●あと10000冊の読書(毒読日記)  ※再は再読の意 毒毒度(10が最高)

2003-04

2003/04/29-9068
エスニック料理 財団法人ベターホーム協会 編集 ベターホーム出版局 1993年4月1日初版発行
   毒毒度:2
本日のもてなし料理をここより2品。
●タイ風サラダ きゅうり2本を縦半分に切り5ミリ厚さの斜め薄切りに。たまねぎ半コは薄切り。赤とうがらし1本は種をとって小口切り。砂糖大2、酢90cc、塩小1を混ぜたつけ汁に30分。
●スペアリブのピリ辛焼き にんにく2片、しょうが大1片をすりおろし。種をとった赤とうがらし2本を小口切り。カレー粉大1、ナンプラー大2、ごま油大1、砂糖小1、無糖のピーナツバター50gを合わせてスペアリブ800gに揉み込むようにして約1時間おく。アルミホイルを敷いた180〜200度のオーブンで約30分焼く。
このほかに無国籍キッシュの変型(中身をブロッコリーとなす、プチトマト、ベーコン、たまねぎに)
あさりのワイン蒸し
ピーマン細切りピリ辛味噌いため
筍姿焼きバター風味
あら挽きソーセージマスタード添え
リッツに自家製いちごジャム+塗るカマンベールチーズ
という豪華版でした。

2003/04/29-9069
河童のスケッチブック 絵と文 妹尾河童 文藝春秋 1995年11月30日第1刷
   毒毒度:3
“だれか河童さんの電池を抜いてくれないか。このままだとみんな死ぬよ”

そう叫ばれるほどこの人もひたすら歩く、歩く。買う買う。描く描く。はっきり言ってビョーキなのだ。スケッチブックとしてかなりの凝りようは、ページごとのちぎれ具合が違うのでもわかる。ピェンローのレシピは最高。

2003/04/28-9070
新星座巡礼 野尻抱影 中公文庫BIBLIO 2002年11月25日初版発行
   毒毒度:2
“オリオン座付近から教えられた星の美と神秘とは、生涯を通じ冬毎に味わずにはいられぬものとなり、冬が徒に熱い飲料と燃えさかる炉の火とを恋い、或いは一途に春の訪れを待ち侘びて過すべき季節でないことを、しみじみ覚るようになるに相違ない”

天空の88の星座を訪ねることを88カ所の札所巡りにたとえてすすめるエッセイ。星座入門としてはほぼ完璧であろう。なんといってもオリオン座を中心とした1月の東南の空への讃歌は素直に素晴らしい。オリオン座が讃美をもって語られるということは、かつて「見上げればオリオンの四角。吐く息の白さと背中の汗のアンバランスが好きだ、自転車乗りの冬」という言葉を遺したえた者にとっては喜び以外のなにものでもない。

2003/04/27-9071
ふだん着のパリ野菜料理 平野由希子 雄鶏社 1998年8月30日
   毒毒度:-2
ラタトゥイユのレシピ探し中。堀井さんのは目玉焼きとともに食しているが平野さんのは常備菜としておいたものをオムレツ仕立て。他に焼き物の美味しそうなのレシピが多数。フランス料理とはいえ、凝り過ぎのソースなんか一切登場せず。あくまで素材のおいしさが引き立つようなものばかり。夏野菜のティアンやカスーレ(豆の煮込みをオーブンで焼く)など試したいメニューだ。さてこの週末は続けざまに4組(トータル11名、うち大人9、犬1、赤ちゃん1)をもてなした。実はまだ最後の組をもてなし中。いずれの組にも、究極の筍レシピである姿焼き(掘りたてをタテまっぷたつにして、アルミホイルでくるみ180〜200度のオーブンで30分焼く。でき上がりにバターをおとして食前にしょうゆをたらすだけ)を出して好評。同時に作れてしまうキッシュ風ポテチ焼き(マッシュポテトにベーコンと薄切りタマネギをいためたものを加えタルト型に入れ、溶いた卵1個と牛乳100ccを混ぜたものをかけて細切りのモッツァレラチーズをパラパラ、180〜200度のオーブンで30分)もさらに好評(この材料でウマクないものができるわけがない)。ひと組目にはインドカレー、2組と3組目にはヨーグルトポムポム生地で缶詰め洋梨バージョン、4組目には茄子のマリネアンチョビー味、お得意の牛切り落としの時雨れ煮まで投入してまあおもてなしは成功。

