誰も知らない


母(YOU)と子(柳楽優弥)がアパートに引っ越してきた。
「主人は海外に単身赴任中で」などと大家さんに挨拶をしているが、
真っ赤な嘘。おまけにまだ3人子供がいる。でも、大勢子供がいて、
おまけに主人もいないとなれば、どこも入居させてもらえない。
引っ越した日の夜、母はみんなに「大きな声を出さない」「家から出
ない」などのルールを言い聞かせる。
実はこの子供達、それぞれ父親が違い、学校にも行っていない。でも、
母親は外で働き、12歳の長男が母親代わりに食事の用意をし、長女
が洗濯をし、 みんなは笑顔でなんとなく幸せに暮らしていた。
ある日母は長男に「今、好きな人がいる」と告げる。「またかよ」と
思いながらも、大きな家に住んで、学校にも行けるようになるのでは
と、 少し期待もしていた。
しかしある日、母は「しばらく留守にします。妹、弟をよろしくね」
という書き置きと、いくらかのお金を残し、家を出てしまった。
こうして「誰も知らない」4人の子供達は、必死で生きていこうとす
る。

いやいや、妙にリアルだと思ったらやっぱり実話なんですね。
それにしてもこの映画、BGMもほとんどなく、YOUや、カンヌ映画祭
で男優賞を獲得した柳楽優弥もほとんど「素」で、とても「演技して
いる」ようには見えず、なんだかドキュメンタリーを観ているよう。
そう言えばこんな映画観たことがある。「火垂るの墓」だ。
幼い弟妹を抱え、何とか一家を支えている。しかし、 火垂るの墓と絶
対的に違うのは、 この映画は泣けないのだ。
辛くて、苦しくて、淋しくて、少し楽しくて、 弟妹たちには心配させ
まいと、頑張って、葛藤して、そんな少年の心理を淡々と本当に淡々
と綴られている。涙が出るほど同情できるのだが、火垂るの墓のそれ
とは明らかに違う。
今までにないタイプの映画に、逆に新鮮さを感じました。



 

おすすめ度
78点

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