| 2002/01/29-9397 | 
								
									| マイアミ・トラップ | エドナ・ブキャナン 鴻巣友季子 訳
 | 扶桑社ミステリー文庫 | 1995年6月30日第1刷 | 
											   毒毒度:1 | 
								
									| その昔サイコミステリ100冊切り?の時代に、この人の初ミステリー『永遠には生きられない』を読んだ。よくある多重人格ものという印象だった。さて最近の悪癖BOOK-OFFにて100円で買った、シリーズ第一作。マイアミを舞台に、事件を追う女性記者ブリットを描いている。作者がピュリッツアー賞まで受賞した凄腕記者だとは知らなかった。 | 
							
							
								
									| 2002/01/27-9398 | 
								
									| WITKIN | Photographs by Joel-Peter Witkin Text by Germano Celant
 | SCALO | First Edition, 1995 | 
											毒毒度:5 | 
								
									| “With this work, I am judged by myself, by my contemporaries, and finally, by God. My life and work are inseparable. It is all I have. It is all I need.” そして人は悪魔の所業と言うだろう。公募したフリークス。昔鳥だった女性の背には羽根をもがれた傷跡。妖艶な美女の股間には必ずペニスがある。果物にからめた屍体と動物。写真家Joel-Peter Witkinの1995年までの代表作を集めた作品集。数年前に探してもらったが入手できず(違う写真集をすすめられた)、昨年Amazonで見つけてやっと手に入れた次第。日曜日の夕餉に開く本ではないが、ここにはまぎれもない生がある。
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									| 2002/01/26-9399 | 
								
									| 不思議な猫たち | ジャック・ダン&ガードナー・ドゾワ編 深町眞理子ほか訳
 | 扶桑社ミステリー文庫 | 1999年9月30日第1刷 | 
											   毒毒度:1 | 
								
									| “子猫には厄介な点がある。つまり、子猫のいずれはただの猫になってしまうことだ” (「かわいい子猫ちゃん」アイザック・アシモフ) アンソロジー『魔法の猫』の続編。「猫」を広くネコ科の動物として編まれている。クーガーあり、ジャガーあり、レパードあり。アシモフをはじめフリッツ・ライバー、タニス・リー、リリアン・ジャクスン・ブラウン、アーシュラ・K・グィン、ジョン・コリア…など豪華な顔ぶれ。犬にはかもしだせない猫独特の雰囲気がある。 | 
							
							
								
									| 2002/01/23-9400 | 
								
									| NEW YORK SEPTEMBER 11 | MAGNUM PHOTOGRAPHERS | powerHouse Books | First Edition, 2001 | 
											毒毒度:3 | 
								
									| “You felt the horror and you imidiately, instinctly understood as soon as the tower collapsed that would never be the same again.” (STEVE McCURRY) Amazonで注文してすぐ日本語版も出たが、初版は売リ切れと聞く。こちらは予定より数週間遅れで配送されてきた。2001年9月11日。静寂に埋もれるワールド・トレード・センターのロビー。自分たちの宝石が脅威にさらされ失われてゆく瞬間をカメラはとらえる。FAREWELL TO THE TOWERS…そして在りし日のNYの風景には、住んだことのない人間でさえも胸を締め付けられる。 | 
							
							
								
									| 2002/01/22-9401 | 
								
									| 血のごとく赤く--幻想童話集 | タニス・リー 木村由利子・室住信子 訳
 | ハヤカワ文庫FT | 1997年4月30日発行 | 
											毒毒度:2 | 
								
									| “人間たちの最初の一人がわたしを思ったその日にわたしは生まれた。人間たちの最後の一人がわたしを忘れる、その日にわたしは死ぬだろう” ダーク・ファンタジイの女王と呼ばれているらしい。倉橋由美子に似た題材と作風である。今までアンソロジーで何度も出会っているのだが、女性と意識したことはなかった。ひとりぼっちの神は残酷で、「白雪姫」も「シンデレラ」も邪悪である。「いばら姫」は暗鬱だし、9つのお話のうちハッピーエンドは稀である。加藤俊章のイラストレーションが美しい。 | 
							
							
								
									| 2002/01/21-9402 | 
								
									| スポーツ版裏町人生 | 寺山修司 | 角川文庫 | 1983年8月25日初版発行 1993年2月28日改版三版発行
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											毒毒度:1 | 
								
									| “勝者にはなにもやるな” 章題にヘミングウェイの言葉が引用されていたので、迷わず購入。競馬、ボクシングの世界が描かれている。ありそうななさそうな、本当のようでいて嘘のような話である。苦い。痛みがある。人生はミステリイ、ホラーに満ちている。 | 
							
