まりこは自分の名前が大好きである.お洒落な母が付けてくれたというのが誇らしい.弟の史樹なんて呼びにくいから「ぼうや」って呼ばれたし,妹の多英子はかわいそうにおじさんが付けてくれたのだ.
父も母もおばあさんもおばさんも,親戚中のみんながまりこの誕生を喜こんでくれた.生まれた時から,まりこは全身にそれを感じながら大きくなった.特に自分の子供がまだいなかったみきおばさんなど,かわいい末の弟のところに生まれた姪の女の子がかわいくてたまらない.「まりちゃーん,おばさんのお膝にいらっしゃい.抱っこしてあげよう」まりこが小学生になってもみきおばさんはまりこを抱いて頬ずりしてくれた.