噛みついた女(−ヒューストン連続殺人−)ディヴィット・リンジー 高見浩訳 新潮文庫
昭和62年10月25日第一刷発行
Title: A COLD MIND
Autheer: David Lindsey
Copyright: C1983 by David Lindsey


ヒューストン/ヒューストンには、土地規制法なるものは存在しない。最高の権威は金であって、それこそ気違いじみた成長の動因となっている。ここ数年のこの街の急成長ぶりたるや、放縦の域を通りこして、ある種の隈雑さにも通じていると言ってよかろう。だらしなく広がった街区は、金さえあればどんな男にも身を任せる、貪欲な、いかがわしい女に似ている。じっさい、T彼女Uを抱きたがった人間は大勢いたのだ。モントローズは、T彼女Uの乱交の結果生まれた多くの子孫たちの一つなのである。(P71)

■名前    スチュアート・ヘイドン
■職業    ヒューストン警察殺人課刑事(稼業11年)、最近警部への昇進を断わる
■年齢    36歳
■家系    父ウェブスター・ヘイドン(故人)まで4代にわたる弁護士の家系
       父は伝統を破りハーヴァードではなくコロンビア大学で法学を修めるために一族の居住地ボストンを離れ、卒業後渡英、イギリスの法律を学び、スコットランドの女性を娶る。メキシコの法律制度を学ぶためメキシコ・シティに移住、1940年代初期にヒューストンを居住地とする。メキシコ・シティとヒューストン双方における社会的なコネと彼自身の非凡な能力とがあいまって、国境の両側の石油成金たちの顧問弁護士として巨万の富を獲得する。この独立心はスチュアートへと受け継がれ、息子の警察入という事態を招くのであるが、父ウェブスターはショックを受けはしたものの、最も創造的な仲間として後生を生きた。


■学歴    英文学の学士号を有する
       大学院で1年間法律を学んだのち退学、警官となる
■住所    高級住宅地ブロード・エイカーズ地区
■住居の特徴 私道にリモコンで作動する鉄製のゲートあり
       ベルギー風スレート張りの屋根
       3階建て
       家の横手に広々とした芝生
       テラスにフランス・ドア
       庭に柑橘類(ライム)の樹木多し
■家具    
       書斎に赤い革張りの安楽椅子、ティーテーブルに電話、
       椅子の脇にはそれぞれサイドテーブル、その上にそれぞれランプ
■調度品   バカラのデカンター(P172、ヴァンストラーテン来訪の際にシェリーを入れて)       
              
■家族    結婚12年目の妻ニーナ(明るいからし色の髪)彼女の理性が彼を支えている
       愛犬サンコ(老コリー)=シャブリが好物
       ガブリエラ(メイド)
■使用人   庭師パブロ

■身体的特徴 黒髪(こめかみのあたりには、灰色の筋も混ざる)
       琥珀色の斑点のある茶色の目
       目尻に皺
       オリーブ色の肌、すっきり通った鼻筋
       唇は厚くもなく薄くもない
       身長182センチ(約6フィート)
       贅肉のない、引き締まった体躯、長い脚
       優美な指(妻への愛撫の際にはことのほか)
       過敏すぎる胃袋(両親譲り)
       
■服装の趣味 優雅な装いを好む 
       淡いベージュのスーツ(ウォモ)白いシャツに焦げ茶色のタイ(死体発見の日)
       「旦那の服装、デカみたいじゃないすね」(P83)
       パジャマがわりに、だぶだぶの白いメキシコのカルゾーネ(P92)
■食物の嗜好 柑橘類(ライム)好き
■飲物の嗜好 コーヒーに砂糖は入れる(2個)…待ち合わせたドラッグストアで
       シャブリ(自宅で)肴はシュリンプにガブリエラ特製レムラード・ソースかけ
       スコッチの水割(コパズで)口直しにレモンスライス
       ジン・ライム(晩酌はこれを2、3杯)
       眠れぬ夜にライム入の水
■その他嗜好 煙草はフライバーグ&トライヤー
■音楽の嗜好 バニー・マニロウは神経にさわる(P90、コパズで)
       ショパンのノクターン(P166、自宅で)

■癖     自分にも並みの人間と変わらぬ赤い血が流れている証拠を、つい人目にさらしてしまったときなど、反射的に格式ばった言動をしてしまう(P53)
■所有車   ロイヤル・ブルーのジャグァー・ヴァンデン・プラ   
■公用の武器 ベレッタ
■デジタル度 コンピュータを使いたいようには使う能力はあり(データの検索・プリントアウト)
■読書    書斎には父の法律関係と並び自分の書籍多数
       『タウン&カントリー』


