●あと10000冊の読書(毒読日記)  ※再は再読の意 毒毒度(10が最高)

2002-06

2002/06/27-9289
穢れしものに祝福を デニス・レヘイン
鎌田三平 訳
角川文庫 2000年12月25日初版発行
   毒毒度:3
“パトリック。きみだ。なぜなら、きみはジェイを思い出させたし、若いころのわたしにも似ていたからだ。きみとジェイは、二人とも賢く、エネルギーがあったが、それだけではなかった。きみたち二人には、最近ではほとんどまれになった、情熱がある。少年のような情熱が。大小にかかわらず、あらゆる仕事に同じような熱意で取り組む。それは、探偵という職業だけでなく、仕事そのものを愛しているからだ。そのすべてを愛していた。きみたち二人がここで働いていた三ヵ月間、ここに来るのがほんとうに楽しかった。”
“この三十二時間で、わたしは撃たれ、猛スピードの車から投げだされ、肩甲骨にひびが入り、無数のガラスで傷つき、一人の人間を殺し、1パイントの血液を失い、焼けつくようなシンダー・ブロックの小部屋で十二時間の厳しい尋問を受けた。だが、どういうわけか、アンジーの暖かい頬に手を当てていると、この上なくよい気分になった”

そもそもやり口が強引だった。だがあの男の絶望とあの女の絶望に、わたしもアンジーも共感を持たずにはいられなかったのだ。しかしそのおかげでわたしたちは、本当に大好きだった人物を次々に失うハメになった。黒は白、上は下。怪物が怪物を創ったのだ。そしてあの女ときたら美しさも危険度も抜群だった。あの言葉でヘマをやらかしさえしなければ、あの女は完璧だったといえるのだが。
息子を犯して妻を殺し、抗争の元凶だったろくでなしを殺ったのがシリーズ第1作。何十年にもわたって続いていた快楽殺人の終焉を描いた第2作。そして再び人間性が問われる第3作。息もつかせぬジェットコースター的展開。アンジーとパトリックは二人とも愛するフィルを失い、何十年ぶりかで向き合うこととなる。今ではただのパートナーではない、そしてただの恋人でもない。サイド・バイ・サイドとフェイストゥーフェイス。この関係からも目が離せない。パトリックの映画好きも随所で楽しめるし。次が待ち遠しい。しかーし、文句もひとこと。「ゆいいつ」が3回ほど出て来るのだが、これって「唯一」の方が見た目自然ではない?

2002/06/26-9290
闇よ、我が手を取りたまえ デニス・レヘイン
鎌田三平 訳
角川文庫 2000年4月25日初版発行
   毒毒度:4
“あの男は書いた。問題は痛みだ、と。どれほど痛みを感じ、どれほど痛みを分けられるかだ、と。”
“このあたりでは、他のどんなコミニティよりも、美しさに価値があった。金もうけよりも、さらにむずかしいことだからだ”

ごく近しい者が受け取る写真。その後、残虐な方法で殺される被写体たち。裏の世界にようこそ、と闇が片手を差し伸べる。わたしの相棒アンジーと、アンジーの暴力亭主フィルと、わたしの関係もかなりややこしくなっていた。人は一度に二人愛せるから、いろいろややこしくなるのだ。
ボストンの私立探偵、パトリックとアンジー第2弾。こいつはリリカルなエルロイか。うう、重い。それでいて息つく暇もないほど急展開なのだ。恐るべきユーモアとシニカルな比喩の嵐。

2002/06/24-9291
ジャズメンとの約束 中山康樹 河出書房新社 2002年3月30日初版発行
   毒毒度:-3
“ブエノスアイレスの誰かさんが送ってくれたんだ”(とどけられた思い)

後味がいい文章だ。ボブ・グリーンのようでもある。約束を破るスタン・ゲッツ、ザッツ・スタン・ゲッツ。右手で“聴いた”“ビル・エヴァンス”の記憶。不機嫌なキース・ジャレットの謎…。
バーボン・オン・ザ・ロック。行間を読むとしよう。

2002/06/23-9292
イチロー語録 デイヴィッド・シールズ編
永井淳・戸田裕之 訳
集英社新書 2001年12月19日第1刷発行
   毒毒度:-2
“これはほめすぎだろうか? わたしはすぐれた運動能力にすぎないものに哲学的な意味を与えようとしていただろうか? 日本語から英語に訳される過程で、言葉が詩的な美しさを獲得したのだろうか?”
“Baseball is just baseball.(野球は野球ですから)”
“アメリカに来た理由の一つは、野球が楽しいスポーツだということを発見したかったからなんです”

