ヒーローとヒロイン
 レジャーとして行うダイビングにはヒーローやヒロインはいらない。
 誰もヒーローやヒロインになることを追い求めてはいけない。それは、「安全」だけがヒーローやヒロインなのであり、それを実践する全てのダイバーがその友となることが、ダイビングをレジャーとして楽しむための本質だからである。
 ダイビングにおけるヒーローやヒロインは、レジャーではなく、致死性を引き受けた上で行うテクニカルダイビングなどの世界に限定されるべきであり、その価値観を一般人向けのレジャーに持ち込んでどうこうしようということは卑怯である。
 つまりレジャーとして行うダイビングには、ヒーローやヒロインが不要なだけでなく、卑怯者も不要なのである。
 ここでも誤解なきよう断っておくが、優良ダイビング業者は、安全というヒーローやヒロインの最大の友である(これは階層や階級を意味するものではなく状態の表現である)ことを忘れてはならない。

臆病者の勲章
 レジャーダイビングは、ダイビングをすることで得られるいくつかの目的のための手段である。手段は安全であるべきであり、安心して目的に達することができるようなものであるべきである。
 通常、環境が生存に支障がない場合、つまり普通の陸上の環境でなら、徒歩ないしはそれに近い形態で目的地に移動する日常の手段に臆病になる必要はない。あるいは低い。しかしダイビングでは、自分の周囲の環境そのものが致死的(水の中)なので、そこで活動するいかなる状況下でも、その変化を危険とリンクさせて考える臆病さが必要になる。
 しかし陸上の生活が普通である我々は、往々にして、ゆったりした移動手段そのものに臆病風を吹かす者をバカにする。この性質は致死的な事故の原因となっている。つまりゆったりと移動している手段によって、時にあっという間に死に至るのである。
 皮肉に考えると、ダイビングにおいては、臆病者のレッテルは、輝く勲章なのである。


以上は、事故を予防できることを願ってのコラムです。

平成22年11月14日