
Date: Sat, 12 Aug 2000 21:55:23 +0900 Subject:
足立先生こんにちは。 私は5*歳の主婦です。今回は、治療方針を自分では決められなくて、相談したくお便りします。よろしくお願いします。
平成11年8月初め、左下腹部腫瘤に気付き、*月*日日赤にて、受診。CT、MRI、血液検査他いろいろと検査。初診時小児頭大の、腫瘤を認め卵巣腫瘤と診断されました。
*月*日に手術、肝右葉、子宮全摘、両側横隔膜下大網切除、盲腸、盲腸部分の切除。この時腹膜内に、粘液が 貯留していた。病名は、腹膜偽粘液腫と診断された。病理検査では、境界腫瘍と言われたが、ガンの一種ですか?
術後2回の化学治療を行う。 11月*日に腹膜に入れていた管が腸に癒着して抜けなくなり開腹手術。同時に左右にリザーバーを埋め込む。 かなり腸の癒着がひどく手術は6時間かかりました。(この時腹膜内腫瘤は著明に縮小していた。) 右のリザーバーより、1回だけ化学治療を行いました。
それ以降は、管が何らかの原 因で使えないので、静脈より6回コースで化学治療(シスプラチン)を行い、2月18日に終了しました。 当初のCEAマーカーは 15。その後1.5→2.8→0.8→1.8→1.5。6回コースを終わってからのマーカーは、4月5日3.1→5月10日2.5→6月8日2.5→7月7日2.9→8月9日 3.5。(CA,CA125のマーカーの値は聞いていません。)
また、6月9日にCT 検査で検査医の先生は異常なしとの事でしたが、主治医は、肝臓の所の表面がなめらかではなく、表面がデコボコしているので気になると言われました。エコーの検査も、毎回行っていますが今の所、粘液が溜まった様子はないと言われました。
主治医 が言われるには、マーカーがゼロに近い状態にならないのと、マーカーが正常範囲以内でも再発を繰り返しやすい。粘液がたまりだすと、治療が困難だと言われました。
私はもともと、白血球が少ないほうで現在3900です。化学治療をするごとに、白血球やその他も上がりにくくなるし、薬が効きにくくなると聞きました。病気そのものより、化学治療の副作用で、体が弱くなりそうです。それでも副作用を考えないで、化学治療をした方が良いのでしょうか・・・。
何回コー スを行うかは、マーカー次第と言われました。化学治療のほかに、効果的でよりよい治 療法はありませんでしょうか。お忙しい中、恐縮ですが先生のご意見をお聞かせください。よろしくお願いします。

Date: Sun, 13 Aug 2000 10:48:53 +0900
病気相談お答えします。
既に受け持ちの先生からよく聞いておられると思いますが、卵巣の「腹膜偽粘液腫(ふくまくぎねんえきしゅ)」というのは腹腔(おなかの中の子宮や卵巣、胃腸などが収まっている袋のようなもの)内にゼラチンに似たムチンという物質が貯まる病気です。
原因ははっきりとはしていませんが虫垂(一般の人が「もうちょう」と言っている病気を起こすところ)に粘液のたまりができて卵巣に飛び散ったためとの考えがあります。
悪性腫瘍(癌)と良性腫瘍(単なるできもの)との中間の境界腫瘍と考えられています。50歳から70歳くらいの女性に多くみられ慢性の経過を取ることが多いです。
「腹膜偽性粘液腫」に対してはあなたが書いておられた「シスプラチン」などが試みられますがこれといった特効薬が無いのが実情です。
しかし、この「腹膜偽性粘液腫」という病気に対してはあなたの主治医の先生もそうだと思いますがたくさんの先生方が目下一生懸命になって治療方法の研究を進めておられます。
例えば、大阪市立大学産婦人科講師の山片重房先生は手術でも治すことの出来なかった「腹膜偽性粘液腫」を外来での長期維持化学療法(微量の抗がん剤を内服しつづける方法)で完全に腫瘍を消失させたと言っておられます。
最近では田川市立病院産婦人科の太田先生達は73歳の「腹膜偽性粘液腫」患者さんを少量の「シスプラチン」を腹腔内に、「フルツロン」を飲み薬として2年以上経っても再発しない症例を報告しこの方法を推奨されています。
東京都立墨東病院産婦人科の鈴木先生たちは「シスプラチン」を独特の方法で腹腔内に投与する方法で3人の「腹膜偽性粘液腫」患者さんたちを治療して良い結果であったと報告されています。
また、岩手医科大学第一外科の佐々木先生たちは3種類の抗がん剤を腹腔の中に入れることにより5人の「腹膜偽性粘液腫」の患者さんたちが良い結果であったことを報告されています。
この他、久留米大学外科の襟口先生達は3人の「腹膜偽性粘液腫」患者さんたちに別々の方法で治療をした結果を比較検討し報告されています。
他にもたくさん治療方法の研究が進みつつあります。
薬剤の種類もこれから増えてくるでしょう。
こういう病気はある患者さんに効果があったからと言ってもその治療法が必ずしもあなたに効果があるというわけではなく、あなたにはもっと別の方法の方が良い事もあります。
しかし、「腹膜偽性粘液腫」に対する良い成績の報告はほとんどが化学療法です。「副作用を考えないで」ではなく、逆に「副作用を充分に考えに入れてその兼ね合いの中で」どの化学療法をするかを考えることが重要です。報告の中で微量の抗がん剤を使うというのが多いのが目立ちましたがこれも副作用を十分に考慮してでしょう。
薬で癌が治っても薬の副作用で体を壊してしまったというのでは元も子もありませんから。
メールを拝見していますとあなたの主治医の先生方も上に私が書きましたいろいろな施設から学会に報告されていらっしゃる先生方と同様に随分と工夫をして下さっている様子が伺えました。
主治医の先生方はあなたの今までの経過やあなた独自の体質なども最も良くご存知ですし引き続き今の先生の治療を受けられては如何でしょうか。
ただし、大まかな今後の見通しと治療方針(どういうことがどの程度の確率で将来予想され、そうなった場合はそれぞれどんな手段を取るかなど)だけは今のうちにしっかりとお伺いして納得しておかれるようお勧めします。