●あと10000冊の読書(毒読日記)  ※再は再読の意 毒毒度(10が最高)

2002-05

2002/05/31-9313
ローマ人の物語1
ローマは一日にして成らず(下)
塩野七生 新潮文庫 2002年6月1日発行
   毒毒度:2
“われわれは、美を愛する。だが、節度をもって。われわれは、知を尊ぶ。しかし、溺れることなしに。われわれは、富を追求する。だが、これも、可能性を保持するためであって、愚かにも自慢するためではない。アテネでは、貧しいことは恥ではない。だが、貧しさから脱出しようと努めないことは、恥とされる”

民主政体を十分に機能させるのに、民主主義者である必要はない。きっぱり言われて目を覚ます。そう、はっきり言ってしまえば一番の理想は、抜群のバランス感覚に恵まれた品格ある独裁者の統治か(ただし、このような人物は稀である)。昼は久しぶりに独りで「樹の花」へ出かけ、古人に思いを馳せたのだった。かくして美しく悲しい5月が終わる。

2002/05/31-9314
ローマ人の物語1
ローマは一日にして成らず(上)
塩野七生 新潮文庫 2002年6月1日発行
   毒毒度:1
“ディオニッソスによれば、狂信的でないゆえに排他的でもなく閉鎖的でもなかったローマ人の宗教は、異教徒とか異端の概念にも無縁だった。戦争はしたが、宗教戦争はしなかったのである”

そして、ローマ人は、法律へと向かった。人間の行動原則の正し手を法律に求めたのである。ちなみにユダヤ人は宗教に求め、ギリシア人は哲学に求めた。待望の文庫化開始! 昼休みに収穫したのだが、K造社のレジにいた年配のご婦人は、「文庫になって良かったですねぇ」と言いながらカバーをかけてくれた。ええ、ほんとに!

2002/05/30-9315
ボーン・マン ジョージ・C・チェスブロ
雨沢 泰 訳
文春文庫 1991年4月10日第1刷
   毒毒度:2
“ここは自由の国だ。失敗したり、飢えたり、病気にかかって家を失うのも自由なんだ。そりゃたしかに死なないようにはしてくれるさ。だがこの街で失敗すれば、とことん落ちぶれてしまう。生存するだけの物はくれるが、そのかわり自尊心をとりあげられちまう。この社会は人を死なせはしないが、死にたい気分にさせるんだ”

ニューヨーク。ボーンと呼ばれるホームレス。なぜか大腿骨を携えている。目下のところ連続殺人の容疑者だが、記憶喪失のかれには、その容疑を晴らせる見込がない…。EQMM90年代ベストミステリー『夜汽車はバビロンへ』収録のチェスブロ作「名もなき墓」に惚れたのが2000年10月。この長編は読みやすい。連続殺人犯が早々にわかってしまうが、凡庸なヒロインを除いて、記憶喪失の主人公、脇キャラはなかなか魅力的。サイコ流行りの90年代初頭に翻訳が発行された当時、社会派というレッテルに邪魔され、作品の質は高いのに売れてはいないようだ。

2002/05/28-9316
誘惑の巣 ウィリアム・ヘファナン
岩瀬孝雄訳
ハヤカワ文庫HM 1997年2月28日発行
   毒毒度:1
“警官にとって最も恐ろしいのは殺された警官を目にすることだ”

父親は上院議員、自身も優秀な警部が、惨殺死体で発見された、手足を縛られ、肛門には未だ動いているバイブレータが突っ込まれていた。市長の特命を受けたポール・デヴリン警視の捜査線上に、国連の秘密クラブの存在が浮かび上がる…。アメリカ探偵作家クラブ賞受賞作なのだが、真犯人はすぐわかるし、目新しさがあるわけではない。実はサイコもの全盛期に第1作『殺しの儀式』を読んでいるのだが、あの時の連続殺人を解決したのがポール・デヴリンという名だったとは、解説を読むまで気がつかなかった。そういえば、容疑者と捜査側が事件の渦中でデキてしまうパターンが第1作にもあったが。

2002/05/27-9317
アメリカン・ミステリの時代
終末の世界像を読む
野崎六助 NHKブックス 1995年10月25日第1刷発行
   毒毒度:2
“精神をスポイルし、操り、空白にして、最後に肉体ごと破壊し尽くす。こうした徹底した人格の蹂躙、人間破壊工作の描写の連続が読者に与える嫌悪感は、およそ測定が不可能ともいえる。存在そのものが犯され、そして内部から血みどろに解体される”(「帝国は終滅しない」)