原題を“BASEBALL IS JUST BASEBALL 〜THE UNDERSTANDED ICHIRO〜 ”という。2001年のシーズン前半、メディアに登場したかれの言葉が収録されている。エメラルド・シティに降り立ったICHIROがメジャー・デビューを果し、オールスターファン投票で1位を獲得するまで。ニカ国語同時収録というのはありがたい。

2002/06/23-9293
マイ・フィールド・オブ・ドリームス W. P. キンセラ
井口優子 訳・構成
講談社 2002年3月28日第1刷発行
   毒毒度:-5
“雨の多いシアトルは、緑が美しい。一瞬の間に駆け抜けた夏の雨の後は、光の精が街にも降りたってくる。そのためか、人々はシアトルを、「エメラルド・シティ」と、呼ぶ。
 昨年、少年の面影を残した細身のイチローが、光の精と共に、エメラルド・シティに降りたった”
“「技」だけなら、優れた選手は他にもいる。イチローの場合は、その「技」は、才能と努力と、野球への真摯な「愛」から生まれた。そのことが、私も含めたアメリカの人々のこころを強く捉えた”

ベースボールはアメリカ人にとって偉大な神。それぞれの「マイ・フィールド・オブ・ドリームス。」野球を観ること=想像することというキンセラ(映画「フィールド・オブ・ドリームス」の原作者)によるイチローとアメリカの物語。イチローがアメリカにもたらしたもの、それは野球が生まれた国の人々に改めて野球を観る楽しさを教えてくれたこと。巻末にはイチローと野茂の出る、その後の「フィールド・オブ・ドリームス」ショート・ストーリー付きである。キンセラは日本で言えば赤瀬川隼。野球を語って泣かせてくれるプロである、と同時にあまりに弱くて「サブ・マリーン」と呼ばれたころからのマリナーズ・ファン。「史上最低の球団」と呼ばれたころからのスワローズ・ファンの私としては、この姿勢には親しみが持てる。そして私を泣かすのは、キンセラが映画「フィールド・オブ・ドリームス」のどこで泣けるかと告白する場面だ。冒頭の、ただのトウモロコシ畑にも泣けるけど、そう、あのシーンなんだな、ファンタジーとしての素晴らしさは。「夢を求めてここにきたことには何の後悔もありません。もし夢を追い求めなかったら、きっと後悔したでしょう」というイチローの言葉に、キンセラはムーンライト・グラハムの存在を思い出すのだ。
ちょっとだけ文句を言わしてもらうとすれば、「眼光紙背」とか「判官贔屓」という訳の原語って一体なんでしょう? この部分には違和感があるのだが。キンセラのせいではないにしても。 

2002/06/22-9294
長編刑事小説 氷舞 新宿鮫VI 大沢在昌 光文社文庫 2002年6月20日初版第1刷発行
   毒毒度:-4
“いっぱい色んな思いをするっていうのは、それだけいっぱい不自由な思いもするし、手に入るものが多ければ、今まで大切にしていたものを待ち切れなくなって失くしちゃったりもする。それより何より、これがいつまでつづくかわからないっていうのが、一番、堪えるんだ”
“あなたはいつも自分に強いている。前へ、前へ、と。たとえその前が、どんなに苦しい選択でも、横やうしろにいくことは許さない”

月の前半はレヘインとクラムリイのディテクティブ・ストーリイ。後半はこうして和ものである。待ってましたの新宿鮫シリーズ。殺された元CIA。麻薬だけではない何か。それは逗子でのホテルオーナー殺しへ、12年前の議員自殺へ、さらに23年前のもうひとつの死へと繋がっていた。捜査を阻む「桜井商事」こと公安総務の影に、ひるむことなく、真直ぐに核心へと迫ってゆく鮫島。一方、人気タレントになりつつある晶とますます会えない鮫島が、出会ってしまったファム・ファタル、杉田江見里。直線と直線。一旦交わってしまえば、離れてゆくしか道はない。
おお、鮫島と晶にもついに危機が! 鮫島が恋をしてしまう。とはいえ濡れ場は一切ない。過剰な暴力もほとんどない。薮や桃井さんは相変わらずいい味。意外なところでは第1作でヤナキャリアの代表として登場した香田がけっこう人間的に成長したこと。よかったじゃんそれなりに。