2003/04/27-9072
ある日のメニュー 堀井和子 文化出版局 1995年7月16日第1刷発行
   毒毒度:-2
ラタトゥイユのレシピ探し中。気取らない料理はこの人の本、絵も楽しい。写真付の『おいしいテーブル』というクッキングブックもあるが、こちらは雑誌扱いなので残念ながら毒読には登場していない。ちょっと気が変わって、ブロッコリーのあつあつパスタというのを試してみようかなーと思っている。

2003/04/21-9073
紅茶のある食卓 磯淵 猛 集英社文庫 2001年5月25日第1刷
 毒毒度:-2
“不思議なのはイギリスの水でラプサンスーチョンをいれると日本ほど正露丸にならない。もっとソフトで、むしろ蘭の花の香りのような、柔らかい風味になるのだ”

フォットナム&メイスンのラプサンスーチョンを買ったはいいがあの独特の香りになかなか慣れない。さてはとこの本をしばらく探し回ったあげく、最近やっと発掘。知らないとちょっと驚く松の香りがすると専門家も認めているらしい。結構クドイチョコレートケーキが合うそうな。中国茶のように最初のは捨てて、二杯目からってのも優しい香りになるような気がする。ちなみに粒あん入りのよもぎ餅には、ダージリンのファーストフラッシュか濃いめのアッサムがベストマッチだそうでして。

2003/04/20-9074
イタリア歩けば… 林 丈二 講談社文庫 2001年5月15日第1刷発行
   毒毒度:-2
“ヴェネツィアに猫がやたらと多いのは周知の事実だが、猫の親玉であるライオンもドッサリいる”(ライオンづくし)
“飽きがこないというのは、その良さが簡単に説明できないところにある。たとえば、ヴェネツィアには普通の都市にあるべきものがない、というのが良い意味で「何だか違う」という感覚に繋がる。その「ないもの」がたくさんあって、その「ないもの」という透明な糸と、ヴェネツィアだからこそあるという糸とが複雑なレース編みのようになっている”(…のない世界)

ロンドンでは生ネコが一匹だったが、ヴェネツィアではライオンも含めて猫類てんこもり。町中にクルマの姿がないヴェネツィアは不思議な街。のびのび猫たちにとっては天国か。かの有名な「猫のなる木」は必見だす。足が痛くなるほどひたすら歩いたロンドン編にはちょっと悲愴感すら漂ってあぶない気もしたけれど、こちらの旅行は配偶者の方となので余裕が見られてホッとした。

2003/04/19-9075
夢魔の王子
グイン・サーガ第89巻
栗本 薫 ハヤカワ文庫JA 2003年4月15日発行
   毒毒度:1
“滔々と流れゆく時の流れほどにも、ひとの思いをこえて流れ続け、決してとどまらぬものはないのだ”

ナリスの葬送と、聖パロに味方するゴーラ・ケイロニア軍のクリスタル侵攻。ヤンダル・ゾックの傀儡となっていたレムスにもはや王としての力はなく、実はアモン王子が実権を握っているのだった。
嗚呼、また2カ月が経過したのか。まさにグイン・サーガによって、時の流れを知る状態である。ゆっくり花見もできなかったなあ。そして筍の季節到来。シリアル・キラーの季節なのだ。

2003/04/19-9076
ダヤンのスケッチ旅行
イタリアへ行こう
池田あきこ MPC 1999年12月12日第1刷発行
   毒毒度:-2
“私は不思議とか不気味とか不条理とか、不のつく文字に弱い。別の意味では不景気にも弱い。やっとたどり着いたマテーラのサッシ群は予想通りの姿で怨念をこめてグラノー川を見下ろしている”

がはは。ロンドンのあとはイタリアだい!(おいおい、やけっぱちなのか?)猫のダヤンシリーズでおなじみの著者によるイタリア紀行。ローマ、ベネツィア、トスカーナ、ナポリ、シチリア…。イラストが楽しい。市場や食べ物の場面が嬉しい。日本でもおなじみの町だけれどダヤンのはきっとひと味違うのだろう(私の場合行ったことはないのでふつーの観光というやつも想像にすぎない)

2003/04/19-9077
ロンドン歩けば… 林 丈二 東京書籍 2002年5月14日第1刷発行
   毒毒度:2
“ロンドンを歩くために来るのは、今度の旅限りだと思う。いやになるまで歩こうと決めた”