このあたりで誰かに考えてもらおう…というわけでひと昔(今は5年か)前の評論を選ぶ。エルロイ言及部分に興味があったのはもちろんだが、ダン・シモンズ『殺戮のチェス・ゲーム』にかなりのページが割かれていて思わぬ収穫。D・リンジー作品に正当な評価を下している点も、信用できそう。

2002/05/26-9318
イブの贈り物 山際淳司 ほか 講談社 1991年11月13日発行
   毒毒度:-1
“いつか誰かに話してみようと思いながらもそのきっかけがつかめず、そのうちに時間もたってしまい、ついには誰にも話さずに終わってしまう…そういう話が誰にでも一つや二つ、あるものだ”
(山際淳司「イブの贈り物」)
“その夜だけは、ひとりでいるのいやなの”(高見恭子「夜(イブ)」)

この2週間ほど、C市内にある古本屋にしばしば出入りができ、収穫を重ねている。BOOK-OFFのように削ってピカピカではないが、2階の隅で発掘したウィリアム・モリスの例もあり、私にとって掘り出し物がある処という認識。エドナ・ブキャナンの『マイアミ犯罪白書』と野崎六助『アメリカン・ミステリの時代』で迷って後者を選んでレジを済ませ外に出たところで、山際淳司の名前を発見。出版は1991年だが、懐かしい80年代後半の香りがするクリスマス・イブ・オムニバス。山際淳司・安西水丸・秋元康らがアメリカあるいはニューヨークのクリスマスを書き、安珠が鷲尾いさ子を撮り、電通のCD杉山恒太郎がいかにもな世界を展開し、松本伊代が少女の夢を書き、高見恭子が彷徨う都会の女を書く。あのころの雑誌は12月になるとこんなカンジの特集を組んだものだった。

2002/05/25-9319
ファンタジイの殿堂
伝説は永遠に1
ロバート・シルヴァーバーグ編
井村君江 編訳
ハヤカワ文庫FT 2000年10月15日発行
   毒毒度:1
“「たしかに生まれついての術は持っていた」とアルヴィンは言った。「しかし、その使い方は知らなかったし、いつ、そして、なぜ使うかも知らなかった。やがて作ること自体が好きになった。手の中の気や石の感触が好きになり、それから、そのものの内部を見ることを、それがどう感じるかを感じとり、それがどんな働きをするかを知り、何がそれを結合させているか、そしてそれをどんな適切な方法で分離させればいいのかを学んだ」”(オースン・スコット・カード「笑う男」)

吸血鬼とゾンビが出演するマカロニ・ウエスタン「エルーリアの修道女」(キング『暗黒の塔』)や、発掘中の神殿での殺人事件を教皇ヴァレンタインがポアロよろしく名推理する「第七の神殿」(シルヴァーバーグ『マジプール』)、最後に悪がとっちめられる水戸黄門的な「笑う男」(カード『アルヴィン・メイカー』)、大量殺人の真相は?という真冬の夜の小話「薪運びの少年」(フィースト『リフトウォー・サーガ』)を収録。
ロバート・シルヴァーバーグ編による、人気ファンタジイ外伝書き下ろしアンソロジー。各本編を未踏としている私だが、よく考えると『グイン・サーガ』も『銀英伝』も外伝から入ってどっぷりはまったことだし、気に入ったキャラがあったら本編読めばいいじゃん…と軽く考えることとした。人狼ものや吸血鬼ものの傑作を生んでいるジョージ・R・R・マーティンが第2巻に控えているので楽しみ。(と書いたが実は第2巻は既毒だったことがわかる。やれやれ。)

2002/05/23-9320
銀色の恋人 タニス・リー
井村君江 編訳
ハヤカワ文庫SF 1987年7月31日発行
1995年3月15日6刷発行
   毒毒度:-3
“薔薇はほかの名前で呼んでも その本質にはかわりがない”
“ふいに自分の思いのいまわしさと狂おしさが、驚愕した心の目の前にありありと浮かびあがってきた。わたしは機械を愛した。愛し、信頼し、自分の世界のいしずえをその上に築いた”