2002/06/20-9295
ブルース 花村萬月 角川文庫 1998年9月25日初版発行
1999年10月10日8版発行
   毒毒度:4
“耳の奥でブルースが鳴った。LOVE IN VAIN…虚しい愛”
“音楽というのは切なくて、泣きたくて、愚か者のものなんだ”

読むブルースとな。たまらんぜ、萬月。なにが悲しくて、こんな小説を書く…解説では北方謙三が呻く。坂東齡人絶賛の花村萬月、毒読初登場。特異な風貌、特異な経歴。そして、過剰な、愛ばかりの小説を書く。言葉が迸る。後に生まれた馳星州はエルロイになりたいと言ったが、先んじて萬月はエルロイになっている。読む者の心にブルースの楔を打ち込んでいる。

2002/06/19-9296
洞窟の骨 アーロン・エルキンズ
青木久惠 訳
ミステリアス・プレス文庫 2000年12月15日初版発行
   毒毒度:-2
“でも今話しているのは旧石器時代が専門の人類学者ですから、意見を一致させるのは主義に反するんです”
“ジョリ警部は総じて科学者を買っていない。ほとんどが三つのカテゴリーにはっきり分類されると信じていた。グリッズのような高慢で人を見下すタイプ。モンフォールのように横柄で慢心しているタイプ。そしてボーピエールのように人はいいが、ぼんやりした間抜けなタイプ(これが圧倒的に多い)”

しかしわがスケルトン探偵ギデオンは、ジョリ警部によれば数少ない例外というわけらしい。仕事はできるし、ユーモアがあり、愛妻家。人の痛みもわかるし、美味しいものに目がない。考古学上の捏造事件が絡んだ殺人。行方不明者はふたり。誰が誰を殺したのか? あまりにすっきりと筋が通ったことにギデオンもジョリも納得が行かない…。スケルトン探偵最新作。わが国でも考古学上の捏造事件が問題となったが、なかなか引込まれる展開。舞台がフランスということもあり美食シーンも連発。

2002/06/18-9297
東京夜ふかし案内 散歩の達人ブックス 交通新聞社 2002年1月5日初版第1刷発行
2002年2月1日初版第2刷発行
   毒毒度:-2
雨の中のプレイ。観ている我々は飢え渇いていた。たった1点。サッカーの持つカタルシスを味わう。

2002/06/18-9298
東京 立ち飲みクローリング 文・写真 吉田類 散歩の達人ブックス 2002年1月5日初版第1刷発行
2002年2月1日初版第2刷発行
   毒毒度:-3
どうも今日のサッカーはよろしくなく、横目で見ながらこいつを再読。築地のPastisは従来の立ち飲みのイメージを漂わさず、なかなかスマートな店。椅子・テエブルもあり、座り飲みもできる。おすすめはパスタ。昼もランチをやっているが、断然夜のパスタの方が旨いとな。

2002/06/17-9299
レボリューション 斎藤 純 ハルキ文庫 1999年10月18日第1刷発行
   毒毒度:0
バンドー注目の斎藤純であるが…。1993年の作品に大幅な加筆修正を加えてあるとはいえ、今読むにはあまりに古すぎた。少しでも「歌う」ことにかかわった者としては、かなりこっぱずかしー部分がある。国内外モータースポーツに詳しかったゆえにどうしても海老沢泰久『F2グランプリ』を受け入れられなかったのと同じ理由で実は斎藤純『百万ドルの幻聴』(2000年10月毒了)には感動できなかったし、今もまた落ち着かない気持ちなのである。どう考えても、これは高揚とは違う。

2002/06/17-9300
東京伝説
呪われた街の怖い話
平山夢明 ハルキ文庫 1999年7月18日第1刷発行
   毒毒度:0
ニャンバーガーや、「ピアスの穴を開けた途端失明してしまいました」ノリの東京ショートショート集。それ以上のものではないし、こんなに薄く(250ペ−ジ)て600円というプライスは受け入れられないのではないか。BOOK-OFFで100円なら許されるかもと、毒書家の私ですら思うぞ角川くん。これでは芸が荒れちまう。

