壬生義士伝


飢饉にあえぐ東北地方。藩校で教える吉村貫一郎(中井貴一)も
例外ではなく、貧しい暮らしを強いられていた。
ある日、口減らしに自殺を図ろうとした妻を見かね、幼なじみで
組頭(三宅裕司)の顔をつぶすような形で脱藩する。
新選組に落ち着いた貫一郎は、家族に仕送りするため精を出す。
遠く離れた家族を思い、ふるさと自慢、家族自慢をする貫一郎を、
鼻持ちならないヤツだと斎藤一(佐藤浩市)は蔑んで見ていた。
「死にたくないから人を斬る」と言う貫一郎と、「斬ってくれる
ヤツがいないから生きているだけ」と言う斎藤は、お互い相容れ
ないのであった。
絶頂期にあるように見えた新選組も、倒幕勢力が力を増すにつれ
内部分裂し始め、やがて戦う理由さえ見いだせなくなってきた。

この映画、昔話を語る展開で進んでいくんですね。(これって、
タイタニックの手法?)ぐぐっと力が入ったところで、現在に引
き戻して少し息をつかせる。絶妙のコンビネーションです。
佐藤浩市と中井貴一のキャスティングと演技は、もうこれ以上望
むものはないと思わせてくれます。邦画なんてビデオで十分と思っ
ていた私の常識を、見事なまでに裏切ってくれました。
「おもさげなかんす」(申し訳ないと言うような意味なのかな?)
と、訛りが抜けない外見の木訥さとは裏腹に、強靱な精神力、家
族愛を隠し持った貫一郎は、男が描く理想像なのかも知れません。



 

おすすめ度
94点

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