■内面的特徴 どんな些細なことも見逃そうとしない注意力
       この6ヶ月間で心の変化を感じている
       それは深い幻滅感、それあるがために生きる意欲すら失いかねない深い幻滅感
       生き残るための最上の手段、人生の苦難をのりこえるための手段として理性を育む(P94)
       T暗黒の季節Uを持つことが自らのアキレス腱でることを知っている
■暗黒の季節 強度のストレスにより、一切の理性を捨てる→突然の失踪→やつれて、よれよれで帰宅
       →ベッドに倒れこんで死んだように眠る→2週間もすると食欲が出て元の体重に戻る
       結婚前に一回、結婚後2年ほどで一回、その後何度か
       このT暗黒の季節Uは二人の結婚生活にとって唯一大きな不安材料      

■人間関係
レオ・ハーシュ…ヒューストン警察殺人課刑事、26歳。
警察官として出世するべくテキサス大で心理学専攻、2年間ロースクールで刑法を学んだのち警察学校入学
普通に女好き
ボタン・ダウン・シャツ着用、学生時代にかけていたレイ・バンのサングラス愛用
禁煙中のため、口腔清浄剤サーツを噛む
高級一眼レフ所有
殺人課で一、二を争うほど詳細で正確な報告書を上げる能力。
独言癖
この連続殺人事件を機に警官を退く。

エド・ムーニー…ヒューストン警察風紀課刑事。
アイルランド気質。
胃潰瘍。肥満体になりつつある。
もしゃもしゃの赤い眉毛
赤ら顔の肌
ヘイドンとは同期、先に頭角を現すが、出世街道をばく進することで敵を作り、出世にブレーキがかかる。組織の主流から弾かれ、風紀課へと永遠に押し込められている状態。
ヘイドンは可能な限り殺人課に彼を借りだしているが、ムーニーの運を上向きにすることの助けにはなっていない。
闘いぶりはつねに陽気そうでして、口ずさむ歌にはいつも悲哀がこもる。
最悪の敵は、彼自身なのである(P44)


ハール・ヴァンストラーテン…検視医
殺人課の刑事たちにTベン・トーブの死神博士Uと呼ばれるが、
ヘイドンとは互いに好感を抱きあっている。
ヘイドン、ディスタイルにヴァンと呼ばれる
ヘイドンをスチュアートと呼ぶ
死体に対する執着は別として優雅な服装など共通の趣味を持つ。
仕事に関しては、難問にこそいちばん挑戦意欲をそそられるというタイプ
P174〜176にかけて狂犬病を説明するくだりには圧倒される。
キャラメル色の肌、スカンディナヴィア風の彫りの深い顔立ち
不運な独の神学者ディートリッヒ・ボンホッファーを思わせる風貌
身長約189センチ、強靭そうな体躯、太い毛むくじゃらの手首
深みのある低音を響かせる声
興奮すると、発声にドイツ語のような抑揚が伴う

ヨーロッパ仕立てとすぐにわかる三つ揃いのスーツを常用
陶製のカフ・リンクス
コンコード・ディリリアムの腕時計
ダンヒルの煙草とライター



ボブ・ディスタイル…ヒューストン警察殺人課警部
中西部の農夫風のアクセント
熊もどきの手。
正義の人。(エピソードはP138)
まったく同一のチョコレート色のダブル・ニット・スーツを2着所持。しかし着用のパターンは決まっていない。
職場では広口の格子柄のカップで、最高に濃いコーヒーを飲む。
日立製のラジオでカントリー&ウエスタンを聞く。
ブルドーザーの絵柄のジッポー使用。
テキサス州の形の、ガラガラ蛇の共鳴器官を埋め込んだ、アクリル樹脂製の灰皿使用。
サイズ14 のノコナ・ブーツ着用。安ものの革
1950年代にテキサス州ブロンディで高校時代をすごしたときと変わらぬヘア・スタイル、
頭の両側を地肌が見えるくらい短く刈り込み、七三にきちんと分けて、要所をヘア・クリームでまとめている。
しかしこの一見野暮な外見・習慣の蔭に非凡な知能、犯罪心理に関する深い洞察力が隠されている。

ヘイドンをスチューと呼ぶ。そう呼ぶのはディスタイルくらいだが、それはきわめて自然に聞こえる。
毎朝<ジョージョーズ>に7時半頃あらわれて朝食をとるのがならわし。
ヒューストンの代表的朝刊2紙を小脇にはさんで窓際の定席へつく。
車の流れを眺めるのが好き。ナンバープレートからドライヴァーの職業に思いを馳せる。
見出しと主要記事に目を走らせながら食事をすませる。
朝食後のコーヒーには必ず砂糖を入れる。
その後、客との話し合い。

ピート・レイピア…ヒューストン警察殺人課刑事
殺人課で一、二を争うほど詳細で正確な報告書を上げる能力。
一流のホテルのフロント係に化けることが可能な容姿、たちふるまい




ラス・ミリオン…地方検事補(P330 ヘイドンの台詞に出てくる)
スチュアートはこの若い地方検事補を好ましく思っている。
口元にひげをたくわえている。
確かラス・ミラードという名前がエルロイ「ブラック・ダリア」の捜査陣にいたので要チェック
書かれたのはリンジー作品の方が前


        





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