2002/06/16-9301
バンドーに訊け! 坂東齢人 実は 馳星周 文春文庫 2002年6月10日第1刷
   毒毒度:3
“年末進行をひいひい言いながら乗り切ったあとは、ほぼ一月に近い空白の期間ができあがり、うほうほ言いながら酒場に通い詰め、昼間は昼間で二日酔いの頭を抱えながらこれでもかこれでもかと読書にいそしんだのである。それなのになんということであろうか。読んだ本の内容をほとんど覚えていないのである。それだけつまらない本ばっか読んでたわけなのね。おれってばぁぁぁ!という哀しい心でこの原稿を書いているのである。くそっ。とても虚しいぜ、ベイベ” (時間を忘れて楽しめる『聖殺人者 イグナシオ』は凄いぞ)
“誰にも読ませたくない。全部買い取って火をつけて燃やして、ぼくだけが何度も何度もこの本を読み返す。そんな妄想が今も頭の中にある。”(真実のパンクスに胸が高鳴る!!思わず逆上してしまうくらいいいぞ)

先週師匠自作のスピーカーで聴いたAL DIMEOLAにはまり、早速amazonにて「エレガント・ジプシー」と、J・マクラフリン、パコ・デルシアとのライヴ「フライデイ・ナイト・イン・サンフランシスコ」を購入。後者はとにかく最初から最後まで休みなく良い。というわけで金曜日からさんざんMacで聴きながら仕事。ところで金曜は社内WC中継もあったため、この週末かなり気分は高揚しているMillet.Kです。
という「坂東齢人」風前振りはさておき、この本は小説家「馳星周」誕生の軌跡。この読み手の何が凄いって、前振りである。文庫1ページはゆうに超え、時には2ペー近いのである。しかも競輪の話題だったりする。その悪人めいた外見にもかかわらず、読み手としてのこの人にはいちいち親しみを感じる。引間徹『19分25秒』を、徹底無比にパンクを描いた傑作とし、坂東眞砂子の日本土着愛憎ホラーよりも篠田節子の世界が性にあうと言う。まさしく読書は個人的なもの。「本の雑誌」での守備範囲は和もの小説だったようだが、当然ながら翻訳ものも多数読んでいるわけで、クラムリィやエルロイの名がちらほら出てくるのも、ダン・シモンズにはまって「『ハイペリオン』のラストはなんだ!?ちっきしょー、早く続編を出してくれよぉ〜」と叫ぶのも、嬉しいとしか言い様がない。この人の書評は信じられる。手始めに花村萬月を責めるとするか。

2002/06/15-9302
蜃気楼の彼方
グイン・サーガ第85巻
栗本 薫 ハヤカワ文庫JA 2002年6月15日発行
   毒毒度:2
“かつての彼、それは明るくて、いい加減で、だが誰にでも好かれる、朗らかで、多少皮肉で、育ちのせいでずいぶんとがさつでもあれば荒々しくもあり、また幼い部分をも残していたけれども、人生を楽しみ、味わい、そして人生に夢をも理想をも、とてつもない野望をも抱いた若くて生き生きとした傭兵であった。”

イシュトヴァーンのマルガ急襲により、人質となったナリス。会談の場で、かつて辺境での冒険を共にしたグイン、リンダ、シュトヴァーンが再会することとなる。イシュトヴァーンの変ぼうぶりに驚くリンダ。和平交渉は決裂、リンダは指揮官としてナリス奪回の戦場へと旅立つ。初陣の傍らにはケイロニア王グインの姿があった。ホントは大沢在昌の新宿鮫シリーズ文庫最新刊を収穫すべく書店に入ったのだが、これに呼ばれた。おお、あと15巻かー。

2002/06/14-9303
心ひき裂かれて リチャード・ニーリィ
佐和 誠 訳
角川文庫 1998年9月25日初版発行
   毒毒度:1
“あなたがたは二人ともそれぞれヒューマン・ビーイング、すなわち人間として行動したにすぎないのだ”

精神を病んでいた妻ケイトが退院した夜、私の不注意から何者かにレイプされてしまった。近所で頻発しているレイピストの仕業と思われたが、担当のショー警部補はなぜか私に疑いを抱いているようなのだ…。『殺人症候群』の作者ニーリィの最高傑作とされているが、サイコ・スリラーの書き手としてわが国に紹介されるタイミングが悪く、結局、この作家は正当な評価を得ていない。これは1976年の作品で1980年に角川から単行本で出たものの1990年代サイコもの全盛期にはすでに絶版、ベスト100に挙げられていても誰も読めないという状態は読み手にも書き手にも不幸なことであった。そーきたかあと唸るような二重三重に衝撃的なラストのはずだが、登場人物がやたら少ないことや会話部分の訳文が古臭く感じられたりするので、印象はちょっと希薄。これも出版社の罪。