恋人の名はシルヴァー。銀色の肌に赤褐色の髪。悲劇は、かれがあまりに人間に近しい存在だったことだ。驚くべきことに、かれは魂を持っていたのだから…。アンドロイドが出てくるのでSFとされているタニス・リーの傑作ラブ・ロマンス。
せつないなー、こーいうのは。
ところで気になるのは作品がチェルシー・クイン・ヤーブロに捧げられていること。

2002/05/21-9321
ケルト幻想物語 W・ B・ イエイツ編
井村君江 編訳
ちくま文庫 1987年8月25日第1刷発行
1995年10月10日11刷発行
   毒毒度:-1
“空は燃えているし、天体も燃えている。薮は燃えても滅びはしない。「聖霊」は炎の舌に包まれ、使徒たちの上に起き上がってくる”

伝承ものの常として、凄いことがあまりに淡々と書かれていたり、巡り巡るしつこさがあったり、結構悪魔がマヌケだったりして笑えるんである。

2002/05/20-9322
死の裁き エドナ・ ブキャナン
鴻巣 友季子訳
扶桑社ミステリー 1996年6月30日第1刷
   毒毒度:1
“マイアミの灼けるような夏と狂気に、なぜかわたしは力が漲る”

女性記者ブリット・モンテーロ・シリーズ第2作。過去に罪を逃れた容疑者が次々と事故死する事件を追いつつ、マイアミのキャリアウーマンを恐怖に陥れるレイプ犯との邂逅…マイアミの夏は相変わらず波乱にとんでいる。慌てて礼服を買った日、閉店直前の古本屋にて、巡り合った本。とりあえず今日から仕事に戻った、とりあえず規則正しい生活をしてみることとする。で、本なんだな、おまえは。

2002/05/19-9323
英国生活誌I 復活祭は春風に乗って 出口 保夫 中公文庫 1994年10月18日発行
   毒毒度:-3
“イギリス人ほど単純明快を尊び、偽善や美辞麗句を嫌う国民はないともいう”

とするとイギリス流「直截」だったのか、あの性格は。そして豊かな人生だったと思う。

2002/05/17-9324
ファントム(下) ディーン・R・クーンツ
大久保 寛訳
ハヤカワ文庫NV 1988年8月31日発行
   毒毒度:-2
“われわれは自分たちのなかにいる怪物以上に恐ろしいものに出会うことはけっしてないだろう”

不謹慎。母の通夜に、ひとり、棺の側で読むとは。よりにもよって、こんな本とは。ムルソーのごとく私は非難されるに違いない。なにかを見るにつけなにかを思い出す。頭の中は思い出の渦である。母は5月13日朝、急性循環不全で亡くなった。たしかにパーキンソンという病ではあったけれども、いまは予期せぬ死。私たちは長期療養を覚悟こそすれ、見舞客の風邪が院内にまん延したのを発端に母が死に至るとは想像していなかった。私がこの2ヵ月ほど風邪をひき面会を遠慮していたのが今となっては悔やまれる。会話をほとんどしていない。本人はこの半年ほど覚悟をしていて、棺に入れる着物にも注文があったようだが、まともにとりあわずにいた。あの着物で良かったのかどうか、果して…。

2002/05/12-9325
ファントム(上) ディーン・R・クーンツ
大久保 寛訳
ハヤカワ文庫NV 1988年8月31日発行
2000年5月15日15刷発行
   毒毒度:1
“スノーフィールドは、疑いなく死んでいる。もはや町ではなかった。墓地だった。”

12年ぶりに再会する妹リサをむかえに行ったジェニー。ジェニーの住むスノーフィールドで、二人の生活がはじまるのだ。が、戻ってみると町は死んでいた。惨殺された死体が次々発見される。500人もの住民が一度に殺されたのだろうか? 太古からの敵の来襲なのだろうか?
思いついてのクーンツ。朝飯前に読める。デカい蛾が登場するため、かろうじて毒毒度はプラス1点。

2002/05/11-9326
文人悪食 嵐山光三郎 新潮文庫 2000年9月1日発行
   毒毒度:5
“鏡花は、自らの作品を食い、唯一それのみが鏡花の嗜好であった”(泉鏡花〜ホオズキ)
“料理は人を慰安する” (檀一雄〜百味真髄)