							
								
									| 2002/01/21-9403 | 
								
									| クリスマス・ツリー | ジュリー・サラモン ジル・ウェーバー/絵
 中野恵津子 訳
 | 新潮文庫 | 2000年12月1日発行 | 
											毒毒度:-2 | 
								
									| “この街は、われわれの宝石だ--美しいけれど冷たい” ニューヨークのクリスマス。ロックフェラー・センターの造園管理をしている「わたし」が、いかにしてその年のクリスマスツリーに出会ったか。シスター・アンソニーが、その昔アンナという少女だったとき、修道院の敷地で、「トゥリー」と会ったことがそもそものはじまりだった…。電車で読んでも泣くまでには至らない、それほど危険ではない本。 | 
							
							
								
									| 2002/01/20-9404 | 
								
									| 「禍いの荷を負う男」亭の殺人 | マーサ・グライムズ 山本俊子 訳
 | 文春文庫 | 1985年3月25日第1刷 | 
											再 毒毒度:2 | 
								
									| “古き焔の痕跡をわれは見る” 昨晩コンビニでついうっかり2002輸入車オールアルバムなるものを買ってしまい、右ハンドル、マニュアル、できれば小ぶりのスポーツカーという厳しい条件に合うのは輸入車であればイギリス車しかないということを再度確認した。ロータス・ニューエリーゼはフェイスがちっと惜しい。走りの評判はイマイチで値段も高いがエクシージなら? …というカンジにどっぷりイギリスである。さてお気に入りグライムズのパブ・シリーズ第1作は、2000年の2月28日に既読だが、昨日第2作を読んだことで気になってしまい再毒。誰かを何かにたとえる絶妙なる表現にニヤリ。そしてジュリーの眼を通して女性のさりげない美しさを讃える詩心も。 | 
							
							
								
									| 2002/01/19-9405 | 
								
									| 「化かされた古狐」亭の憂鬱 | マーサ・グライムズ 青木久惠 訳
 | 文春文庫 | 1985年11月25日第1刷 | 
											   毒毒度:1 | 
								
									| “今日のある部分が、あの老女によって救われた。スコットランド・ヤードに勤めて二十年、人間の澱(おり)、淀みを見つめてきたジュリーだが、ニヒリストにはなりきれなかった。 本当のイギリス人。それはジュリーにとって、いまだに最高の賛辞だった”
 北海と荒地の割れ目に横たわるラックムア村。十二日節の前夜祭、タイタス・クレール卿の仮装パーティの客が殺された。ジェマ・テンプルというその女性は、十五年前から行方不明のクレール家の被後見人ディリス・マーチだと主張していたという。過去がこだまする「化かされた古狐の領主屋敷」で、ヨークシャー警察からの要請で出動したリチャード・ジュリー警部と、クレール卿の招待客メルローズ・プラントの推理がはじまる。長身で頼りがいがあり、あらゆる年代の女性をとろかす笑顔の持主リチャード・ジュリー。金髪に魅惑的なエメラルド・グリーンの瞳を持つ元貴族メルローズ・プラント。どちらも独身。メルローズは〈オールド・ペキュリア〉とフランス文学。ジュリーも文学の素養十分で、ヴェルギリウスが好みだったりする。この二人だけでも女性ファンには十分すぎるほどのサーヴィスと思うが、第一容疑者としてクレール家の次男ジュリアンという美貌の青年をも惜しげもなく登場させたシリーズ第2作。「失踪者の帰還を巡って遺産相続のゴタゴタが起ったあげくの殺人」という点で、イギリスらしい話である。母親に捨てられた少年バーティー、家族同様の愛犬アーノルド、画廊のぶち猫など、子供と動物のイキイキした動きの描写はいつもながらお見事。
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									| 2002/01/18-9406 | 
								
									| さよならは言わないで(下) | ロバート・ゴダード 奥村章子訳
 | 扶桑社ミステリー文庫 | 1994年10月30日第1刷 1998年8月20日第4刷
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											   毒毒度:0 | 
								
									| “空が落ちてくる” 無罪を証明しようとするスタッドンの奔走は報われず、コンスエラに死刑判決が下った。処刑の日までわずかとあって、焦るスタッドンだが、ヴィクターが毒殺され、容疑者として逮捕されるはめになる。このままコンスエラも自らも救うことはできないのだろうか?ええい、まだるっこしい! 奔走しながらも成果を出せず、あれこれ思い煩い、ひとたび決心したときには実は決定的な失敗をやらかすという主人公の愚かさに胸やけ気味。一人称が饒舌すぎるせいか。哀切極まりないとの結末は陳腐。揺さぶられないなあ。
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									| 2002/01/17-9407 | 
								
