2003年4月
イタリア

まさか,私たちが盗難にあって荷物をすっかり無くすなんて.信じられない.

イタリアはすりが多いとは聞いていたので,パスポートとお金をお腹に巻きつける財布を買った.まあ用心に越したことはないと思って.列車でベネチアに入り,運河沿いを散策し,藤の花の咲く小道を写真に撮り,アイスクリームを食べた.朝早く,魚市場にも行った.フィレンチェの街を歩き,ドゥオーモの大きさに圧倒された.
さあ今度はレンタカーを借りて,イタリアの古い町を訪ねよう,そう思ってフィレンチェの飛行場へ向かった.カートにスーツケースとリュック,カメラバッグを乗せてAVISの窓口に行く.飛行機の離着陸の時間ではないのか,人通りは少なかった.カメラバッグには正さんのカメラ3台,レンズ4本,フイルム70本が入っている.撮り終わった私のベネチアのフイルムも入っていた.
AVISの係員がいろいろ尋ねてくる.パスポートを見せて,運転免許書を見せていた.その時,突然正さんが叫んだ.「あ,荷物」 もうその時には正さんの右側にあった荷物が全部,カートごと無くなっていた.私たちは何の物音も何の気配も全く感じなかった.あわてて空港の中を右に走り,左に走りしたが,何も,誰もいない.数人の人が普段の通りの様子で歩いているだけだ.私たちは呆然とするばかりだった.AVISの係員は親切に警察に一緒について行ってくれた.警察官は一言も英語を話さない.AVISの係員の通訳で盗難証明書を書いてもらった.金目の物だけ取ったらあとは捨てられるかもしれないとのAVISの係員の言葉に慰められ,そのまま旅を続けるしかなかった.レンタカーはもう借りているし,ホテルももう取ってある.不幸中の幸いと言えば,パスポートとお金と帰りの航空チケットがお腹の財布に入っている.日本語のガイドブックが無くなってしまったが,ホテルの住所だけはメモして持っていた.車で探していけば何とかたどり着けるだろう.初めての英語圏外の旅行でとんでもないことになってしまったものだ.
シエナに着いてから,はぶらしとパジャマと旅行鞄を1つ買った.こんなに身軽でも旅は出来るものだなあと正さんは言った.私の小型カメラは手さげカバンの中にある.フイルムを買い足し,気を取り直して写真を撮り始めた.

城壁に囲まれた中世の古都シエナ

12世紀の清貧の聖者サン・フランチェスコの町アッシジ

古代ローマ時代よりもさらに古い紀元前からの歴史ある町オリビエート

ミラノ