音楽の須川先生は学校が終わってから私にピアノを教えてくださった.きっと父か母がお願いしたのだと思う.だから音楽の時間に楽器を使って合奏をする時には私はいつもピアノだった.カスタネットはつまらなそうだったけど,木琴は弾いてみたくてたまらなかった.みんなと並んで木琴を弾きたいなあと考えていた.「さあ,みんな,初めから合わせるから立ってやりましょう」と須川先生がおっしゃった.「はい」と私も一緒に立ち上がると「まりちゃん,あなたはいいのよ」と先生は言われてとてもおかしそうに笑われた.1年生の文化祭の時には舞台で一人でピアノを弾いた.2年生の時に,須川先生が私のところに来ておっしゃった.「一人だけえこひいきはいけないと他の先生が言われるので,今年はピアノは弾けないの.ごめんなさいね」私は少しも残念だとは思わなかった.そうか,あれはえこひいきだったんだと私は納得した.