質問・回答(0064)


「腎炎」と言われましたが「腎生検」は必要でしょうか。

  BZA05772     足立 憲昭先生
 健診の結果
 はじめまして。"ODIN"にてホームページを拝見し、メールをいたしました。
 
昨日は文字化けのため、お手数をおかけし、申し訳ございませんでした。あらためてご質問させていただきます。

 先日、会社の健康診断で尿糖(2+)と尿蛋白(3+)が検出され、再検査を受けて参りました。当初は極端な肥満からでた結果と考え、最初の診断の時に117Kgあった体重を107Kgまで減量し再検査を受けました。そして尿糖は陰性になり検出されず、糖負荷試験でも軽度の血糖値変化が認められただけで肥満に対する注意を指示されるに留まりました。

 しかし、尿蛋白は二次検査、三次検査とも早朝尿/来院時尿とも3+が検出され、恐らく腎炎であろうと診断していただきました。しかし、ご診断頂いただけで薬は処方されず、検査入院を勧めら れました。とはいうものの検査入院は予約が必要で、予約後1〜2 ヶ月程度は待ちなさいとのことでした。更につけ加えて、腎生検は1〜2週間の入院が必要で、採取する位置によっては病気を発見できない。とも言われました。

無作為抽出では有効なサンプルを確保できないのは仕方ないと考えますが、そのような検査を果たして必ず受ける必要があるのでしょうか?腎炎に効く薬をなぜ処方していただけないのでしょうか? また以下の点で不安です。お聞きしても明確なお答えが頂けませんでした。是非ご教授いただきたく思いますので、よろしくお願いいたします。

どのような治療でどの位の期間で完治するか。  
治療中/完治後、(後遺症/透析?)  
検査入院(腎生検)は必ず1〜2週間の入院が必要か 
腎炎の原因/対策/予防法/症状/障害 
腎炎以外で考えうる病気/本当に腎炎か?


以下に検査結果(96/8/24検査)を添付します。  
・身長 173cm 体重 107Kg  
・血圧 一次 139-85mmHg 二次 134-84mmHg
・血液 クレアチニン 1.06mg/dl  総コレステロール 1.7 尿素窒素 10.5 mg/dl  A/G比 152 mg/dl 総蛋白   6.8 g/dl
・尿 蛋白 3+      潜血 - 糖 -  

検査結果受け取り時に口答にて、言われましたが、腎炎というのはその程度の病気なのですか? もっと大病でいろいろなところで異常が発生するような気がす るのですが?

追伸
 今まで大きな病気でお医者にかかったことなど皆無で、どのようなポイントで病院にご質問すれば良いかわからず、困っておりました。ましてや入院と聞かされ、正直動揺しております。 そのときにI-netで腎炎について調べている最中、先生のページを見つけ、さっそく利用させて頂きました。 こころから感謝しております。I-netの可能性と先生の広いお心に重ねて感謝いたします。
(27才 県名不明)

(96/10/30)
思いもかけなかった「腎臓」という臓器の病気と言われてさぞご心配のことと存じます。

慢性的に尿に蛋白が下りる病気は「慢性腎炎」と片づけてしまってそれ以上詳しい検査もせずにお薬を飲むだけで様子を見る先生もいらっしゃいますし、確かにそれも一つのやり方です。

しかし同じ「慢性腎炎」といっても実際はたくさんの全く性質の違った病気の集まりであることが分かっています。ですから外から見ていると尿に蛋白が出ているだけで全く同じ状態であってもこれからどのようになっていく病気なのか、薬はどういったものをどの程度飲んだらよいのか、食事療法はどの程度厳密にやったら良いのか、運動の制限はどの程度必要なのかといった点が今一つ曖昧になってしまうのです。

尿に蛋白が出る腎臓の病気は他の臓器の病気とはちょっと違ってCTやエコー、カメラなどで外から見るだけでおおよその見当がつくというわけにはいかないという特徴があります。

それは病気の原因が腎臓の糸球体というところにあるからです。糸球体は片方の腎臓に(腎臓は背中の脇腹に普通左右に1個ずつ合計2個あります。)100万個ほどもあり細かい血管がまるで糸玉のように絡まってそれを支えている組織やそれを囲んでいる袋のような組織でとても複雑な構造になっています。そのためたくさんの種類の病気があるのです。しかもその病気の様子を調べるには100万個のうちの少なくとも10数個は実際に取ってきてそれを顕微鏡で観察したり特殊な染色法などで検査しないと分から点が多いのです。

この検査をしますと「IgA腎症(アイジーエーじんしょう)」がはっきりとしたり、治りの良い「微少変化群」というものであったり経過の長い「膜性腎症」というタイプであったりすることがわかります。場合によっては「膜性増殖性腎症(MPGN)」や、「巣状糸球体硬化症(FGS)」と呼ばれる予後のあまり良くないことの多い病気であることが判明することがあります。

これからの人生設計を考える上でも腎生検をして、たちの悪いものではないことを確認しておくだけでも意義があるのではないでしょうか。

そのようなわけで一般には1日に尿蛋白がおおよそ1g以上の場合には腎生検を勧めることが多いです。

腎生検は熟練した先生が行えばそれほど危険な検査ではなく私も自分の受け持ちの患者さんで事故に遭ったことはありませんが、文献やうわさによると腎生検をしたあと出血をした例などを聞くことはあります。

受け持ちの先生の評判はいかがでしょうか。

普通腎生検をする場合には準備のための検査と合わせて最低4−5日の入院が必要です。余裕をもってということであれば1週間は診てもらった方が良いでしょう。

どうしても腎生検がお嫌の場合にはペルサンチンという薬を飲んで様子をみる方法もあります。これで蛋白尿がかなり低下する人もいます。

要するに腎生検をやらないと御質問の5項目(3番を除いて)に対して何ともお答えしにくいということになります。

しかし逆に腎生検をやりさえすればすべて解決をするなどと期待してしまうとあとでがっかりすることもあり得ます。「今後のおおまかな予想が立てられる」という程度だということは考えておかれた方が良いでしょう。大切なことは「腎生検をやるかどうか」は医者が勝手に決めることではないのです。

腎生検をやることのメリットとデメリットとやらなかった場合の方策については腎生検をやる医師から詳しく説明があるでしょうから、よく相談をしながら患者さんご自身が決定されるというのがこれからの新しいやり方です。優秀な医師はそういう教育を受け始めていますし医学教育のこの流れは変わらないと思います。今回ももう一度説明を求められても良いと思います。もしもその説明を断られるようでしたら別の病院にかかられるようにしたほうが良いでしょう。

かなり回り道をしましたが強いて申し上げれば私からのサジェスチョンとしてはこの際腎生検は受けられたらどうでしょうか。いろいろ悩んでいるよりも少しでも病気の状態がはっきりとしてくるでしょう。腎生検はよほどのことがないかぎり一般的にはそれほど危険な検査ではありません。

どのように決断を下されたかかまた教えて下さい。