2002/06/13-9304
六道ヶ辻 大導寺一族の滅亡 栗本 薫 角川文庫 1999年8月25日初版発行
   毒毒度:2
“六道ヶ辻に迷うとも--次の輪廻は畜生道の化生と定まるとも--儂は構わぬ。後悔はせん--六道ヶ辻にいくたびこの身は迷うとも、六道能化の導きはいらぬ。儂は幾度なりとも畜生道に踏み迷い、天上界へは成仏せぬ”

第2作を先に読んでしまったシリーズの第1作。大導寺静音少年が、虫干しの箱の中から見つけたノオト。それは一族として存在すら知られていなかった大導寺響太郎の手記であった。ノオトに記された事件と、静音が巻き込まれる現代の事件が交錯していく…。

2002/06/12-9305
恐怖小説集 金曜日の女 森 瑶子 角川ホラー文庫 1996年4月10日初版発行
1999年1月10日7版発行
   毒毒度:-1
和ものなので時速200ページで毒破。かねがね森遥子の小説は、日常を描いたものほどホラーだと思っていたのだが、あらたまって「恐怖小説集」と名乗られると怖くないのはどうしてだろう。…と思ったら出典一覧を見て納得、なあんだ初見じゃなかったのね。角川らしい企画ですな。

2002/06/11-9306
真夜中の切裂きジャック 栗本 薫 ハルキ文庫 1997年4月18日初版発行
   毒毒度:1
失敗失敗。再読のつもりではなく読みはじめてしまったので全うすることとした。とうとうヤキがまわったか。

2002/06/10-9307
男は黙ってスポーツカー 吉田 匠 双葉文庫 1997年11月5日第1刷発行
   毒毒度:3
“もっと男になりたいなら、ブリティッシュ・スポーツを駆れ”
“イタリアのスポーツカーの正義はわりと簡単に読めるからだ。まずカッコイイこと。次は速いこと。そしてもうひとつは音がいいこと”

GWに愛車を農産物直売所入り口のポールにぶつけ、修理に出したのはよいが、予定通りに上がらないかもとかで急遽代車を出してもらった。ちなみにATは一切受け付けない身体。どうなるやらと期待していたのだが、何の変哲もない商用ワゴンRが届いた。残念、ロータスとかだったら面白かったのに(なわけないって)。さてこの本は6年前の発行。ランボルギーニってトラクターの生産で財を成したのね。イギリス車にはじまり、イタリア車に終わる。ビートは載ってるがカプチーノはない。カプチーノに乗ってたころは自転車や人力飛行機を追いかけて長野や静岡に毎週でかけていた。たいてい急ぎ旅ゆえ屋根はぴっちり閉めたままだった。風を感じてFUN to DRIVEという機会がなかったような気がする。

2002/06/09-9308
川明かりの街 常盤 新平 文春文庫 1990年2月10日第1刷
   毒毒度:1
“スミスは小さなタイプライターを持って出かけた。そして、「文化の一部」であるゲームを見終ると、ホテルの一室で、半分喫った葉巻をくわえ、ときどき好きな酒を啜りながら、タイプライターのキーを二本の指でゆっくりと叩いて、優雅な文章を創りあげてゆくのだった。ゲームとは、彼にとって真剣勝負であり、同時に遊びだった。”

ついに、わが家と師匠の家周遊の旅が決行された。金曜はわが家で6人が雑食、土曜の昼にクルマ3台で大移動。この度完成の運びとなった師匠の自作スピーカー(長岡先生の魂)を愛でながら、師匠特製のお好み焼きパーティー、社長室の仮面を被ったゲーセンで遊びまくり…私はスペクトル以来のシューティングゲームを試みたのだが、カイロしか突破できず。ううむ、センスないぞ。

2002/06/07-9309
友よ、戦いの果てに ジェイムズ・クラムリー
小鷹信光 訳
ハヤカワ文庫HM 2001年8月15日発行
   毒毒度:3
“もしあなたが彼を殺せば、わたしはあなたを愛せなくなる”

