質問・回答(0192)


小児の脳腫瘍(上衣腫)について

On Sun, 14 May 2000 11:12:51 EDT ********wrote: ******** wrote:
**県 *****(掲載は匿名でお願いします)
再度お送りします。(パソコン初心者なのでお手数かけます)
*****の**で 
はじめまして満7歳の息子の病気についてご相談いたします。
2月28日に風邪による頭痛おう吐かと思いかかりつけの小児科に来院。
脱水症状があったので点滴・・・ままもなく激し い頭痛があり髄膜炎の疑いで JR病院へ自家用車で移り、CTで腫瘍確認後市立病院へ救急車で転送されました。

その後 すぐCT MRIにより、Drか ら手術することを勧められました。
10日間の入院検査の後15時間の手術を終えました。
小脳脳幹部に接しているため危険な手術であると、説明を受けていたのですが、夫婦と も大変動転していてことの重 大さが、具体的にどんなものか(今までに経験した事のないほど危機的な事なのか》解 からずただただ途方にくれて いるじょうたいでした。

幸い命に別状はなくめだった麻痺もなく、手術的には大成功・・(一番満足しているの は執刀医だったみたい)。
その後改めて色々な情報を集めるうち、小児の脳腫瘍の特徴を知り、本当に大変な事だ ったのだと、鳥肌がたつおも いでした。
・・・・がしかし、主治医は、なににつけてもバッチリバッチリと術後に関 しては、意外と楽観視した診 断をされていて色々な文献やネット情報から知る不安要素は殆どおっしゃらないので、 Drの満足度と私達の満足度の ギャップを感じてしまいます。

もちろんとり越し苦労は必要ないのかもしれませんが、・・・そして私たちもダイレク トに”どれくらいの生存率か とか聞けない臆病さもあると思います。
  そこでいくつか解かる範囲で家の子のよう なケースについてご助言お願 いします。
病理の結果上衣腫でした。
上衣腫の説明文にあるように脳室に膨らんで脳幹をひしゃげ るほどに圧迫してさらに頚部 に垂れ下がっていました。
脳幹部の一部を残してほとんどを摘出できました。
片目にふく視がのこっています。その後有効な化学療法がないということで、30回の局 所照射を始めています。
術後 も頭痛はおさまったもののおう吐は日に何度も繰り返し、治療後はさらに回数がふえて います。今日で10回目です。
両耳の後から後頭部がはげてきました。食欲はあるのですがその大部分をおう吐してま す。素朴な疑問をおねがいし ます。

1.摘出した空隙は、どのくらいでもどってくるの?
2.脳幹グリオーマ・・とはちがうの?《手術できなくて、放射線療法に頼るが予後不 良と掲載されているのを見たの で)脳幹神経こう腫の部類にはいるの?
3.再発について、どのくらいの経過後が頻度がたかいの?上衣腫が更に悪性化するっ てどういうこと?
4.このようなてを尽くしても多くは再発する・・・ということが家の子の場合にも当 てはまる可能性があるの?(最 近の高度な医療ではそうでもなくなっているとか?)
5.取り出した腫瘍は見せてもらえて説明を聞けるとききましたが、どのくらいの大き さかとか見せてもらっていませ ん。今更ながらざんねんです。 

ほんの数年前でさえ同じようなお子さんが、命をおとしたり晩せい障害で知能発育に障 害を残したりしている病気と 言う情報の中で息子の場合は例外的とも考えられず、今後の心の準備や私たち家族の生 き方の方向性を定める意味で も全ての(良くも悪くも)可能性を把握したいと思っています。
ちなみにこの病院は、小児の脳腫瘍を専門にいくつもこなしているわけではないので、 (たぶん初めてのケース)Dr もナースも細かい具体的データの説明が受けられませんでした。
同じような状態で治療を受け無事社会人となっている方がどれほどいらっしゃるのでし ょうか。
腫瘍の悪性度、場所により様々だと聞きますが、今後再発のときの治療にはどのくらい のリスクがあるのでしょう。

5年生存率というのは、5年内に再発した方を除くものですか?脳に重い障害をおってい ても生存している内にはいる のであれば、元気に社会復帰というのは、更に少ない事になるのですよね。
 大人の腫瘍で1ヶ月少々で社会復帰された人がいるとか、開頭手術できな方が照射で 治ったなど大丈夫大丈夫とはげ まされてはいるものの、我が子に照らしてみると釈然としないものがあります。
出来る 範囲で、一番新しい現場の、 現状のありさまが、知りたいです。よろしくお願いします。

 On Mon, 15 May 2000
突然判明したお子様の重大な病気と手術、本当にご心配のこととお察し致します。

 いろいろと調べておられるとおり「上衣腫」しかも脳幹を圧迫していた、そして脳幹に一部取り残しもあるとのことでしたら決して今後のこと楽観は出来ないと思います。

 メールを拝見していますと今回手術を担当された先生は手術を成功させるために全力投球をされる方のように感じます。技術的に良い手術をしてもらうことが何より大切ですのでそれはそれでよいと思います。