文人は、色に奔るか食に奔るか。550ページ余。参考文献700余冊、完成まで実に5年。ものの見事に濃い。翻訳物の3倍時間をかけて毒了。久々大ヒットの毒である。最近でいえば『エンディミオン』に匹敵するポイントの高さである。ピーナツ食べて亡くなった漱石、饅頭の茶漬け!を好んだ鴎外、病魔に侵されてもなお過食症の子規、粗食淫乱の藤村、食魔岡本かの子、イメージをくつがえすほどとんでもない乱暴もの中也…食にこだわる文人たち、その生と死はどんなホラーにもまさるインパクトである。当時のゴシップも豊富で、それだけ読んでも十分面白い。

2002/05/07-9327
雪の死神 ブルジット・オベール
香川由利子訳
ハヤカワ文庫HM 2002年2月15日発行
   毒毒度:3
“人生は、予定された展開や著者の名言を組み込んだ小説のように書かれたりするものじゃない”

世界一非力なヒロイン、エリーズ。前回の事件を綴った小説のおかげで、今や人気者。介護人のイヴェットと共にリゾートへ出かけ、雪に閉ざされた山荘で、再び事件に巻き込まれる。偏執狂的なファンが、血のしたたるステーキ肉を贈ってきたのだ。イヴェットと夕餉にしたエリーズだったが、実はそれは人肉だった?! 
前作と毒毒度は同じにしたのだがううーん。ニュアンスはちと違うんですよね。スーパーゲロゲロホラー『ジャクソンヴィルの闇』で、自分の好きなもの(げ〜)すべて見せちゃった書いちゃったオベール自信満々です。実家が映画館で、大の映画好き。映画的でもあり、舞台劇の要素もある。一体、20もの死体の山が築かれる本格ミステリなんて存在するのだろうか??? 解説は久美沙織。

2002/05/06-9328
森の死神 ブルジット・オベール
香川由利子訳
ハヤカワ文庫HM 1997年6月15日発行
   毒毒度:3
“植物人間の人生がこれほど目まぐるしいものだなんて、いったいだれが信じるだろう”

テロに巻き込まれ、恋人を失い、自身も全身麻痺となったエリーズ。話すことも見ることもできない彼女はある日ヴィルジニーという少女と知り合う。ヴィルジニーはエリーズに幼い男の子を殺す「森の死神」の話をはじめた。驚くべきことにその話は事実であり、やがてエリーズは事件へと巻き込まれていく。しかしエリーズにはなすすべがないのだった…。
スーパードロドロホラー『ジャクソンヴィルの闇』の作者の、真っ当なミステリ。幼い男の子ばかりを狙う連続殺人鬼の正体は? 犯人が誰かはまあ途中でわかるのだけれど、エリーズとの関連性が意外、なるほどそう来たか。さすがフランス? 

2002/05/05-9329
六道ヶ辻
ウンター・デン・リンデンの薔薇
栗本薫 角川文庫 2000年3月25日初版発行
   毒毒度:2
“ただ私達は境界を超えるのだ”

シリーズ第2作。実は第1作は未毒。だが時代的には遡っての話であるという。滅亡へと至った大導寺一族。その呪われた歴史にも名の残らない人物がいた。その名は大導寺笙子。青渓女学院に通っていた彼女は、大輪の薔薇のような同級生、向後摩由璃に秘かな恋心を抱いていた…。恋は成就されたかに見えたが、笙子の心も身体も越えてはならない処へと導かれていく。やがて惨劇が。
カバー絵の薔薇が目を惹く。ちょうど今盛りとなったわが家の薔薇に似ている。朱に近い赤。灯ともし頃である。先ほどから赤ワインのソーダ割りを飲っている。テニスコートに人影がなくなり、鴬たちも塒に帰る。それでもテラスに読書灯を持ち出して毒了。そういえばその昔、ファンクラブを作ってくれた子の名が「まゆり」だったか。

2002/05/05-9330
殺さずにはいられない2 オットー・ペンズラー編
小鷹信光・他 訳
ハヤカワ文庫HM 2002年4月30日発行
   毒毒度:2
“そう神は存在しない、だからライフルの照準器を通そうが通すまいが、われわれはみんな死ぬ”(「ヴァンパイア」ジョイス・キャロル・オーツ)

