小学校は私立で電車通学だった.ランドセルを背負い,習字道具の入ったお道具箱と上履きの袋を持って,岡山竜太郎先生のそばに座っていた.岡山竜太郎先生はとてもやさしい先生だ.四条畷の駅に着いて,先生の後に付いて歩き始めたとたんにお道具箱を電車の座席に置き忘れて来たのに気が付いた.先生の顔を見上げるが,お道具箱のことは言えなかった.「何て言おう」と考えながら歩くうちに学校へ着いてしまった.私のお道具箱はどうなっただろうとその日一日心配で仕方なかった.家に帰って母にも言えなかった.
そして次の日,岡山竜太郎先生が教室に私のお道具箱を持ってきて下さった.四条畷の駅員さんが学校に届けて下さったということだった.まりこはほっとしてにっこり笑った.