境A遺跡富山県と新潟県の県境に位置し、約45,000uの広がりを持ち、山と海の距離が数百mと近接した地形上にあり、標高が5〜30mで現在は水田・雑木林に所在する。
本遺跡は昭和59・60年に北陸自動車道建設に先立ち発掘調査が行われ、縄文中期から後期にかけての竪穴住居跡35棟・中期から晩期の土壙約1,700基・小河川跡・晩期の円形木柱列1基などが検出された。 又出土した土器・石器などは、これまでの県内の縄文遺跡から出土した平均的遺物量に比し数倍以上に及び、10年来の膨大な整理作業を必要としたと云う。これらの出土遺物のうち、玉類や磨製石斧関係遺物・土器・石器など2,432点が、平成11年に国の重要文化財に指定された。

特に縄文時代における硬玉の採取と加工実態を示す資料として、又磨製石斧の原石から完成までの製作工程が良く分かる資料として、他に類例を見ない貴重な資料として認められている。

更に硬玉・磨製石斧などの未成品が多量に出土していることから、石器製作工房として各地に流通・交易されたと見られている。
出土遺物のうち際立った逸品・ユニークな遺物を以下紹介する。

先ず石器の出土量は、大量の蛇紋岩製磨製石斧の未完成品やヒスイ原石・ヒスイ玉類の未完成品を含め整理箱約4,000箱・20万点以上に及んだと云う。

これらの石器のうち、突出した完成品4点を以下紹介する。
ヒスイ製大珠、御物石器、三脚形石器そして男女性を合わせてイメージした彫刻石棒の順番に紹介する。

 潟県糸魚川産ヒスイ原石を加工した大珠は、貴重品として珍重されたと見られる。

 御物石器・三脚形石器はハッキリした用途は不明だが、使用痕がないことから生活道具というより、祈りの対象とした特定の儀式に使われたと見られている。

 男女を合わせて彫刻した石棒は、男性の持つ“活力”や女性の持つ“誕生”のイメージを祈りの対象としたと見られる。
形を抽象化せず忠実に象った大型石棒として注目される。

 これらの石製品以外にも異形石器・円盤形石器・石冠形石器・鋸形石器などユニークな儀式用石器が見つかっている。

 次に土器類の打ち、有孔鍔付・台付・ミニチュアなど非日常的土器が多数検出されている。

有孔双子土器

 ニークな双子形土器は、右側の方が大きく男性と見られ、夫婦合体の様子を現しているように見えるが、“誕生”を祈る儀式に使われたと考えられる。

 以上のような非日常的石製品・土器は、精緻な加工・工作技法を駆使した傑作品で、祭祀・儀式を重んじた精神文化が垣間見られる。

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