ファム・ファタル。夫の命を盗むヴァンパイア女、肖像画に恋した男を手玉にとるビッチ…。読まずにはいられないタイトルで迫るジョイス・キャロル・オーツ、変幻自在のエリック・ヴァン・ラストベーダー(毎度ながら名前がコワイ)をはじめとして読ませる作家がずらり。買いである。解説で気になるのはエド・マクベインの別名でリチャード・マシスンと書かれているのだけれど、ホントか?? 確かに生年は同じなんだけれど。

2002/05/04-9331
殺さずにはいられない1 オットー・ペンズラー編
小鷹信光・他 訳
ハヤカワ文庫HM 2002年4月30日発行
   毒毒度:3
“ブルーに初めて会った時から、彼が死にかけていて、目の前から少しずつ漏れて行くように思えたことをシェリィに話した”
“たいていの人間は、成長して何かになり、それから死ぬ。だがブルーは、まるで何にもならなかったようだ。生まれた瞬間から、非常にゆっくりと死んでいくだけなんだ”(「犬を撃つ」デニス・ルヘイン)

4月の毒書数は、北海道巡業のある9月を除くと、今までで最低だったのではあるまいか。マキャモン『マイン』とストラウブ『ココ』をやっつけたので濃度的にはまあまあとは思うのだが。
少し曇りがちになった午後、テラスで読む殺人話。女たちが男のロマンをコケにするとき、男は女の首をしめたくなるものらしい。そう、お気に入りのフランネル・シャツや、特別な時に備えてしまっておいたカーボーイ・シャツを拝借されたりするときに。ご贔屓エリザベス・ジョージも、おなじみエドナ・ブキャナンもいるのだが、ジェイムズ・クラムリーの「メキシコの牝ブタと山賊」とデニス・ルヘイン「犬を撃つ」がとりわけ気に入った。後者は南部ものとしてはかなりいい感じ。間違っても中編や長編には膨らませてもらいたくないものだ。

2002/05/03-9332
じつは、わたくしこういうものです クラフト・エヴィング商會
写真・坂本真典
平凡社 2002年2月14日初版第1刷発行
2002年4月17日初版第2刷発行
   毒毒度:-4
“その図書館は小さな森の中にひっそりとあります。夜どおし開いています。場所は秘密”

大評判らしい。クラフト・エヴィング商會といえば「もの」とお話づくり専門と思っていたが、なんと今回の主人公は人間である。そして一風変わった職業の人たち…月光密売人からチョッキ食堂、シチュ−当番まで18人。聞いたこともない職業なのに、インタビューのような文章とリアルな写真によってわれわれはだまされる。あ、海辺の〈チョッキ食堂〉でチョッキを選んでごはんを食べたい。夏の間一生懸命働いて冬眠して好きな本を読みながら、〈冬眠図書館〉の司書の作るシチューが食べられたらなあ。もちろんチョッキのメニューやシチュー回数券などお得意のモノづくりも絶好調で、この素敵なファンタジーを盛り上げるのだった。ううむ、正体がわかってもホントにないかな〈冬眠図書館〉。それとも作っちゃうかな〈冬眠図書館〉。

2002/05/02-9333
tray のせる・はこぶ・おく 堀井和子 KKベストセラーズ 2001年10月25日初版第1刷発行
   毒毒度:-3
“出会いたいと思うこと”

データダウンロードの合間に、ページを繰る。突然ひらける非日常。実はGWの狭間に2泊3日会社の旅進行中。私は朝一回着替えに帰ったからまだまし、視界の隅には3泊4日検版の旅になりそうな人数名。GW初日の来客もてなしに、久々テラスでブランチなぞしたせいか、ちょっとハウススタイリング寄りの本選び。ふだんはわき役のトレーたちの写真&エッセイ。わき役・外伝好きの私にはぴったり? 毎日の食事だからこそのひと工夫。出会いたいと思う、自分で手がかりをつかんでアンテナを張る、足を使って自分の目でしっかり見る…気に入ったモノさがしのヒケツも大変参考になりましたとさ。というのも今、隠れ家に似合う電話器捜索中。キンキンピカピカは合わないのでね、どっちかというと昔の黒電話なんかいいかも。さて著者はJ大仏語出身の料理スタイリスト。写真も撮るし、イラストも描く。ちなみに、貝谷郁子というイタリア料理スタイリストもJ大だった。

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