ニューヨークのあとはロンドン。ただしこちらはノンフィクション。ロンドン落ち穂拾いである。林丈二は路上観察学会の一員で、マンホールの蓋で一世を風靡したと聞いている。「路上における公共施設の通し番号」マニアぶりを如何なく発揮し、狭い路地計測もして、この学会お得意の未確認機能物体もちらほら。東京の消火栓の蓋のダイヤ柄のルーツはイギリスというのも納得しそうだし、何よりも「日本橋の動物装飾はホルボーン橋と関連がある」説に賛成! ロンドンは動物装飾の多いところなのだろうか。ライオン、ドラゴン、ワニ、カエル、象、しゃちほこ(というのは嘘で、実は逆さのイルカ)。放し飼いの犬は珍しいらしく、生ネコも姿を見ないとか。そしてロンドンではスズメは目撃されないそうである。

2003/04/18-9078
聖なる酒場の挽歌 ローレンス・ブロック
田口俊樹訳
二見文庫 1986年12月30日初版発行
1999年10月25日13版発行
   毒毒度:3
“聖なる酒場が閉まるとき誰もみんな孤独になるのだ。”

ニューヨーク。マンハッタンの酒場に集う、スカダーの友人、たち。だがもぐりのモリシーの店は強盗にあい、客のひとりは自宅で女房を殺されたあげく自身に嫌疑がかけられ、ミス・キティの店の裏帳簿が盗まれた。それぞれがスカダーに調査を依頼する。複雑にからみあった事件は解決するが、多くのことが変わり、そしてあまりに多くの人間が姿を消した。それがニューヨークだ。
今は酒をやめているスカダーが、10年前をふりかえって語るニューヨークの孤独。ようやく「らしい」毒書。初期のスカダーシリーズを実はめちゃくちゃな順序で読んでいるということを告白せねばならない。二見とハヤカワとに翻訳権が分かれてしまったのも原因といえる。かつてシリアルキラーものの一冊として『暗闇にひと突き』を読んでしまい、『八百万の死にざま』はハードカバーを立ち読みしてしまったり、順を追っているのはごく最近なのである。

2003/04/17-9079
アムステルダムの犬 いしいしんじ 講談社 1994年4月25日第1刷発行
1994年6月3日第2刷発行
   毒毒度:1
にがおえかくで。自称路上似顔絵書道家の著者が1週間暮らしたアムステルダム。パトラッシュと仮称されるクリーム色のその犬は、パンをやると狂気乱舞し、著者の絵道具の墨の匂いに興奮するヘンな奴だった。コーヒーショップのほんまもんガンジャメニューにあきれつつ、パトラッシュをのたうちまわらしつつ、広場でであったあんちゃんたちと酒盛りしつつ時はすぎゆく。パトラッシュ?色の黄色い表紙とトボケた犬のイラストが可愛い癒し系。

2003/04/17-9080
Design of Doujunkai
同潤会アパートメント写真集
ユナイテッドデザイン 編集 建築資料研究社 2000年7月15日初版第1刷発行
2001年12月15日第2刷発行
   毒毒度:-4
友人によるギフト本。わくわくさせられる扉まわり。窓。階段の手すりのラインの美しさ。同潤会アパートといえば青山アパートメントが有名だが、あちこちにあったのですね。むきだしの配管、剥げ落ちたトイレの壁ひとつひとつまで美しいとしか言い様がない。上野下アパートのトイレの便器の白さが印象的だ。営みは続いている。

2003/04/16-9081
猫の島のなまけものの木 池田あきこ ほるぷ出版 1998年9月25日第1刷
2000年7月14日第5刷
   毒毒度:-3
年に一度猫会議の開催される、猫の島へひとり旅をするダヤン。猫会議には間に合うでしょうか?
猫となまけものの木。ベストカップル賞。猫いじりてー発作は、友人宅の猫をいじり倒して時々解消。最近はちょっと、「らしくない」本づいてるかも。

2003/04/16-9082
ダヤンのおいしいゆめ 池田あきこ ほるぷ出版 1995年10月31日第1刷
2002年5月31日第12刷
   毒毒度:1
ダヤンが寝苦しくて起きてみると、ばくがのしかかっていて…。ダヤンのゆめがおいしいので同棲をはじめたダヤンとばく。世話女房ぶりを発揮するばくを、しだいにダヤンはうとましくなって…。なんだこりゃ。尽くしすぎのオカマちゃんみたいなばく登場。毒があるよねちょっと。

2003/04/16-9083
イワン、はじめてのたび 池田あきこ ほるぷ出版 1993年9月10日第1刷
2002年5月31日第15刷
   毒毒度:-2
エバーストーンの森に住む、ワニのイワン。きこりとして働くイワンは実は動物園生まれ。なぜこの森にいるのでしょう? ダヤンシリーズの脇役キャラの物語。イワンのたんじょうびを祝って一斉に咲く花々が美しい。