									| さよならは言わないで(上) | ロバート・ゴダード 奥村章子訳
 | 扶桑社ミステリー文庫 | 1994年10月30日第1刷 1998年3月20日第4刷
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											   毒毒度:0 | 
								
									| 建築家ジェフリー・スタッドンの出世作クラウズ・フロームの屋敷で起きた殺人事件。美貌の人妻コンスエラが夫のヴィクター・キャスウェルに毒を盛り、同席していた姪が死亡したのだ。実は建築家と依頼人の妻という立場で出会った13年前、スタッドンはコンスエラと恋に落ち、駆け落ちまで約束した仲だったのだが、野心からコンスエラを捨てた。罪悪感が再びスタッドンを襲う。コンスエラが人を殺せるわけはないと独自の調査をはじめるのだが…。 うーん。ページを繰る手は止められないけれど、ゴダードとしては凡作なのでは? ちょっと俗っぽい雰囲気がこの出版社好みだったかも。
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									| 2002/01/13-9408 | 
								
									| 「鎮痛磁気ネックレス」亭の明察 | マーサ・グライムズ 吉野美恵子 訳
 | 文春文庫 | 1986年12月10日第1刷 1993年5月25日第3刷
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											   毒毒度:1 | 
								
									| “あのくそいまいましい曲を聞いたとき、すぐわかってよかったはずなんだ” 警視に昇進したジュリーの休暇がまたふっとんだ。事件が起きたのはロンドンから40マイルのリトルボーン。犬がくわえてきた指。森のなかの見知らぬ死体。パブで行われていた「魔法使い」のゲーム。一年前の宝石盗難事件。謎の地図。そういえば地下鉄の駅で何者かに襲われ昏睡状態のケイティ・オブライエンとの関連は?風変わりな少女と動物。ことごとく感じの悪い貴族一家。魅惑的な未亡人。メルローズははじめて出会った作家ポリー・プレイドの菫色の瞳が忘れられないようだが、彼女自身はジュリーの魅力にゼリーのごとくとろけかけているようだ。世の中うまくいかない。
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									| 2002/01/12-9409 | 
								
									| 蒼穹のかなたへ(下) | ロバート・ゴダード 加地美知子訳
 | 文春文庫 | 1997年8月10日第1刷 1997年11月30日第4刷
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											   毒毒度:2 | 
								
									| “わたしの生まれ、わたしの人生、わたしの家族、そのすべてがひとつの嘘の上に築かれた。” そしていよいよイギリス的展開、つまり同性愛の発覚がある。にこやかな笑顔に隠された嘘。わたしはなぜ騙されたのだろう。ひとつの歪んだ悲しい人生の中で、一体わたしの役割は何だったのか? そのひとつの命を救いさえしなければ、すべての殺人は起こりえなかったという事実を知らされるハリー…。殺人者の秘密が意外に早く暴かれて行く点に注意しなければならない。ゴダードは読むに値しない場面をひとつとして用意してはいない。読み流していると、不意を衝かれて愕然とするだろう。そしてラストはちょっぴり粋なはからいが。巧いなあゴダード。
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									| 2002/01/10-9410 | 
								
									| 蒼穹のかなたへ(上) | ロバート・ゴダード 加地美知子訳
 | 文春文庫 | 1997年8月10日第1刷 | 
											   毒毒度:1 | 
								
									| “機転がきいて頭がよくて沈着果敢。それらを失ったのは正確にはいつだったのか?” ハリーに好意を持ってくれた女性ヘザーが、失踪した。殺人容疑をかけられたハリーは、謎を追ううちに故国イギリスへと旅立つことになる。読みはじめはロードス島が舞台で、しかも主人公が冴えない肥満で初老の男なので正直ガッカリしたのだが、失踪事件の謎を追って10年振りに故国イギリスの地を踏んでからは俄然面白くなった。友情と欺瞞、嘘と真実、愛憎、陰謀…極めて何でもありのイギリス的展開になってくる。ゴダードは、イギリス紳士の理想像を極めて巧みに描ける作家だと思う。 | 
							
