結果、各部の動きが見違えるほどスムースになった。シャッター音が明らかに小さくなり、巻き上げ感もさらに軽く滑らかになったのが最も嬉しいことである。外観もぴっかぴか。カビの跡はファインダーをよく見ないと判らないほどで、外観、内部の動き共にほぼ新品同様のコンディションに戻ったのではと思っている。

 ちなみに工賃はボディー約5万、レンズ約1万5千円。(両方で税込み66150円)「通常はボディーだけで7万5千円」とのサービスの方のお話だったので、元々コンディションは良好な部類だったことが伺える。

 S2の市価は、10〜20万(程度により差がある)といったところ。変な話、OHは「中古カメラ投機」としては割高だが祖父の形見分けと考えれば高くはないと考えている。大体、「私の」S2より綺麗なS2は売り物でも未だ見たことがない。カメラ関係の友人も口を揃えて「美品」と言ってくれる。「もったいないから使うな」だって。(^_^;) これからも大切にしたい。


S2との出会い(2000年)

 用事で実家に寄ったある日、ついでに私は父の古い一眼レフ、PentaxSPをせしめようと家捜しを始めた。ところがなかなかみつからない。父に聞くと、「おっかしいなー、そこの段ボールにあるはずだぞ?Nikonなんかと一緒に...」ニコン?父がニコンのカメラを持っているとは知らなかった。と、見慣れぬ皮ケースが段ボールに無造作に入っている。それがS2だった。

 聞くと、祖父の物だったらしい。ケースはそれなりに年期を感じるが、中身はぴっかぴか。とても使い込まれているとは信じがたい。私は祖父がこのカメラを持っているところを見たことがないので、30年は眠っていたのではないだろうか。ファインダーにわずかにカビがある以外はレンズ(50mmF2)も全く綺麗な状態であった。試し撮りの結果も良好。そうとなれば実家の段ボールになど置いてはおけない。早速このカメラのために防湿庫を導入して我が家に引き取らせていただいた。

※結局、PentaxSPは未だ行方不明である・・(^_^;)


使用感

 現在、我が家で最も高級なカメラである。例えば一式(T981)と比べると、ぱっと見は大して変わらないがよく見ると工業製品、いや「工芸品」としての格の違いを見せつけてくれる。それは操作することでさらに大きな差と感じるようになる。

 例えばS2は裏蓋全てを「がぱっ」と外してフィルムを付ける。(これが最初は判らなかった..)シャッタースピードダイヤルも低速と高速の2段ある(私のS2は、所謂「初期型」である)。一式は現代のカメラらしくワンタッチで裏蓋が開くし、シャッターダイヤルも一段で全て切り替わる。明らかにS2は旧世代のメカニズムだ。しかし、蓋の剛性感、クランク巻き上げ時に感じる操作感等はS2の方がスムースで「気持ちがよい」。古さを通り越して高級な満足感を使用者に与えられるカメラだと思う。私はそこにカメラが高級品の代名詞であった時代の意地を見たように思い、また同等以上の「機能」を遙かに安価に満たしてしまう現代の技術力に感慨の念も覚える。

 S2は旧世代のカメラの中ではとても現代的で使いやすいカメラである。ファインダーの見栄は一式とほぼ同等。フィルム装填も蓋さえはずせれば現代のフルマニュアルカメラと同じだし、クランク巻き上げも同じ。フィルム装填はライカM3より遙かに使いやすいと思う。それ故「アメリカではライカM3より売れた」のは良く判る。ただしファインダーの出来はM3の方が上だし、シャッターの位置が悪いために押しにくい等の欠点もある。S3,SP等と比べると乾いたうるさいシャッターの音も特徴である。SPを最終到達点とするニコンのRF機において、S2は50mmレンズを使う分では最も使いやすく、中核になる存在だと思う。


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