朝鮮戦争を経験し、フォード社を退職して頑固者を絵に描いたような
ウォルト・コワルスキ−(クリント・イーストウッド)は、妻の葬儀に
現れた孫たちの服装や振る舞いを腹に据えかねていた。父親を煙たがる
息子たちも気に食わない。妻の遺言だからと、しつこく懺悔に誘う若い
牧師が生や死を説教するのも、面白くない。
けど、妻がいなくなり、ひとりぼっちのウォルトは玄関先でビールを
飲むことしか毎日やることがない。
そんな折り、隣にアジア系の移民一家が引っ越してきた。その家族の
おとなしい少年タオと、タオにつきまとう不良少年グループが引き起
こすトラブルも人種に偏見を持つウォルトは苦々しく感じていた。
ある日黒人不良グループに絡まれていたタオの姉をウォルトが助け、
意外にも聡明な彼女と言葉を交わし、少し楽しい気分になる。
アメリカが抱える問題を(アメリカだけにとどまらないが)これでもかと
詰め込んだ作品だが、ラストまでは比較的軽いタッチで流していく。
前回のイーストウッド監督、主演作「ミリオンダラー・ベイビー」も、
同じく最後に重いテーマを持ってきた。今回の作品も前回同様、重い
テーマに一つの答えを出している。
現実社会では、夕陽のガンマンも、ダーティーハリーも存在しない、
してはならないのかもしれない。
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