							
								
									| 2002/01/08-9411 | 
								
									| 闇に浮かぶ絵(下) | ロバート・ゴダード 加地美知子訳
 | 文春文庫 | 1998年2月10日第1刷 | 
											   毒毒度:1 | 
								
									| “死者は嘘をつくことも真実を語ることもできない” 運命の歯車。二転三転。ジェイムズがサー・ジェイムズ・ダヴェノールと認められてからの展開はやや冗漫。最後に残された恐ろしい秘密も、ははぁなるほどねとあんまり驚けない。結局ジェイムズが誰だったかよりも、ファム・ファタルが誰だったのかということだ問題は…。 | 
							
							
								
									| 2002/01/06-9412 | 
								
									| 闇に浮かぶ絵(上) | ロバート・ゴダード 加地美知子訳
 | 文春文庫 | 1998年2月10日第1刷 1998年3月5日第2刷
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											   毒毒度:2 | 
								
									| “もうわかっただろう、トレンチャード? わたしの家族のことなど捨てておけばいい。これはわれわれのあいだの問題なんだ。コニーのために、わたしはあなたを滅ぼす覚悟でいる” 11年前自殺したはずの元婚約者ジェイムズと名乗る男性が出現した。思い乱れる人妻コンスタンス、嫉妬に狂う夫ウィリアム。しかもジェイムズは本来なら准男爵ダヴェノール家の跡継ぎ。怒りをあらわにするダヴェノール家。だが、ジェイムズの狙いは金ではなかった…。19世紀末を舞台とした、お得意の、「らしい」筋立てのゴシック・ミステリイ。冒頭の、映画を見るような場面展開、“そのことに関して彼は(彼女は、あるいは彼らは)まちがっていた”とたたみかける語り口がサスペンスフル。処女作『千尋の闇』2作目『リオノーラの肖像』も途中で止められない力作だったが、これはゴダードの3作目。屋敷と庭園、そしてイチイの木の迷路など舞台装置の数々。爵位だの遺産だのを巡る争いの炎が燻ってやがて火柱に変貌していく雰囲気が堪らない。
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									| 2002/01/06-9413 | 
								
									| ダーシェンカ | カレル・チャペック 伴田良輔 監訳
 | 新潮文庫 | 2000年10月1日発行 | 
											   毒毒度:-3 | 
								
									| “カメラを持っているなら、とにかく小犬を撮ってみることだ。小犬を飼っているなら、ぜひともカメラを持たなくては。そして運をためしてみるといい” 現在はどちらかというと猫派であるが、子供のときに犬を飼ったこともある。動物のでてくるお話が大好きだった、特に犬(猫が主役のお話は極端に少なかったのだ)。さて主人公は、ダーシェンカという名のワイアーヘアード・フォックス・テリア。チャペックの飼い犬イリスの生んだ小犬である。やんちゃなダーシェンカに作家は翻弄されながらもスケッチをし、写真を撮りまくり、ダーシェンカに聞かせるお話をも書いた。嬉しいときに千切れるくらい振る尻尾が切られているので、テリアは悲しいくらい表情が豊かになるという話ははるか昔にどこで読んだのだったか。写真で見る限りダーシェンカの尻尾は未だ切られてはいないようだ。この後どこかへもらわれていったようだが…。 | 
							
							
								
									| 2002/01/06-9414 | 
								
									| PAGES NORIYUKI TANAKA ARTWORKS | 企画・タナカノリユキ、藤崎圭一郎、藤原えりみ | 光琳社出版 | 1996年5月8日発行第1刷 | 
											   毒毒度:2 | 
								
									| “芸術は永遠かもしれないが、物質は永遠でないという考え方から言えば、音楽や詩は物質を媒介しないから非常に純粋性が高いけれど、美術には不純物が多い。彫刻や絵画はどうしても物質的なものだからね。そういう意味では、美術って不自由だなと思う。でも、その不純物が多いというギャップを僕はあえて引き受けていきたいんだ。” 腰巻きには20世紀最後の稀書との文字。本の中に本が19冊。タナカノリユキ作品集。掘り出し物ともいえるだろう。BOOK-OFFにて500円。 | 
							
