私は次に生まれてくる子はぜひとも女の子であるようにと切に切に希望していた.男の子はもうたくさん.弟は何でも自分でできるから世話の焼きようがない.髪の毛だって短いから櫛でといてあげたり,りぼんを付けてあげたりできない.くつだって一人で履けるから手伝ってあげることもない.隣のみとぎちゃんが妹の面倒をあれこれ看ているのがうらやましかった.ある夜目が覚めると,隣で寝ていたはずの母の姿がない.ふとんはからっぽだった.夜になって産気づき,たまたま夜遅くにタクシーで帰ってきた二軒隣のおじさんのタクシーに乗ってバルナバ病院まで行ったのだと父が教えてくれた.私は母の寝ていたふとんに座って,「どうか女の子,どうか女の子でありますように」と祈った.