アンソロジー『殺さずにいられない』の短編で気に入った作家もの。シリーズ第1作は私の苦手な翻訳者ゆえ置いといて、第2作にとりかかってみたというわけだ。人探しの依頼、辿って行った先は? ありとあらゆる嘘、ありとあらゆる麻薬、ありとあらゆる武器のオンパレード、脱線しまくりの会話、イカした女性たち。主人公とその仲間たちがひきずっているのはベトナム体験。この部分が、レヘインのシリーズとは異なる。

2002/06/05-9310
スコッチに涙を託して デニス・レヘイン
鎌田三平 訳
角川文庫 1999年5月25日初版発行
2002年3月20日3版発行
   毒毒度:2
“わたしは肩をすくめた。「みんな、なにかの理由で憎む相手が必要なのさ」
 「みんないやになるほど愚か者なんだ」
 わたしはうなずいた。「そしていやになるほど怒ってる」”

ボストンを舞台にした探偵もの、パトリックとアンジーのシリーズ第一弾。アンソロジー『殺さずにいられない』の短編で気に入った作家、デニス・レヘインの処女小説にしてシェイマス賞受賞作を収穫。シニカルで小気味よい会話、ハデな銃撃戦など、ランズデールのハップ&レナードシリーズを思わせるノリである。ただし、探偵コンビのうちアンジーはイケてる女性で、パトリックは彼女にずっと恋心を抱いてきた。だが、彼女は人妻。どんなに抱きしめたくても、彼の親友で“くそったれ”フィルの許へといそいそ帰ってしまう人妻なのだ。
つい1ヵ月ほど前にボストン&バーリントンというツアーのコピーを書いたばかりゆえ、ボストン観光オモテとウラ…ビーコン・ヒルでの尾行やカーチェイスにさらなる臨場感が…。わくわく。

2002/06/03-9311
パンドラ、真紅の夢 アン・ライス
柿沼瑛子 訳
扶桑社ミステリー文庫 2002年5月31日第1刷
   毒毒度:-2
“どうやら新たな世紀を迎えるごとに、新種のヴァンパイアというものが誕生しているようなのです。もしくはわたしたちは人間と同じような進化の道をたどりつつあるというべきでしょうか”
“そしてこの世界にはわたしのまわりのいたるところに、愛の証が見える”

『幻のヴァイオリン』の呪文のような独り言には少々辟易させられたが、こちらは手に取らずにはいられないヴァンパイア・クロニクル最新訳。紀元前ローマ、アウグストゥス帝の時代。ローマ人女性リディアが、政変による一族の滅亡からただひとり、遠きギリシャはアンティオキアへと逃れた。パンドラと名を変えた彼女は、四分の一世紀前に父の客人であったマリウスと再会するが…。「血を飲む者」へとパンドラはいかにして変身を遂げたのか? 2000年の時を超えてパンドラ自身が語る愛の物語。

2002/06/01-9312
ビート・オブ・ハート ビリー・レッツ
松本剛史 訳
文春文庫 1997年3月10日第1刷
   毒毒度:-2
“人はいつかは死ぬ。でも名前は死なない。名前は死にやしない。それがだれかの聖書に書き入れられ、どこかの新聞に活字になって載る。その人の墓石に刻まれる。そう、名前は歴史を持つんです”

ノヴァリー・ネイション。17歳で、妊娠7ヵ月。アンラッキーゼヴンが彼女のジンクス。子供の父親ウィリー・ジャックに、見知らぬセコイアの町のスーパー・ウォルマートで捨てられた。行くあてのないノヴァリーは、そのまま2ヵ月ウォルマートに棲み続け、とうとうウォルマートの店内で出産することとなる。一躍有名になったノヴァリー。何年ぶりかで再会したママに、全国から届いたお見舞い金を巻き上げられてしまったが、図書館司書代理フォーニィや、シスター・ハズバンド、写真家のモーゼズ、シングル・マザーの看護助手レクシー、幸運の木をくれたインディアンの少年ベニーら、一見風変わりだが本当の友人ができた。セコイアはノヴァリーの本当のふるさととなりつつあった。
現代のアメリカを舞台としたファンタジー(あえてそう呼ぼう)。ビリー・レッツのデビュ−作。こののち、『ハートブレイク・カフェ』を生んでいる。

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