							
								
									| 2002/01/05-9415 | 
								
									| 「老いぼれ腰抜け」亭の純情 | マーサ・グライムズ 山本俊子 訳
 | 文春文庫 | 1993年12月10日第1刷 | 
											   毒毒度:3 | 
								
									| “とどのつまり、人生なんてみんなペテンなのだ。羊が草を食べている野原の夢を見て、目が覚めたらそこにはオオカミがいるのだ” “あのなかのだれかだと思うが、あんなふうに一人ずつやらないで、どうして全員に毒の入った杯を回していっぺんにやっちまわないんだろう。じゃあ、乾杯”
 警視ジュリーが結婚を申し込もうとしていた女性ジェーンが死んだ。自殺か、事故か? ひとり息子のアレックスを残して彼女は果して自殺するだろうか? 実は嫁ぎ先ホルズワース家ではジェーンの夫も含めて何人もの人間が事故や自殺で亡くなっていた。殺人容疑で停職となったジュリーのために、メルローズは私設の図書館員としてホルズワース家に潜入するが…。暗いテーマではあるが、グライムズは、置き去りにされた子供へ、物いわぬ動物たちへ、家族から変わり者と呼ばれる老人へ、あたたかい眼差しを注いでいる。11歳の超一流料理人ミリー、黒猫ソーサラー、お茶目なレディ・クレイなど生き生きした脇キャラが魅力的だ。
 …はいいのだけれど、訳者あとがきで作者名がすべて“グライズム”になっていて興醒め!
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									| 2002/01/05-9416 | 
								
									| クレーの贈りもの | コロナ・ブックス編集部・編 | 平凡社 | 2001年11月28日初版第1刷発行 | 
											   毒毒度:-4 | 
								
									| “色は、私を捉えた。自分のほうから色を探し求めるまでもない。私には、よくわかる。色は、私を永遠に捉えたのだ” クレーの色。クレーの青。クレーの赤。ヴァイオリン独奏曲のように描く。贈りものの真髄。 | 
							
							
								
									| 2002/01/03-9417 | 
								
									| 「五つの鐘と貝殻骨」亭の奇縁 | マーサ・グライムズ 吉野美恵子 訳
 | 文春文庫 | 1991年3月10日第1刷 | 
											   毒毒度:2 | 
								
									| “亡霊にも似た、はかないエレガンス、美の名残り、砕け散った過去。” 休暇中のリチャード・ジュリー警視が友人メルローズ・プラントを訪ねると、待ち構えたかのように殺人事件が発生した。うずまく悪意、妬み、嫉み、スキャンダル、売れる本の秘密…一方で思いきり救われるユーモア、辛辣さ、洒脱、村の春を彩る花々や愛すべき動物たちの描写…私の理想の英国ミステリイがここにある。貴族のお屋敷、サマーハウス、パブや骨董店や古書店をめぐってロング・ピドルトンの珍人たちを紹介していく手際のよさ。キイワードは古い遊戯唄。萩尾望都『ポーの一族』の中の短編「ピカデリー7時」でも使われている(もちろんここで寄り道毒書にはしったのはいうまでもない)。おなじみのシリーズだが、もはや全冊新刊で揃えることはかなわない。やむなくBOOK-OFFに頼ることとなるだろう。 | 
							
							
								
									| 2002/01/02-9418 | 
								
									| トーテム | デイヴィッド・マレル 喜多元子 訳
 | ハヤカワ文庫NV | 1987年4月15日発行 | 
											   毒毒度:1 | 
								
									| “自分たちの聖域を夢み、眼下にひろがる町での饗宴を思い描いて、渇望のうめきを洩らしていた” ひき逃げされたと思われるヒッチハイカーの死体がモルグから消えた。噛みつく少年の出現。これは狂犬病よりも強力なウィルスなのか? 平穏な田舎町ポッターズ・フィールドは今やパニックに陥った。警察署長、検屍医、ジャーナリスト…一度は挫折した男たちが、恐怖と謎に挑む。キング『呪われた町』に触発された人狼伝説。ハヤカワモダンホラーセレクションの記念すべき初回刊行作。マレルは『ランボー』の原作者として知られるが、時折ホラー短編でゾクリとさせてくれる作家である。 | 
							
							
								
									| 2002/01/01-9419 | 
								
									| らくだこぶ書房21世紀古書目録 | クラフト・エヴィング商會 | 筑摩書房 | 2000年12月10日初版第1刷発行 2001年1月30日初版第2刷発行
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											   毒毒度:-3 | 
								
									| “出前なるものは『30分以内に必ずお届けします』などというものであってはならない。『いつくるのかわからない』。これが〈出前〉の真骨頂である。” (書名/出前、著者名/河原屋三十二、版元/大函小函書房、刊行年/2040年) 萌木色の表紙に砂色の文字。この本自体の装幀の美しさ、未来から砂と共に送られてきた古書目録という趣向もさることながら、ひと月に一度、一回につき一冊注文できるという個々の本の装幀が見事。2001年の出会いとたくさんのさよならを抱きしめて。2002年に出会える未来の本たちへ、ハッピーニューイヤー。
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