2003/04/16-9084
ダヤンのたんじょうび 池田あきこ ほるぷ出版 1993年7月20日第1刷
2002年9月30日第34刷
   毒毒度:-2
「わちふぃーるど」に住む猫のダヤン。地球から来た彼は、おたんじょうびを知りませんでした。魔女に頼んでおたんじょうびを教えてもらったダヤンですが、おたんじょうびのパーティーに魔女を招待しなかったためにとんでもないことに…。人気のダヤンシリーズ。てっきり外国のキャラだと思っていたのだが、絵も文も日本生まれ。猫好きが描く猫の動きに納得納得。

2003/04/12-9085
〜どこでもいっしょ〜トロが来た日   ソニーマガジンズ 2003年4月10日第1刷発行
   毒毒度:0
人間になりたかったトロ。ニャ。ねこになりたいニャ。

2003/04/07-9086
精霊狩り 萩尾望都 小学館文庫 1976年12月20日初版第1刷発行
   毒毒度:2
“知ってるでしょ ただの子どもはみんな飛ぶんだ”

2003/04/03-9087
ミラーダンス(下) ロイス・マクマスター・ビジョルド
小木曽絢子 訳
創元SF文庫 2002年7月31日初版
   毒毒度:-4
“「あなたは……ちっちゃくて、おかしな、醜い人よ。生きていて何の得があるの?」
「あらゆることさ。それにぼくは、あらゆることどころか、それ以上のものを手に入れるつもりだ」ぼくはそう望んでいる、そうとも。富、力、愛。それに勝利。仲間たちの目に輝きを映す、素晴らしい勝利。それにいつかは妻や子どもたちも。子どもたちの群れだ。ミュータントだと陰口をきく脳たりんどもが愕然として声を失うような、背が高くて健康な子どもたち。〈それに兄弟も持つつもりだよ〉”

遺体を探せ! ジャクソン統一惑星での騒動の最中、マイルズの入った低温保管器は宇宙のどこかへ発送されたらしい。バラヤーで両親の愛、皇帝の友情になじみつつ、マークは兄マイルズの捜索に乗り出した。マイルズが行方不明だったり、低温治療による記憶喪失だったり深刻なはずだけど、マイルズの女性遍歴大集合という一面もあってどこかしらやっぱりユーモラス。本伝は4作未訳、今翻訳中なのはどうやら外伝『アトスのイーサン』らしい、とにかく早くしてくれ。

2003/04/02-9088
ミラーダンス(上) ロイス・マクマスター・ビジョルド
小木曽絢子 訳
創元SF文庫 2002年7月31日初版
   毒毒度:-4
“「あなたがいちばん恐れているものは死なの?」彼女は不思議そうにたずねた。
「いや。死じゃない」彼は額を撫でながらいいよどんだ。「正気を失うことだ。生まれてこのかたぼくの戦略は、ぼくの知性を認めろと要求することだった」かすかな波動が、短い全身を貫いた。「なぜかというとね、ぼくは敵より自分が勝っている、何度でもそれを実証してやる、と考えている生意気なちびすけだからさ。”
“「自分自身を眺める鏡は他人しかないのよ。あらゆる意味の領域で。すべての善悪は人々の心のなかにだけあるものよ。宇宙間のどこを探しても、そんなものありはしない。だから孤独な幽閉は、どういう人間の文化でも懲罰に当たるわ」”

マイルズのクローンであるマーク。そのアイデンティティは未だ確立されていない。マイルズの留守を狙いコマンド部隊を率いてジャクソン統一惑星へと侵入、クローンたちを解放しようとしたのだが…。実戦経験のないマークは脱出に失敗、ろう城するハメになる。本物の提督マイルズはマークたちの救出に向かったが、烈しい白兵戦の末撃たれたマイルズは死亡してしまう。
やーこれはどうなるんだ。マイルズの遺体が納められた低温保管器が行方不明!

2003/04/01-9089
星と伝説 野尻抱影 中公文庫BIBLIO 2003年2月25日初版発行
   毒毒度:-3
“早春の宵、北の空には大熊座が這い上がり、東の空には獅子座が駆け上がっている。これら二つの巨獣が背中合わせになって登り、やがて花から若葉となって天の南北に相対して腹ばう景色は面白い”

シリウスとアンターレス。輝くほし星。おなじみの星座も、この人の文章にでてくるときはまるで別物のようだ。

(c) atelier millet 2003
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