 しかし、今ご両親様にとって同様に重要なのはお子様の状態を正確に把握し、今後のことをじっくりと考える必要があるのです。そういう点はこの脳外科の先生はあまりお得意でないようにも感じます。

 ご自分で調べられた小児の上衣腫の予後(その患者さんがその後どのような状態になるのか、そしてその可能性はおおよそどれくらいなのか)については個々の手術所見によっても違いますので手術をされたその先生に、入院されている今のうちにしっかりと伺っておかれることは必要ですが今後のことは熟練されている小児科の先生、あるいはカウンセラーなどと相談をしていくのがむしろ良いように思いました。

それは、今後は、場合によっては施設入所などのことも視野に入れて判断をしていく必要もあり、またご両親様の心労も私は心配です。こういうことは脳外科の先生の専門ではありませんし得意でない方の方がむしろ多いのです。

 「手術の成功」と「患者さんの幸せ」とは必ずしもイコールではない場合があります。もう最近ではなくなりましたが「手術は成功したが患者さんは死亡された」などというひどい状態もあったわけです。
今回の場合「手術の成功」の上に経過観察をどのようにするか、日常生活をどうするかなどご両親様のご相談に乗って上げれるような体制が必要だと思います。
日本ではそういったケアが必ずしも充実しておらず心の痛むところです。

 続いてご質問事項に移りますが、現在嘔吐が続いており、その上回数が増えてきているのはとても気になります。手術のときの炎症などが未だ続いておりそれが脳幹部にある嘔吐中枢を刺激しているのか、あるいは放射線がそうしているのかなどが考えられますが注意深く見守る必要があります。
いろいろな種類の制吐剤(嘔吐を押さえる薬)を試してみたり、それが駄目ならノバミンなどという強い精神安定剤で嘔吐を押さえたり、場合によっては局所の炎症を押さえるために副腎皮質ステロイドその他も考えてみる必要があるかもしれません。
手術をした場所で何か特別なことが起こっているのが原因の場合は即刻再手術ということもあり得るでしょう。

1.摘出したあとの空洞がどのようになっているかとか、上衣腫の取り残しがどの程度あるのかなどはMRIなどの画像検査をして専門医が見れば通常は良くわかります。既に摘出したあとは通常は正常に髄液が流れているはずです。
 
2.「上衣腫」は「脳幹グリオーマ」と同じく脳腫瘍ではありますが別の種類のものです。

3.「上衣腫」は本来は良性なのですが手術で全部摘出できることが少なく(せいぜい14%ほど)、どうしても取り残しができるため再発が避けられません。
腫瘍が髄液の中で播種(飛び散るようにばらまかれる)するような悪性のタイプも4分の1ほどあり油断はできません。

4.随分といろいろと情報を集められた結果メールに書いておられるように「手を尽くしても多くは再発する」というのは残念ながらおおよそ当たっています。

5.腫瘍の大きさなどは当然カルテに記録されているはずですし、熱心な先生でしたら病理標本としてホルマリン漬けにして残しておられるかもしれません。

 脳室上衣腫の小児患者さんを手術後もずっと診続けたという経験が私はありませんが子供のころに脳腫瘍の手術をされて大人になって社会でお元気に生活をされている方は何人も診てきました。確かに再発率など高く楽観視ばかりはしておれませんが「この子は必ず悲惨な一生で終わるのだ」などという間違った考えにとらわれないようにすることが大切です。

 生存率は再発例も再発しない人も含めて計算します。報告する施設によっていろいろですが、一般的には5年生存率は40−70%という報告が多いです。
中には「上衣腫」の10年生存率を75%という良い成績を示しておられるところもあります。

「生存率」というのは個々の患者さんの状態を無視したあくまでも平均値ですので参考に利用するようにしましょう。手術手技や技術はどんどん進歩してきていますので希望を失わないことも重要です。

 残念ながらご期待に添えないところもあるかと思いますが以上お答えとさせて頂きます。


丁寧な御解答ありがとうございました。
休み明けからかなりおう吐がひどくなり、水分補給もままならないようなので点滴する ことになってしまいました。 週末の外泊(帰宅)を楽しみにがんばっていたので、点滴がはいってしまうと本人もが っかりしています。

ちょうど 今日照射初めてのMRIの撮影がありました。照射前のものとほとんど変わりなく、問題 なしということでした。 水分だけの点滴ですが24時間経過するころには、なぜかずいぶん落ち着いて元気を取り 戻してきました。おう吐も、 回数が減ってきました。 Drも、このおう吐がどこからきているか分からないとおっしゃっていました。

照射は、6月半ばには終了する予定ですが、長引くおう吐生活は、やはり本人も辛い物 です。 照射が終われば退院ということなのですが、おう吐で、普段の生活に戻る事が困難であ れば、私共も、何か次の対処 を考えなければと思っています。 また、何か迷ったら、ご相談いたします。
ありがとうございました。(On Sat, 20 May 2000)